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こちらの英語版記事の翻訳です。またRed Pitaya (901-0302) ご購入はこちらから
プログラマブル計測・テストデバイスRed Pitaya (901-0302) のレビュー
数々の傑出したガジェットを誕生させてきたクラウドファンディングサイト「Kickstarter」。あるものは純粋に新しいコンセプトの製品、またあるものはコストを1~2桁以上削減できる製品など、毎回私たちを驚かせてくれます。Red Pitayaは、去年、私の興味をひいたそのようなプロジェクトの一つでした。オープンソース開発されたアプリを入れ替えることで、様々な計測機能を実現し、しかも非常に安価に購入できることを目標とした製品です。
RSとRed Pitayaの代理店契約が発表された今年の春、Kickstarter上の出資者向けの製品出荷が始まりました。私はこのプロジェクトに出資していなかったのですが、今回、幸運にも評価用のボードを入手できたのでここでレビューします。
主なハードウェア性能
Red Pitayaは、デュアルコアARMプロセッサとFPGAが組み合わされたSoC「Zynq」を採用しており、その上でLinuxが動作します。
メイン入力は、独立した2系統のチャネルがあり、125MS/sのサンプルレートと14bit分解能を持ちます。アナログ出力も2系統あり、入力同様125MS/sのサンプルレートと14bitの分解能を持っています。加えて、それぞれ4つの100kS/sのサンプルレート、12bitの分解能を持つ低速入力と低速出力を備えています。
拡張用インタフェースとしては、たとえばフラッシュメモリドライブ・WLANアダプタ・カメラなどを接続できるUSB端子や、FPGAの16本のGPIOに接続されたコネクタを利用したりすることで可能です。
Red Pitayaは、通常Ethernetを通したWebブラウザを介して計測結果を表示しますが、SSHででリモートコマンドを実行してデータを転送することも可能です。USB-UARTインタフェースは、SoCへのコンフィギュレーションやデバッグのためのシリアルコンソールへのアクセスを提供します。
セットアップ
ボードのほかに、Linux OSやアプリケーションの入ったMicro SDカード、2つのオシロスコーププローブ、SMA-BNCアダプタ、電源供給用のMicro B USB、クイックスタートガイドが同梱されています。
もし、ネットワークを設定したい場合、 SDカードの/etc/network/interfacesにあるファイルを編集してください。
私はDHCPを使ったので、特にinterfaceファイルを変更することなく、初期設定のままで利用することができました。Red Pitayaをネットワークに接続し、SDカードを挿入して電源につなぎ、ルータから付与されたIPアドレスをwebブラウザに入力しました。
アプリケーション
ホーム画面では、利用したいアプリケーションを選択することができます。私は、まず、Spectrum Analyzer(スペクトルアナライザ)アプリを試してみるために、信号発生器から10MHzのサイン波を出力させました。
コントロール画面では周波数帯域の設定、チャンネルのON/OFFと表示の凍結を行うことができます。注目するスペクトルディスプレイの領域はズームインして決めることができ、ズームコントロールの右にあるボタンをマウスで選択することで、どのディスプレイを表示するか決めることができます。ページの下部には、ウォータフォール表示がされます。
次に、Oscilloscope & Generatorアプリケーションのオシロスコープを試してみることにしました。このテストを行うために、Arduinoに"analogWrite (9, 100)"という命令をプログラムして、PWMシグナルを9ピンから出力させました。
下に表示しているのは、このアプリケーションで観測されたArduinoの生成した波形です。特に驚くことではありません。
最後に、先ほどと同じアプリケーションの信号発生機能を試しました。Output 1の信号をISO-TECH ISA 830 TGスペクトルアナライザの入力につないで試します。
信号発生器に1MHzのサイン波をpeak-to-peak値が0.5Vとなるように増幅し、出力するように設定しました。
下はスペクトルアナライザの画面ですが、1MHzに-2dBm(peak-to-peak値が0.5Vのとき、50オームの負荷に対して、-2.03dBmの電力レベルとなります)のはっきりとしたピークが見られます。
(スペクトルアナライザのマーカは精密にシグナルのピーク上にないと思われます)
拡大するRed Pitayaエコシステム
ご紹介してきたアプリはほんの始まりにすぎません。独自にアプリの開発をしたければ、Backyardのディスカッションに参加し、ソースコードやドキュメントを探すことができます。一方、ワンクリックでRed Pitayaにインストールが可能なBazaarというマーケットプレイスでは、新しい公式アプリやサードパーティアプリがリリースされていきます。
近い将来、ベクトルネットワークアナライザから、世に知られぬ科学分野の実験装置やシステムまでもがアプリとして提供されることを期待してしまいます。どれだけこのプラットフォーム自体が、多岐にわたる応用分野に重大な影響を与えるか、容易に想像できます。
Red Pitaya + Parallella?
Red Pitayaは、Parallellaと同じ、Zynq SoCを利用していますが、ParallellaではZynqのFPGA部分はEpiphany浮動小数点並列演算プロセッサとのeLinkインターフェイスの実装に使われています。これを利用すれば、2つのボードをeLinkやその他高速で低レイテンシのインターフェイスで簡単に接続し、2つのプラットフォームのいいとこどりができるのではないかと思いました。高速なデータ取得をメニーコア浮動小数点アクセラレータとHDMI出力で可能にするのです。
まとめ
提供されているアプリは、驚くほど簡単に使用でき、また、新しいアプリをコミュニティが開発しやすいようになっています。Red Pitayaは非常にすぐれた小さなボードであり、そのエコシステムが成長するにつれ、価値のつけられないツールとなりつつあります。かつては資金の潤沢なラボだけが享受できた可能性を、多くの予算を持たない学校の授業をはじめ、ホビーイスト、メイカー、プロフェッショナルなエンジニアの手に届けようとしています。