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IoT便座作ってみた - 便座に健康を求めるのは間違っているだろうか -

  • 背景

 排泄物には様々な情報が含まれている.それらの情報を効果的に解析することで,排泄者の健康状態等を把握することができる.

 排泄物とは血液や汗,糞尿といったものを指す.糞尿は消化管内には食物の消化吸収のために諸臓器から様々な分泌菅が開口しており,これらからの分泌液の性状や量は生体内諸臓器の病変によって左右される.したがって分泌液の変化は便性状の変化として表現され,糞便を調べることで生体内様相を伺うことが可能である[1].健康診断等で尿検査が行われたり,精密検査で血液検査が行われたりする理由には,それら排泄物が体内の重要な情報を持っている為である.しかしそれらには被験者の時間的,あるいは肉体的な労力がかかる.尿検査は紙コップ等に自身の尿を入れ,検査者に提出しなければならない.血液検査は注射器による血液の採取が必要であり,採取量に気をつける必要もあり痛みを伴う場合がほとんどである.このように,排泄物が多くの情報を持っている一方で,その情報を手軽に引き出す手段がほとんどない現状にある.

 難しい手順を踏むことなく,より手軽で身近に健康診断を行うことのできるシステムがあれば,病気の早期発見や生活習慣の改善に貢献すると考えられる.そこで,毎日必ず排泄物を得ることのできる便所で簡易的な健康診断を行うことのできるアプリケーションを作成した.これは毎日排出される糞便を使うことで排泄物の採取に苦痛を感じる要素が無く,自然に体内の情報を得ることができる.糞便には多くの体内情報が存在する為,これらの情報を得ることで日々の健康状態を把握することが可能だ.

 このように排泄物から健康状態を把握するシステムは利便性が高く効率的で理に適っているように思えるが,排泄物を扱うという忌諱感からか扱う者がいなかった.しかしこのシステムが世に認知され普及すれば,手軽に健康状態を知ることのできるシステムとして支持を得ることだろう.将来的には尿検査も便所で行えるシステムが現れるだろう.

  • 設計と開発

 アプリケーションは各種センサを取り付けたIoT 便座,Raspberry Pi,Android 端末の3つで構成されている.

 まず,評価指標を定義する.健康な人の糞便は,多少の不摂生をしても色や形は茶褐色であり,あまり変化しない.また,強烈な臭いも発しない.一方,病気を患っている人ではその色や形は日によってまちまちで,強烈な臭いを発することがある[2].そこで,本アプリケーションでは,糞便の状態の中でも特に色と臭いに着目する.また,圧力センサを用いることで姿勢の変化に基づく力み具合も考慮し,これらを総合して健康状態を評価する.本アプリケーションでは橙~黄色を良好と位置づけ,黒褐色,白色,黒色の順に4 段階で体調の悪さを定義し,カラーセンサから得られるRGB 値を基に判断する.また,臭いセンサから得られる値を5段階,圧力センサから得られる値を3段階にグループ分けし,これらを総合して評価を行う.

色と形による成人の糞便表
評価指標

  IoT 便座は便座に各種センサを付けて作られている.センサは,においセンサ,カラーセンサ,圧力センサの3つからなる.センサ以外ではその他に高輝度LED を付けている.また,回路図に示した様にRaspberry Pi と接続する.カラーセンサはI2C 通信で色を取得していること,においセンサ,圧力センサはアナログOutput であるがRaspberry Pi はデジタルI/Oしかないことを考慮し,SPI 通信にしていることを考慮した.

 本システムにおけるRaspberry とAndroid 端末は,非同期による通信システムを採用している.Raspberry Pi は便座に設置しセンシングを行うと同時にDB サーバー,API サーバとしても機能する. 基本的な通信の流れとしてクライアント側がセンシングリクエストを送信することで開始する. センシングリクエスト完了後, サーバーサイド(RaspberryPi) ではセンシング状態に移行する. この間,複数プロセスで並列処理によって各センサの値を逐次取得する. その後, 各センサ値はDB に保存されるとともに各アルゴリズムによって標準化され評価される. また評価値においてもDB に保存する. ここで憂慮すべきはRESTFULなAPI でありメインのサーバ機能が阻害されない程度にセンシングを行う. これらのプロセスが完了後, クライアントサイドは規定秒数以内に再度, 今度は評価値を取得するためのリクエストを送る. サーバーは評価値および指定期間におけるすべての評価を送信する. これらの通信時, 個人情報の流出が懸念されるためサーバーはセキュアであるための認証が必要となる.HMAC 認証およびSHA256 ハッシュ関数を用いて暗号化を行う. またローカルネットワーク内のみの通信を許可することとする.

 クライアントサイドについて,Android 端末で指定のアプリを起動後, スプラッシュ画面に遷移する. その後, 遷移した画面において左下のwi-fiボタンをすことで,センシングリクエストを送ることができる. センシングリクエスト送信後, センシング結果により図10にのように画面が変化する. この画面ではその時点のセンシング結果しか確認できないが, 今まで記録された結果も別画面で確認できる. タイトルロゴをタップするとグラフ画面に遷移する. ここではサーバーに保存された今までのセンシング結果をローカルDB 内に保存することで確認が可能となっている.

  • 参考文献

    [1] 斉藤正行. 臨床化学分析. 分析化学, Vol. 10, No. 10, pp. 1150–1158, 1961.

    [2] 日野貞雄. ウンコによる健康診断. 光文社, 1969.

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