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プロジェクトの発足
かつて幼少期を過ごしたメキシコシティの大気は非常に汚染されていて、身体への影響を警告する安全警報が日常的に出されていました。どれほど空気が汚かったかというと、空から鳥が降ってくるほどのものでした。そのことが幼少期の私の心に深く刻まれ、大人になった今でも空気の良し悪しが人生の質に与える影響を強く意識するようになりました。
英語版ウィキペディア:Usfirstgov。メキシコシティ上空の汚染。
今私はアメリカの西海岸の郊外で自然に囲まれて暮らしています。今回、大気汚染や空気品質(大気質)に関する開発プロジェクトに参加することになって、自分の若い頃の経験を思い出しながら、改めて今自分が大都会で暮らしてなくて良かったと感じています。ただ、この地域でさえも大気質には気を配る必要があります。
ここアメリカの西海岸は山火事に悩まされています。毎年、東京ドーム数百個分もの土地を破壊するような巨大な山火事が発生しており、被害は悪化の一途をたどっています。運よく山火事の被害に遭わなかったとしても、何千マイルも離れた山火事の引き起こす巨大な煙や大気汚染の影響を受けてしまいます。
スタニスラウス国有林のリム・ファイア - パブリックドメイン
カリフォルニア州全域で発生した火災の影響が、遠くワシントン州の大気質にまで悪化させる日もあります。そのような日は室内から窓の外を見ると何か「変」な感じがします。実際に外に出てみると、辺り一面が薄い煙の層で覆われているのです。
大気質指数(AQI)はアメリカで大気の質を報告する際に使用される指標です。そこで私はその日の大気質がAQI(Air Quality Index)表を利用して視覚的に示し、窓を閉めるべきか、運動を制限するべきかなどの判断の助けとなるガジェットを作りたいと考えました。
また私はイラストレーター兼クリエーターであり、且つ教育者という一面も持っています。私の教育者としての役割は6~14歳の生徒が様々なことを学ぶのをサポートすることで、担当する分野の多くはSTEM(またはSTEAM)関連の学習です。IT教育者で且つイラストレーターでもある私らしく、プロジェクトは”自分が楽しむこと”を第一目標としており、その楽しさの共有を目指しています。そういった背景から私のプロジェクトは”動物”をモチーフにすることが多いです :-)
そこで今回は、環境意識を高めるというシリアスなテーマでありながらも、動物をモチーフとしたユーモアも取り入れ、若い学生の製作活動にも親しみやすいものの開発を目指してみました。
材料
- DesignSpark Sensor Development Kit
- Reka:BitとMicro:Bit
- Grove Wifi 8266モジュール(Grove接続コード付き)
- 5V 2A電源コード
- マイクロサーボ(ホーン付き) 3個
- 標準サーボ(ホーン付き) 1個
- 緑の5mmLED 2個
- 赤色10mmLED 1個
- トグルスイッチ 1個
- メスケーブルのGrove4ピン 3本
- バルトバーチ合板28x48cm、厚さ3mm (12” x 20”, ⅛” ) 5枚
- 3Dプリント部品 1個
- 工作用絵具(クラフトペイント)
- 木工用接着剤
- プラスチック用接着剤
- 小さな蝶番 2個
- オプション:ニス
- レーザーカッターと3Dプリンターが使える環境
デザインプロセス
アメリカで火事、煙、そして意識について語るとき、まず思い浮かぶのは「スモーキーザベア(Smokey the Bear)」でしょう。彼は何世代にも渡り、山火事の危険性とその防止策についての啓蒙活動を行ってきました。そこで、私はスモーキーザベアのオマージュで、彼の“従妹”キャラを想定し、それを取り入れて大気の質について人々に伝えることができないかと考えました。キャラクターのアイデアとして私の住む地域でよく見られるアメリカグマをモチーフとして、環境に詳しそうな気象予報士や科学者っぽく見えるようにしました。
AQI可視化についてはブレインストーミングで最初に浮かんだアイデアとして、大気質指数を表示するだけでなく、悪化の度合いに応じてクマの表情が変わるようにするものでした。このアイデアの実現には、サーボが4つに制限される中で選んだ表示板によって、できるだけクマの表情を豊かにしたいと思いました。そこで考え出したのが眉毛を動かすことで、クマの顔や状態を一瞬で変えることができる「クイックチェンジ機構」です。
