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私がエレクトロニクス業界で仕事を始めた1990年代後半、インターネットはまだ始まったばかりで、オフィスのデスクにはまだPCがなく、ファックス機は顧客からの注文で、常にトナー切れの状態でした。
当時は製品開発者にとって非常に不便な時代でした。現在、数クリックで入手できるような技術情報も、非常に膨大な労力と費用を要していました。当時、RSのような分厚い部品カタログは、多くのエンジニアにとって聖書のようなもので、注釈やコメントにまみれた自分用のカタログは、会社の本棚に厳重に保管されていました。
1980年代のRSのペーパーカタログ
製品設計のために最新部品やソリューションについて調べることは、今日ほど簡単ではありませんでした。多くのエンジニアは、新しいRSカタログのようなものが出てくるのを待つか、部品メーカーや代理店のFAEからの紹介を待つというケースでした。 当時、若いセールスエンジニアだった私は、車のトランクに各社の部品のデータシート、重いデータブック、サンプルキットなどを載せ、各地のお客様まで訪問したものです。 当時はエレクトロニクス業界の黄金時代でした。半導体業界では新しい参入者が雨後の筍のように続々現れていました。おかげで私は、衛星から大人のおもちゃまで、本当に数百人ものエンジニアに出会いました。
世界がネット時代に突入するにつれ、技術情報の調査方法がデジタルドキュメントに変わり始めました。 カタログ商社の中では、RS Componentsが最初にカタログをデジタル化しCD ROMで配布したり、取引そのものがオンラインに移行してeコマース革命の先駆者となりました。2000年代の初めから後半にかけて、技術情報を検索方法へインターネットへと移行していました。
2009年、英国のRSコンポーネンツの熟練技術者が集まり、このオンライン化の流れの中、どのように開発者の設計プロセスのスピードアップに貢献できないかを話し合いました。
2010年リリース当時のDesignSparkサイト
そして 2010年7月6日、RSコンポーネンツは、エンジニア向けコミュニティサイトであるDesignSparkを立ち上げました。 サイトは日本語をはじめ、英語、ドイツ語、中国語の4言語で運営されており、無料のプリント基板CAD DesignSpark PCBと同時にリリースされました。それはすぐに、多くのユーザに愛用され、学生、スタートアップ企業はもちろん、大企業の研究開発部門や他業界の設計エンジニアまで、世界中の多くの企業で導入されることとなりました。
当時、DesignSparkの立ち上げパーティーでは、Arduinoの共同創設者マッシモバンジー氏を交えた実践的なワークショップを行いました。この時からDesignSparkは、オンラインとオフラインの両方で世界中のコミュニティを構築し始めたのです。
私はこのリリース日にDesignSparkに参加しましたが、この日だけでも世界中で5万人がユーザ登録を行いました。そこからたくさんの時が流れました。イギリスだけではなく世界中の多数のエンジニアに出会ってきました。DesignSparkを通じて彼らとつながり、彼らの重要なプロジェクトに関わってきました。現在、DesignSparkは世界中で約100万人の登録メンバーがおり、年間400万人を超えるサイト訪問者を誇るプラットフォームになっています。これは見方を変えれば、3分毎に新しいメンバーが登録され、20秒毎にCADソフトが起動され、12秒毎にライブラリがダウンロードされ、4秒毎にコンテンツにアクセスされている状況です。
Fablabロンドンで開催されたDesignSpark PCBワークショップ
過去10年間で、DesignSparkチームは素晴らしい人々と出会い、クールなプロジェクト、アプリケーション、イベントに参加しています。 私たちが提供するツールやリソースは多くの開発案件の最初期のアプローチにとても有益と評価頂いており、NASA技術者を始め、学生、発明者、メイカー、プロダクトデザイナ、設計者などによって世界中で採用されています!
OSH (オープンソースハードウェア)キャンプロンドン 2012にて、主催者のPeter FrancisとDesignSparkの"Connector Geek"
2013年には、3D CADのDesignSpark Mechanical もリリースしました。当時としては、基板CADと3D CADを同一ブランドでリリースすることは非常に画期的なことでした。またこのリリースの際、3Dプリントを活用したハッカソンイベントを開催。このハッカソンがきっかけで、数年後にはPractical Action(テクノロジーを使用して世界の貧困と闘う英国の慈善団体)と提携、ロンドンのGoogleオフィスで別のハッカソンの開催に繋がり、いくつかの素晴らしいソリューションプランを生み出すことができました。
私たちは、Fablabs、Maker、Hackspaces、Fablab London、Barclays Eagle Labs、東京のDMM Make AKIBA などの世界中の技術系新興インキュベーターらと友好を図り一緒に活動を行ってきました。
DesignSpark team members with Dr Lucy Rogers at Maker Faire Newcastle 2018
また世界中のメイカーフェアや教育イベント、エレクトロニクス展示会に参加し、DesignSparkプラットフォームをデモしてきました。
私たちは世界中の大学との関わりを通じて明日のエンジニアの教育を支援し、中国では子供たちに3D CAD設計を教えるためのテキストブックを作成することで、初等教育プログラムの正式な一員になりました。
ラズパイと小型カメラを搭載したスーパーマンのフィギュアを成層圏まで打ち上げたり、世界記録更新のために3Dプリント活用したプロジェクトに参加したりと、信じられないほど刺激的なことをメンバーのエンジニアと行ってきました。
GPS Radio Tracker designed using DesignSpark PCB, 3D printed components designed in DesignSpark Mechanical
Raspberry Pi Selfi-Cam project created by Andrew Back for the 2016 Electronica trade show - Munich 2016
それから、空飛ぶ男「リアルアイアンマン」で有名になったGravity Industries社のRichard "Rocketman" Browning や、教育用ラズパイ筐体 Pi-top社など、今では大きく有名になった色々な開発事案を、初期プロトタイピングの面で強力に支援してきました。
Richard Browning takes takes to the sky and flys over the RS Titan Truck at BBC Media City Manchester
しかし、最も思い出深いのは2011年の後半。子供たちのプログラミング教育の支援を掲げた エベン アプトン氏 と出会ったことです。 彼は当時はそれほど知られていませんでしたが、2012年2月に彼らと協力して製品を開発し、そしてRSで発売を開始しました。 その製品は今では世界を席巻し、その名前は技術者以外からも注目されています。そうです。ラズベリーパイのことです。今日、彼の ラズベリーパイは 世界中で3,000万枚以上のセールスを記録しています。ラズベリーパイは、新世代のエンジニアにインスピレーションを与えただけでなく、Arduinoのようなボードとともに、電子工作をアンダーグラウンドからメインストリームへと導く大きな役割を果たしてきました。 現在では英国の宇宙飛行士 ティムピークの手により宇宙ステーションに設置されているのを始め、多くの商用製品にも採用されています。
今後10年間を見据えて、DesignSparkは更なるイノベーションへの貢献をめざし発展を続けていきます。まもなく 我々のサービスがリニューアルしていく様をご覧頂けることでしょう。 私たちの記事やプロジェクトを読んだり、ポッドキャストを聞いたり、ツールやリソースを使用したり、あなたが見たものを学び、発見したり、共有したりしながら、他のエンジニアと協力して彼らと問題を共有し、DesignSparkを一緒に盛り上げて頂ければ幸いです。