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DSPCB設計のプリント基板が宇宙へ!

DesignSparkでは、メンバーの皆様からもっとたくさんのユーザ事例を伺いたいと考えています。最近、基板に関する問い合わせをきっかけに、DesignSpark PCBユーザであるJames Nadir氏に直接お会いする機会がありました。驚いたことに、その基板は国際宇宙ステーションで使用するためのものでした。我々はJames氏の高校講師というお仕事を通じた様々なプロジェクトに関心をもち、James氏本人からお話を伺いました。

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James Nadir氏 (左から2番目)とValley Christian High Schoolの同僚たち

「はじめまして。James Nadirです。私はValley Christian High School (VCHS)で講師をしています。VCHSでは、アメリカ全土、そして世界中の学生が低コストで9か月以内に国際宇宙ステーション(ISS)での実験を行うことができるよう支援しています。実験が始まってからは、ISS内で得られたデータや写真を2週間ごとに学生に送っています。VCHSは、あらゆる学校や大学のパートナーとなり、ハードウェア、ソフトウェア、物流、モジュールの輸送・回収、トレーニングを含むワンストップのサービスを広く提供しています。学生はこのワンストップサービスを利用することで、ロケット科学者のように通信プロトコル、NASAシステムの操作、宇宙航空などの高度な専門知識を身につけなくても、Raspberry PiやArduinoを使用するプロジェクトと同じように実験を展開できます。VCHSが主に力を注いでいるのはISSでの自律実験を行うための科学や工学ですが、ここでの学習やトレーニングは学生が将来的にキャリアを築く際にあらゆる科学・工学分野で役立ちます。詳しくは、最近Nature’s Publication Journal (NPJ Microgravity)に掲載された記事「Low-Cost Hitchhikers guide to the ISS」(低コストでISSを目指すヒッチハイカーの案内人)をご覧ください。VCHSの宇宙プログラムのメソッドや様々な側面を紹介しています。

VCHSでボランティアを始める前は、Intelで主幹エンジニアを務め、PentinumやItaniumといったx86アーキテクチャのマイクロプロセッサファミリーに携わりました。その他にも、初のシンセシスライブラリ(論理記述を物理的設計に変換するために使用)の開発や、統合型(自動配置・自動配線された)実装パフォーマンスを向上させる後処理ソフトウェアの開発にも関わり、回路設計チームを率いてレベル1キャッシュやレベル2キャッシュの開発も行いました。  

高度な設計に対するソリューション

VCHSで当初使用していた開発ツールはとてもシンプルなもので、全学生がマイコン基板の拡張基板を作成するためのものでした。初めはこれでよかったのですが、2年生や3年生になると、微小重力実験を行いたいが自力ではなかなかできないでいる大学教授などの科学者と関わり、指導を受けるようになるため、学生の実験も高度なものになります。そのため、当初想定していたものよりも高度な実験に対応できる次世代のツールに移行する必要が生じました。Sunstone、Eagle、CircuitMakerを検討しましたが、最終的にDesignSpark PCBを落ち着きました。

DesignSpark PCBは直感的で、操作習得にそれほど時間がかからず、すぐに実作業で役立てることができ、自動配置・自動配線といったハイエンドの機能も搭載しています。3Dデータ出力機能によって、回路設計と機械設計が連携できるため、プロトタイピング用の理想的なツールだと言えます。DesignSpark PCBがあれば、回路設計と機械設計が互いに「壁の向こう側の問題」として切り離されてしまうことはありません。電気工学の学生でも、3Dデータを作成して、DesignSpark MechanicalやAutoDeskのInventorといった3D CADツールにインポートし、コンポーネントの干渉を解析できます。液体バッグや観測チャンバなど、電気コンポーネント以外のものも含め、カスタムコンポーネントを開発して3Dデータで基板に搭載してみるという試みは些細なことですが、機械的干渉の解析に非常に有益です。 

加えて、多くの学生は仕事で役立つスキルを身につけたいと考えています。例えば、BASICは現在も使用されているとはいえ、Java、C#、C++、Pythonといった「現代」のプログラミング言語に比べて、学生が意欲的に学習することはありません。基板ツールも同様です。この点でDesignSparkは魅力的であり、しかも簡単に習得できるのです。

最新のインターフェイス設計

現在、VCHSではDesignSpark PCBとDesignSpark Mechanicalを取り入れた第3世代のエコシステムを開発しています。もちろん、これらのツールを使うことはシステム開発者が当初想定していなかったことなので、戸惑うこともあります。しかし、今のところ、すべての課題に対して解決策を導き出すことができており、DesignSparkのヘルプデスクも充実したサポートを提供してくれています。VCHSで初めてDesignSpark PCBを活用したプロジェクトは驚くほど容易に進み、実用的なデザインが生まれました。その基板は、現在OSH Parkで製造中です。設計段階では、コンポーネントを手作業で配置し(以下の左側の写真)、自動配線した後、さらに手作業で修正を加えました(右側の写真)。 

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この基板には中心に穴があり、それが障害物となっているため、DesignSpark PCBのテストとしては難しいケースとなりました。自動配線は、「進入禁止」属性を特別に設定することなく、この障害物を迂回し、正しく機能しました。自動配線した基板をそのまま使うこともできましたが、確認のため手作業で簡単に変更・修正できるかどうかを試してみました(1時間かかりましたが簡単に実行できました)。

