LoRaWANとMS Azureの連携 – Part1:まずは基礎知識
低消費電力・長距離の無線通信を実現するLoRaWANネットワークと、そのネットワークプラットフォームThe Things Network(以下 TTN)が、ここ数年で注目を集めている。
またマイクロソフトのクラウドサービスMicrosoft Azureは、IoTソリューションとして強力なツールである。
本記事シリーズは、これらの技術・サービスを連携させることを目的として、チュートリアルを通してその連携方法を紹介する。
チュートリアルでは、LoRaデバイスに接続した温湿度センサーで取得したデータを、LoRaゲートウェイからTTNへと送信し、TTNと連携させたMicosoft Azureを利用してデータの可視化を行なう。
本シリーズでは、以上の内容を4つのパートに分けて紹介していく予定だ。
パート1では、基礎知識・用語を説明し、チュートリアルの概要を紹介する。
LoRaWAN, TTN, Azure IoTとは?強みは?
まずは、LoRaWAN, TTN, Azure IoTについて基礎知識を確認していこう。
- LoRaWAN
IoT向けの無線通信術として近年注目を集めているのが「LPWA」だ。
下図に示すように、LPWAはWiFiに比べて広範囲、セルラーに比べて低消費電力である。これが、LPWAがIoT向けの無線通信技術であるとされる理由だ。電源と通信が確保しにくい農業・工場・災害予測などの場面での活用が注目されている。
LPWAにはLoRaWANやSigfox、NB-IoTといった様々な規格が存在する。
中でもLoRaWANは、無線局免許が不要なLPWA通信ネットワークであり、ゲートウェイやネットワークサーバを自前で構築することが可能となっている。SigfoxやNB-IoTのサービスと比較すると、IoTプラットフォーム料・クラウド利用料などのランニングコストがかからないため、非常に安価に通信ネットワークの構築が可能になるという点も強みである。
ちなみに、LoRaとLoRaWANという2つの言葉はよく混同されているが、LoRaは通信を実現するための変調方式を指す言葉であり、これに対して、LoRaWANは大規模ネットワーク構築を実現する通信の仕様全体を指す言葉である。
- The Things Network
TTNは、オランダの非営利組織The Things Networkが提供するネットワークプラットフォームである。分散型のオープンなクラウドベースのIoTネットワークをユーザーが運営することができる。くわえて、TTNはLoRaWANサーバープラットフォームを無料で提供しているため、ランニングコストが低いという点で魅力的だ。
LoRaWANネットワークの構築に最適なサービスだろう。
- Microsoft Azure
言わずと知れた代表的なクラウドプラットフォームMicrosoft AzureのIoT向けサービスとして、Azure IoTがある。このAzure IoTは、IoTソリューション開発サービスを多く提供している。
例えば、大規模なデータ管理が可能かつ高い拡張性を備えたクラウドプラットフォームサービスであるAzure IoT Hub、一般ユーザーでも開発が可能で高いセキュリティとスケーラビリティを誇るソフトウェアサービスであるAzure IoT Centralがある。
Azure IoTのクラウドサービスについて更に詳細な情報が必要であれば、こちらを参照してほしい。
以上のように、これらの技術やサービスを使ったIoTシステム設計には旨みがある。
冒頭で述べた通り、本シリーズでは、
ラズベリーパイをゲートウェイとして使用してLoRaWANネットワークを自前で構築し、LoRaデバイスに接続した温湿度センサーで取得したデータを、LoRaゲートウェイからTTNへと送信し、TTNと連携させたMicosoft Azureを利用してデータの可視化する
というチュートリアルを通して、LoRaWANネットワークの構築・2つのサービス(TTNとMicosoft Azure)の連携方法をご紹介する。
3つの連携方法
まず、サービスの連携には3つの方法がある。
- The Things Network上の機能であるHTTP Integrationを利用して、Azure IoT Hubに接続する方法
- Azure IoT Central ブリッジを利用して、TTNのサーバーをAzure IoT Centralに接続する方法
- LoRaWANゲートウェイ化したRaspberry PiをLoRaWANサーバーにして、Azure IoT Edgeを使ってAzure Cloud直接接続する方法
下図は、3つの方法のイメージを表している。
3つの方法のイメージ
では、それぞれの方法について簡単に説明しよう。
①The Things Network上の機能であるHTTP Integrationを利用して、Azure IoT Hubに接続する方法
方法①のネットワーク構成図
この方法では、Azure IoT Hub とThe Things Networkにデバイスを登録し、TTN上にあるHTTP Integration機能を使って、TTN Application Serverに上がったデータをIoT Hub に送る。そしてTime series Insightsでデータの可視化をおこなう。
本シリーズでは、主にこの方法①について解説する。
②Azure IoT Central ブリッジを利用して、TTNをAzure IoT Centralに接続する方法
方法②のネットワーク構成図
この方法では、IoT Centralに接続可能なオープンソースプロジェクトのIoT Central デバイスブリッジを使用し、The Things NetworkのLPWAサーバーとAzure IoT Centralに接続する。データの可視化もAzure IoT Central上で行なうことが可能だ。
主に、複数のデバイス管理を対象とした方法である。
③LoRaWANゲートウェイ化したRaspberry PiをLoRaWANサーバーにして、Azure IoT Edgeを使ってAzureに直接接続する方法
方法③のネットワーク構成図
この方法では、LoRaWAN拡張ボードをつけたRaspberry Pi上に、Azure IoT Edgeのモジュール機能を利用してTTNと同じ機能(Gateway Server、LoRaWAN Network Server、Application Server)を組み込み、インターネットを介してAzureのサービスに直接接続する。デバイス側でデータの処理を行うなどエッジ側の開発を重視する場合は、この方法が適しているだろう。
本シリーズでは、この方法の解説は省略する。
以上、3つのサービスの強みと、それらの連携方法を3つ紹介した。
パート2からは実際にセンサデバイスなどの実機を用いて、方法①を中心に解説していく。
パート2はこちら
パート3はこちら
パート4はこちら
- 参考(スライド作成者から許可を得ています)
AzureとTTN連携ハンズオン資料 https://www.slideshare.net/AoiSakata/azurettn
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