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本記事はKORG Nutubeのアンプに関する連載の第一回目である。連載を通してプロジェクトのスタートから設計、そしてKORG Nutubeの利用までを紹介していく。今回は増幅とゆがみのための”ギターペダル”の設計について紹介する。さらにDesignSpark PCBといった無料の設計ソースのみを利用して、簡単に自身の設計に独自の操作を割り当てる事が可能だ。
なぜギターペダルなのか?
ギターペダルは私達が選択できる中で最もシンプルであり制限が少ないアンプだ。「ギター」という言葉は様々な機器をカバーしている。ギターには様々なエフェクトが加えられることや、それをカバーできるペダルが存在するだろう。
また、全てのギターペダルがペダルを持っているわけではない。 いくつかは単純に増幅したり、歪みを加えたり、エフェクトをコントロールするペダルを持つ場合があるということだ。こうしたシンプルなアンプなどは、ゆとりをもって自身の機器の周りに設計することが出来る。
オーディオ愛好家は真空管を愛する
音や音楽はとても主観的なものだ。それがある人にとって完璧に聞こえたとしても、他の人にとってはひどいものかもしれない。そのため、私達は真空管 vs. トランジスタについての皆の意見を取り入れる必要はまったくないのだ。真空管が増幅する際に変化させたサウンドを、人々は「より暖かい音だ」と言う。それにはいくつか理由が考えられる。いくつかの真空管アンプはノイズを加えるが、その一方他のアンプは低周波に反応し、高温より低音を増幅させる、というのは一つの理由かもしれない。恐らく電子がトランジスタの中より真空管の中にいるときの方がより「怒っている」のだろう!
真空管はバルブ
ほとんどの方が真空管について耳にしたことがあるだろうが、その仕組みについてまで理解している人は少ないだろう。半導体のように多くのタイプのバルブがあるが、主に以下に示すような「三極管」である。
「三極管」は非常に簡単な装置であり、現代取って代われているトランジスタに比べ非常に理解しやすいだろう。「三極管」は3つの要素で構成されており、アノードとカソードという二つは目にしたことがあるのではないか。
カソード (k) フィラメントとしても知られ、単純に電子を入力として与えるだけで良い。熱を持ったカソード真空管の中の電子は「沸騰」、技術的には「熱電子放出」しており、私達はまるで電子が非常に怒ったかのように沸騰しているイメージが好きなのだ。この現象はフィラメントを非常に高温(数千度)に加熱することにより発生し、電子がカソード中の金属の仕事関数から逃れるエネルギーが発生する、すなわち「沸騰する」。偶然にも、これは古い真空管が非常に暖かくなり、多くの電力を使用してしまう理由の一つだ。
アノード (a) プレートとも呼ばれ、沸騰した電子が加速される場所である。この電子の加速はプレートが数百ボルトといった(場合によってそれ以上)高電位になることを必要とする。このアノード/カソードの配置は昔ながらの設計であり。最初のバルブであるダイオードから継承されているのだ(そう、それはシリコンのものと同じように動作する)。
グリッド (g) これはとても興味深いものだ。カソードに対してグリッドへの電圧をほんの少し調整することにより、電子を引き寄せることができたり、グリッドで留めることができるのだ。これにより、アノード/プレートで非常に大きな変化を起こし、電圧増幅を生じる。
電圧アンプ vs. 電流アンプ
基本的なバルブの理論を踏まえ、次は皆さんが好きなアンプであるNPNトランジスタを見てみよう。
バルブとアンプの最終的な効果や、幾つかの点で似ていることに気づいただろうか。しかし、厳密にはそれらは同じようには動作していない。真空管アンプは電圧増幅装置であり、実際の機能としてはMOSFETに近いものだ。バイポーラトランジスタは微妙に異なる電流増幅素子だ。
例えば真空管の場合、ゲートに電圧を加えると、プレートの電圧は入力にゲインを掛けた倍数変化する。これを式で表すとVp=Gain * Vgである。
先に示したNPNの場合は、ベースに電圧を加えると、順方向バイアス時のダイオードのような働きをする。電圧を加えると0.6V~0.7Vに上昇し、電圧を保ちながらベース電流が徐々に増加する。もし供給源が”電流の制限”をしていない場合には、トランジスタはその文字通り”ポップ”してしまうだろう。この“電流の制限”のためのベース抵抗なのだ。バイポーラトランジスタアンプを使用する場合には、電圧ではなく、ベースに流れる電流そのものを制御する必要がある。
再び真空管において考えてみよう。利得(ゲイン)は非常に単純であり、式で表すとIc= Gain * Ibとなる。一定のインピーダンスが与えられると、これは電圧となる(V=I * R)。この違いは重要な要素の一つだ。これらの回路を直接比較することは出来ない。これがオーディオ愛好家の意見を分ける原因の一つでもある。スピーカーを電圧で動作させると、電流とは異なる特性が生成されてしまうからだ。
ではなぜ真空管なのか?