続いて、基板の3Dモデルを作成し、AutoDeskのInventorで干渉解析を行ってみると、これも期待していたよりはるかに簡単でした。DesignSpark PCBはシルクスクリーン層にコンポーネントの外形を描いてフットプリントを作成しており、コンポーネントの高さもプロパティの「高さ」属性で簡単に指定することができます。下図は、機械的干渉チェックで実際に使用した3Dイメージです。

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現在は、DesignSpark Mechanicalの評価を行っています。「工学の基礎」の授業を受けていない学生がISSでの実験用に3D出力で部品を作る必要がある場合に、DesignSpark Mechanicalがこれまでの3D CADツールの代替ツールとして使用できるか評価しています。

DesignSpark PCBとDesignSpark Mechanicalはどちらも最新のインターフェイスを採用しており、タッチパネルディスプレイに対応しています。直感的に操作できるため、学生や講師に大変好評です。

データの送信

下の写真は、筐体に入れる前の実験用モジュールの実装済み基板を映したものです。この基板は、2台のぜん動ポンプと、基板の中心の穴から覗いているカメラのフォト照明の制御に使用されます。ポンプの後ろには、デジタル入出力、アナログ入出力、光バッファRAM、カメラサポート、ウォッチドッグのスレーブプロセッサを備えたマイクロプロセッサ基板があります。さらにその後ろにあるのは、マスタプロセッサとウォッチドッグを搭載した開発システムです。このマスタプロセッサは、飛行システムに採用されているのと同じ基板であり、宇宙飛行中から地上に戻るまで学生のデータを送受信する機能を担っています。ポンプアセンブリの前にはラピッドプロトタイプ基板があり、飛行中のソフトウェアやハードウェアの問題を素早く見つけるために使います。この基板にはスルーホールコンポーネントを実装でき、外部のブレッドボードを直接駆動することもできます。

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背面にぜん動ポンプを備えた完成基板

驚きの50%コスト削減

VCHSで当初使っていた無料の基板ツールは、基板製造の前工程を行うものでした。現在では、DesignSpark PCBのおかげで製造から切り離され、50%以上の大幅なコスト削減も達成しています。使い勝手の良さと習得のしやすさによるさらなるコスト削減は算出していませんが、間違いなくこの効果もあるでしょう。

全体として、DesignSparkの習得のしやすさと直感的なインターフェイスには満足しています。3Dデータ出力機能によって、電子設計と機械設計のつながりが作られます。これはかつて、主にカスタムコンポーネントによるオーバーヘッドが大きいため不可能だと思われていましたが、今では簡単に実現できます。また、複雑な基板形状を3D CADツールからXDFフォーマットでインポートする機能は、小さな実験用筐体に複雑な形状の基板を収めなければならない場合に役立ちます。

改善してほしいポイント

  1. VCHSでは、複雑な基板形状をシルクスクリーン層としてSDFファイルでインポートし、その形状を基板アウトラインツールで照合しています。そうすることで、「基板デザインへ変換」ウィザードからアクセスできるテンプレートに、デザインをインポートできます。XDFファイルを基板レイヤに直接インポートすることができれば、もっと便利です。
  2. コネクタなど、あらゆるペイロード基板に欠かせない機械部品が事前に配置されている定義済みの「基板テンプレート」も良い機能だとは思いますが、このテンプレートが配線済みであるか、又は「すべてのネットの配線解除」によってテンプレートの配線まで解除されないように定義されていれば、魅力的だと思います。
  3. Gerberファイルの作成は、学生にとって手間がかかり、ミスが発生しやすい作業です。以前はRobot Roomの「Copper Connection」でGerberファイルやドリルファイルを自動生成していたため、手作業でのファイル名の変更や特別なドリルコンフィグレーションは必要ありませんでした。しかし、残念ながらCopper Connectionは、Express PCBがレイアウトツールとステンシル作成機能を強化するために買収してしまいました。幸いなことにVCHSは実行可能ファイルを購入していたため、今でも低コストでステンシルを作成できますが、これから新たに購入することはできないため、困る人もいるでしょう。DesignSparkを使って、OSH Parkなどの他のベンダー向けにGerberファイルを生成することができれば助かります。  
  4. 内部層の電力面を作成する際に問題が生じています。オペレータ側のミスである可能性もありますが、もしこれがバグであるなら、最優先で修正すべきかと思います。

VCHSの国際宇宙ステーションプログラム

VCHSの国際宇宙ステーション(ISS)プログラムは、宗教や信仰を問わず、すべての学生を対象とする支援プログラムです。ギャングや薬物などの「危険」から学生を救い出し、やりがいのある工学や科学の世界へと導いた実績があります。VCHSでは、恵まれている学生もそうでない学生も一緒に学んでいます。そして、最も注目すべきメリットは、全員を平等に尊重するチームワークを身につけることができるという点です。つまり、リーダーは単にアクティビティ全体を管理・調整するという他のメンバーとは異なるタスクを担っている者であり、学生が一人でも成功できなければプロジェクト全体も成功とは言えないのです。これは、学生が互いに競い合い、教師の指導の下で同じことを行なう学習環境とは異なります。ISSプログラムでは、正解は1つではないということを学び、創造性と機知に富んだ思考力を身につけ、将来のキャリアに向けた準備を行うことができるのです。すべての学校や大学には、この学生支援プログラムに携わることを心からお勧めします。詳しくは、VCHSまでお問い合わせください」

DesignSparkは、国際宇宙ステーションを目指して学生と一丸となって取り組んでいるプロジェクトについて、貴重な時間を割いてお話しいただいたJames氏に感謝いたします。ありがとうございました。こうしている間にも、DesignSparkのDNAが地球の周りを回っていると思うと、嬉しい限りです。

VCHSのWebサイトはこちら

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