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ウェスト・ヨークシャーのフリーでオープンなIoTアプリケーション向けLoRaWANデータネットワーク
ネットワーク接続できるデバイスの最も難しいことの一つは、ネットワーク接続を与えることそのものだ。これは、電源が確保されていて、WiFiやブロードバンド接続が常にあるオフィスや家庭で行うときは大した問題ではないが、屋外であったり、商用電源や有線接続から遠く離れていたりする場合は大きく話が違ってくる。
確かにGSMや3Gモデムは、遠隔のネットワークアクセスを提供するため用いられているが、相対的には電力を消費しがちであるので、商用電源やとても大きなバッテリ、太陽光発電などの再生可能エネルギーが必要となる。さらに、加えてそれぞれのデバイスにSIMカードとデータ通信契約も必要だ。そのアプリケーションがそれらの付随コストを賄うだけの利益を生み出せるのなら問題ないのだが。
ひょっとすると、この数年でIoTにおける最大のブレークスルーと言えるのは、少なくとも数キロメーターの範囲、見通しではさらに長い距離をカバーでき、一方で、免許不要の周波数帯を使って、驚くべき低消費電力で運用できる無線システムの開発である。
The Things Network
LoRaWANのよいところは、様々なメーカーから発売されているソリューションを利用して、誰でもゲートウェイを用意できるところだ。つまり、ネットワークがあなたのところにやってくるのを待っている必要はない、自分自身でネットワークを作ることができるのだから。The Things Networkをアムステルダムで始めた創設者たちは、クラウドソーシングを使って、町全体をカバーするネットワークをたった10のゲートウェイでわずか6週間で作り上げてしまった。この成功に引き続き、彼らはこの運動を世界規模のものとし、世界にまたがる草の根LoRaWANネットワークの成長を支援している。
これは単にクラウドソースされたデータネットワークであるというだけでなく、The Things Networkはフリーでオープンなネットワークなのである。これはつまり、ネットワークに接続し利用するため、データチャージや定期料金を支払う必要がないということだ。もちろん、ここにはデバイスやアプリケーションが日に一定のわずかな量のデータしか送ることができないという制約がある。しかしこれは、多くのIoTアプリケーションにとってまったくもって十分で、1つ1つの個別のゲートウェイが数千のノードをサポートできるということである。
さて、The Things Networkは実際にはどのような構成になっているのだろう?
現在のネットワークアーキテクチャはまだプロトタイプ段階であると考えられる。ゲートウェイが無線と有線ネットワークをブリッジし、UDPを通してパケットを"Croft"というソフトウェアのインスタンスにフォワードし、メッセージをRabbitMQサーバー(「メッセージブローカー」)のキューに加える。これらのメッセージは、InfluxDB(時系列データベース)を使ってメッセージデータを貯めておく"Jolie"ソフトウェアのインスタンスに取り込まれる。データは、APIや様々な方法で利用することができる。
現在も活発に開発の進んでいる新しいアーキテクチャはこの記事を書いている際には、次のような構成だった。
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IoTデバイス: 基本的にはリモートのバッテリ駆動のエンドノード
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ゲートウェイ: 無線と有線通信をブリッジし「ルーター」に接続する
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ルーター: 「ハンドラ」から/へのメッセージを中継し、トランスポート層の完全性を確保する
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ハンドラ: 最終的な暗号の復号化行い、アプリケーションサーバとのインターフェースとなる
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アプリケーションサーバ: IoTデバイスのように機能はアプリケーションの内容による
このアーキテクチャの重要な側面は、システムが中央集権的でなく動作することであり、The Things Networkがホストのサービスを使うこともできるが、その必要は必ずしもなく自分でホストすることも可能なことである。
The Things Networkの提供するソフトウェアはすべてオープンソースであり、 GitHubを通じて開発されている。これらのいくらかは、LoRaネットワークのリファレンス実装をもとに作られている。
ゲートウェイやパケットフォワーディングソフトウェアの開発や構成が必須のものもあるが、いくつかのゲートウェイハードウェアは、箱から出してすぐに使える。
洪水監視ネットワーク
イングランド北部ウェスト・ヨークシャーにある、カルダーデールを2012年と2015年12月26日に大きな洪水が襲った。これがLoRaWANネットワークを構築して、 Things Networkコミュニティを立ち上げようというきっかけになった。短い距離をカバーするシンプルな無線テクノロジやバックホールのために商用セルラー無線ネットワークを使うのでなく、LoRaを使うことでよりたくさんの Flood Networkセンサを設置できるからだ。
Flood Networkと実際に旧式のシンプルな無線システムを使った最初のセンサを設置した体験について、もっと詳しくご覧になりたい方は、私の同僚であるスチュアートの書いた記事をご参照いただきたい。
Flood Networkセンサの新しいLoRaWANバージョンのプロトタイプキットをちょうど今日、受け取りました。近日中に、このプロトタイプの性能を試すのを楽しみにしています。
最初のゲートウェイ
いくつかのすぐに使えるLoRaWANゲートウェイが存在するが、IMSTから出ているコンセントレータボードとRaspberry Pi2Raspberry Pi2モデルBを使って、我々独自のものを作ろうと決めた。これは、ゲートウェイやパケットフォワーディングソフトウェアが使い慣れているLinuxで動作し、将来的にプロセッサのパワー、ストレージ、GPIOなどの資源を活用できると考えたためだ。
世界のどこで利用するかによって、実効放射電力の制限やこの周波数帯が使用できるかが異なるが、LoRaWANはいくつかのサブGHz帯の無線リンクを利用できる。ここイギリスでは、868MHzの周波数帯が免許不要で利用することができ、IMST IC880は最大8つのチャンネルを同時に使った、このバンドでの運用に対応している。これにより、理論上は最大約2万ノードと接続できる。
無線モジュールはRaspberry PiとSPIで接続され、アンテナはU.FLコネクタを通じて接続される。
モジュールをすぐ簡単にマウントするため、汎用基板を用い、電源を供給、Raspberry Piを接続した。
ゲートウェイは、全体で5から7ワット程度を消費するが、これで見通し15kmの距離でどれくらいのノードをサポートできるか考えると驚くべきことだ。
メンテナンスやアップグレードのことを考えて、ゲートウェイは屋内に設置することを決めた。フィーダ線のロスを最小限に抑えたかったためにRG58でなく、RG213を使用した。もちろん、Andrew Heliaxのようなもっと良いものを利用することはできたかもしれないが、コストを押し上げてしまうことになる。
ショートU.FLプラグをNタイプソケットピグテールに変換して、モジュールをアンテナに接続した。
屋根(高さ30フィート以上)に取り付けるため、ゲートウェイ用には5dBiゲインの868MHzコーリニアアンテナ(白のファイバグラスロッド)を使い、また、ブロードバンドアンテナ(尖った形状のもの)を同時にスペクトルをモニタリングするために設置した。これはディスコーンアンテナで、大きなゲインは持たないが、25から3000MHzまでをカバーしている。
銅製の大きなくいをアース用にアンテナの足元にあたる地面に打ち込み、サージ避雷器に取り付けるための10mm2の銅製ケーブルをフィーダ線とともに建物内に引き入れた。
RG58も1本、GPSアンテナを使うため同時に取り付けた。
次のステップ
次のタスクは、電源とともに、ウォールマウントの鉄製ケースに入れたゲートウェイを取り付け、フィーダ線の配線を終えることだ。そしてテストに移る予定だ。
初めの写真の出典: “Calder Valley from Oldroyd”, copyright 2014 Tim Green, CC BY 2.0.