最初のプロトタイプでは「このレベルまで悪くなったらKN95マスクが必要だ」という意味合いで、クマが普通の顔からマスク姿になるようにしました。ですがこのアイデアはすぐ辞めました、なぜなら別に大気質が非常に悪い場合はマスクをつけても何も解決しないので、これでは間違ったメッセージを送ってしまうと気付いたからです。
また、そのプロトタイプでは回転する顔パーツが問題なく動作するように十分な余裕を持たせていました。そのため、クマと支持板(または箱)の距離をどうするかで苦労しました。
その後のプロトタイプでは大気質指数をクマが指差すのではなく、代わりに回転する旗で指数レベルを可視化するというアイデアも試してみました。しかし、クマが指で示す方に比べ可愛さが劣り、このアイデアも辞めました。
次に作成した本格的なプロトタイプではクマに着けていたマスクを、動揺した表情に変更しました。このアイデアは大気質指数が悪くなると笑顔から怯えた表情になるというもので、眉毛の動きでより多くの表情を生み出す事ができます。
さらにクマを表示板に近づけるために板に穴を開けて顔の変化にクリアランスを持たせると同時に、センサーが大気質を読み取りやすいように構成しました。
アメリカの大気質指標は6段階ですが、上の画像からクマは5段階のボードを指さしていることにお気づきでしょうか?これはクマが表示をはっきり指差し、読みやすく見やすくするためです。さらに腕がテーブルに当たらないように、腕を動かすスペースがかなり狭くなっているためです。その代わりにレベル6=Hazardous(危険)になると、クマの表情が早変わりし、腕が上下するようになるギミックを追加しようと考えました。
このプロトタイプには全体的に条件を満足したので、最終完成版に向けてデザインを調整することにしました。
苦労したポイント
私が普段行っている製作プロジェクトでは厚紙と水彩画用紙を使っています。今回のプロジェクトでは簡単に再現できるようにしたかったので、レーザーカッターで簡単にカットできるようなデザインに工夫しました。
ですが、私の環境下ではレーザーカッターを使える場所が非常に限られていることが難題でした。そこで私はAdobe Illustratorを使ってできるだけ正確にデザインし、そのデザインを切り出す際にはその後の工程がうまく行くように願いました。
レーザーカッターや3Dプリンターで作品を作ったことがある人ならわかると思いますが、1度で完璧な作品を作るのは不可能です。そのため、なるべく工夫を凝らしながら失敗しにくいようにしましたが、それでも何度も繰り返し同じパーツを切り出し、プリントしました。
製作中特に素晴らしい発見がありました。それは箱前面にある大気質指数表示板の文字が掘り終わるのをしばらく間待っていたところ、うっかり表示の周りのボックスの設定を「スコアリング」ではなく「カット」に設定していました。そのため、表示板は箱の前面と一体にならず、バラバラのパーツになってしまいました。ですがやり直さずに、ボックスに合わせるようにカットし、箱の前面にパーツを接着しました。組み立ててみるとこれがとても良い感じになったのです。材料はその分増えてしまいましたが、見た目がよりきれいになったので最終的な仕上がりはとても満足しています。
もう一つの大きな課題は、顔の「クイックチェンジ機構」です。試作の時は段ボールとダボと大量の接着剤で製作しましたが、最終的なデザインでは再現性の観点からそれではダメだと気付きました。
私が使っている3Dプリンターは古くて精度が悪く、しかも簡単に修理できないものです。そのためフェイスチェンジに必要なサーボホーンに代わる部品を、3Dプリントすることは容易ではありませんでした。結局、工夫を凝らして3Dプリントとレーザーカットなどで2種類のサーボホーン置き換えパーツを作りました。1つ目は、サーボのギアと同じ歯を持つレーザーカットされたプラスチックと3Dプリントしたパーツを接着したものです。他方は、サーボに付属しているサーボホーンをできるだけ小さくカットして、3Dプリントしたパーツに接着したものです。
結局、後者の方が良いという事が分かったので最終的なプロジェクトと付属のファイルにはそのバージョンを使うことにしました。
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この記事のPart 2ではビルドガイドとレーザーカットファイルについてお話しします!さらにPart 3ではDesignSpark Sensor Development Kitでの使用方法とIoTとの統合など、それらを動作させるためのソフトウェア(プログラミングなど)についてをお話しします。