新しい真空管であるNutube (144-8943) とNutube (144-9016) が市場に登場してから長い時間がたった。それらは三極管のように動作することを目指しているが、三極管特有の問題を発生させることはない。Nutubeは三極管のペアのように動作するが、その構造は異なる。もしかしたら真空蛍光ディスプレイ(Vacuum Fluorescent Display:VFD)を思い浮かべた人もいるのではないだろうか。そこにはVFD技術に基づく”良い”理由があるのだ。
VFDは真空管とそれほど大きく異なるわけではない。伝統的にはVFDは熱カソードおよびアノード/プレート、そしてグリッドを有する。違いはアノードには電子が衝突すると輝く蛍光体があるということだ。日本の地方発VFD最先端メーカー 「ノリタケ伊勢電子社」はこの過程で利得を生み出す方法を見付け出し、KORG Nutubeの製作に成功したのだ。
現代の電子技術においては、電力に関心が集まっている。旧式のVFDとは異なり、現在考案されている技術は非常に電力効率が良くなっている。実際には電圧を作りだすのは難しく危険も伴うが、Nutubeはわずか5VDC、つまり最大80VDCで動作することが可能だ。12Vは動作に非常に適している。
ここでNutubeの設計上の考慮すべき事項と賛否両論についてまとめておこう。
Nutubeには以下のような利点がある
- 低電力
- 安全な電圧操作
- 高信頼性
- 小さい
一方、以下のような注意事項もある。この製品はパワーアンプではなくVFDだという事を忘れないで欲しい。
- 低利得
- 高入力インピーダンス
低利得(低ゲイン)
12AX7のような伝統的な三極管と比較すると、KORG Nutubeが いかに利得が小さいかわかるだろう。12AX7が通常100の利得を持つのに対し、Nutubeの利得は通常たったの5しか持たない。これは一つのNutubeが(他の要因が関係しない場合に)最大で持ちうる利得が約25に制限されているからだ。これはほとんどの目的には十分であり、私達のペダルアプリケーションにとっては全く問題がない。
高入力インピーダンス
先に述べた低利得であることに加えて、プレート(アノード)の入力インピーダンスは約300kΩだ。これはアンプから得られる電流がわずかであることを意味している。例えば12Vプレートの場合は30-40uAほどである。
一方12AX7は62.5kΩだが、250Vのプレート電圧で数mA程度(少なくともNutubeの100倍以上)のままなのだ。また、電力 = 電圧 × 電流であるため、電力の増加に伴ってNutubeが調整できる電流より大きくなる。
以上のことから、適した出力ドライブで利用するには何らかの形でバッファを適用した方が良いのだ。
実際に回路を設計
現在私達は、基本的な増幅回路が必要なベルトを用いた真空管の基礎技術を持っている。以下に示すのは、12AX7などのデバイス用の代表的な三極管の回路である。これは私達のNutubeアンプの良い出発点だった。
Nutubeの場合は、接続するためのカソードの両端がある。カソード電圧は0.7Vでなければならない。Nutubeのデータシートの回路図のリファレンスを見ると、150Rで3.3Vに接続することによりカソード電圧が生成されることが示されていた。これはカソードが17.3mAを取ることを意味しており、オームの法則から約400Ωのカソード抵抗をもたらすことが分かる。
これらの情報を利用して、私達はリファレンス毎に回路を作成したり、自身のカソードドライバを作成することが可能だ。デフォルトの300kアノード抵抗はおそらく良いスタートであるが、私達は設計を進めるにつれ、より検討が必要だと考え始めたのだ。
最後に、Nutubeは上記の回路とは異なり、グリッドにバイアスが必要だ。そのため、”ポット”を3V3に配置することにより真空管を徐々にバイアスする。この“ポット”を可変電圧と見なしてほしい。これから、設計テストのためにブレッドボードに再現するのは実に簡単なことだ。バイアス電流は非常に大きいので、この回路は(やや)低いインピーダンスでなければならないことに注意してほしい。
最後に
私達は従来の真空管とNutubeの両方をよく目にしていたため、アンプの設計やテスト回路さえも行うことができた。もしあなたがここまで順に読みすすめてきたのならば、与えられた入力の真空管の特性をみるのに丁度良い時期になるだろう。次回は基本回路を実際のアンプにするために何が必要なことを見ていこう。それでは。
続く・・・
Karl Woodward