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最新の半導体やLEDなど、目まぐるしく進歩するエレクトロニクスの技術革新の中にあって、コネクタ部品はもっとも地味な印象を持たれるかもしれません。
ですが、コネクタ部品はあらゆるエンジニアに必要とされる、最も複雑な構成要素のひとつであると言い切る事ができます。コネクタ部品には、魅力的な新機能はありませんが、実に様々な規格やサイズやは製品が数多く存在しており、専門ガイドの必要な広大な地雷原を歩くような困難さがあります。また、この困難は、新しいコネクタを開発する際の時間と費用にも影響を与えます。
真新しいコネクタが、一から開発されることは稀です。全く新しいコネクタ製品というものは、その接続のメカニズムやシステムを一から作ることであり、その全くの実績のなさから、顧客は消極的にならざるを得ません。こういった背景により、コネクタ製品は、革命的なステップを踏んで開発したものではなく、既存の設計を少しずつ進化させたものになっています。エレクトロニクス業界での最先端の場においてでさえも、前の世代からの実証済みで、定評のあるコネクタを使いたいと考える技術者がほとんどでしょう。
ですが、コネクタ業界はその栄光の座の上にふんぞり返っているわけではありません。常に新製品が作られ、新たなソリューションが提供されています。ただ、これらの新製品がコネクタ業界の域を超えて、大きな波を生み出すような運命となることはとても稀です。
来る次の新規格
コネクタ部品における直近の大きな事件と言えば、最新のUSBコネクタであるUSB type-Cの登場が挙げられます。発表されたのが、最初のレターボックス型USBコネクタが生まれてから20年も経っていたこともあり、USB-Cが市場最も幅広く使用されたコネクタとなるチャンスは十分にあります。スタートダッシュが遅れ、最初はハイエンドのデバイスにのみ搭載されていたUSB-Cですが、今ではどこにでも見ることができます。これは、非常に人気があった、非アップル社製スマートフォン用インターフェースコネクタに搭載されたり、世界中のゲーム機や、計算機器にも搭載されるに至りました。
USB-Cが世に出る前、その舞台裏では何が起きていたのか、心に留めておく価値はあります。type-Cコネクタを管理する規格は2014年に制定されましたが、これはこの製品が店頭に並び始める数年前のことでした。その当時、メーカは、新しいコネクタを作成するための生産ラインを設定しようと試みましたが、その時でさえ最初は採用が進みませんでした。突然の成功を収めるには長い歳月がかかる、とはよく言ったものです。
Type-Cは、明確に定義されたニーズを満たすため、ひとつの規格に準拠したコネクタです。もとのUSB-Aよりも小型で、電源とビデオをデータと共に供給するよう最適化され、さらに、裏表がありません(USBを差し込む際、向きを何度も間違えたことはありませんか?)。USB-Cは、USB活用フォーラム(USB-IF: USB Implementers Forum)と呼ばれる関係者のグループによって管理され、Microsoft、Intel、Compaqを含む、今日のエレクトロニクス業界を担う、一部の立役者によって、その規格の最終形に合意がなされました。これらの業界大手が後ろについたことで、USB-Cの普及と成功に疑いの余地はありませんでした。
別の新しいコネクタが市場に出てきました。スマートファクトリを前提としイーサネットを工場フロアに敷くために設計された新規格「シングルペアイーサネット(SPE: Single Pair Ethernet)コネクタ」です。スマートファクトリでは、製造環境におけるすべての要素をひとつのネットワークに統合し、すべての業務を中央で管理できるようにします。つまりこれは、スマートファクトリが新たな需要に素早く対応し、それに応じて動作を再設定できるということです。
スマートファクトリの大きな課題のひとつは、最も低いレベルにあるFAユニット(工場を実際に工場たるものにする機械)を、いかにしてネットワークに統合するかでした。スマートファクトリ内のオフィス機器はすべて、従来のコンピュータネットワークプロトコルや、センサ、ドライブ、制御技術を使用しており、それらは工場が使用しない筋肉のようなものでした。これは、工場の生産現場とバックオフィスの間で、全ての要素がお互いに通信できるようにするための、追加の通信機器層が必要だということを意味しています。
シングルペアイーサネット
この問題を解決するべく、SPEが設計されたのです。既存のインフラ全てを置き替えるのではなく、小型のシングルペアケーブルが、個別の機械に枝分かれし、それらを直接イーサネットのネットワークに接続するという発想です。これだと、通信の追加層が不要になり、全てをひとつのネットワークに統合できます。最も大きなサーバから最小のセンサまで、接続されたすべての装置が、ネットワークの一部となります。
HARTING社製シングルペアイーサネットコネクタ
しかしながら、SPEの市場導入については気になる点があります。コネクタのタイプが規格化されていないことです。代わりに、二つの競合するコンソーシアムが、それぞれ自らのデザインを推進しています。どちらのコンソーシアムにもコネクタメーカが含まれ、ケーブル、半導体、センサといった、インフラの他の部分を担当する企業も同時に含まれています。一つ目のコンソーシアムがSPE産業パートナーネットワークで、HARTING社のT1コネクタ (203-9055) を推奨しました。IP20等級をもつ密閉されたケーブル付プラグのT1も、馴染みのあるM12円形コネクタとして販売され、密閉されたIP67ソリューションを提供します。
ライバルであるSPEテクノロジのアライアンスは、フェニックス・コンタクト社が示す異なるコネクタを製造しています。どちらのコネクタも、小型で長方形の接点が2か所あるコネクタです。しかし、両グループが国際電気標準会議(IEC: International Electrotechnical Commission)と連携してIEC 63171基準を作成しているというのに、これらふたつのコネクタには互換性がありません。
フェニックス・コンタクト社製シングルペアイーサネットコネクタ
顧客にとってこれは何を意味するのでしょうか。回答されるべき最初の、そして、おそらくもっとも重要な質問は、誰もが工場全体を単一ネットワークに完全に統合したいかどうか、ということです。SPEを使用するということは、一セットのケーブルを取り外して、別のケーブルを敷き直すという単純な作業ではありません。この作業の代わりに、世界中の工場に設置されている、機器の巨大な基板を置き替えるのは、莫大な費用が掛かります。また、工場のコネクティビティの世界には、他のイニシアチブも存在します。SICK社のデイヴィッド・ハナビー氏が、センサ用のIOリンクに関する興味深い記事を書いており、面白いことに、ここでは既存のMシリーズコネクタを使用しています。このコネクタは、世界中のインストレーションエンジニアが慣れ親しんでいるものです。
競争が始まる!
回答されるべき2つ目の質問は、ふたつのコンソーシアムのうち、どちらかひとつが市場を支配するのか、ということです。単一の、一貫した基準を欠いたまま、VHS vs ベータの戦いにみられたような形で最終対決が繰り広げられるのでしょうか。それとも、Apple vs Androidのように、長期的な膠着状態となるのでしょうか。こういった疑問が解消されない限り、顧客は、この新しいソリューションへの移行を躊躇するかもしれません。
新しいコネクタは、特に大量販売が起こる市場においては、レアなものです。新規格の開発コストは、メーカが投資に対して十分なリターンを受けられるようなものである必要があります。しかし率直に言って、この分野にふたつの規格が競合する事はとても不健全な状態のように感じてしまいます。皆さんはどうお考えでしょうか?よかったらコメントください。
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