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以前と比べれば、現在は多様シングルボードコンピュータが登場し、利用シーンにあったものを選択することが可能となりました。
今回はROCK 4C+の特長を紹介し、その中でも特にRaspberry Piの互換性について検証します。
ROCK 4C+の特長
ROCK 4C+の特長を一言で言えば、「Raspberry Piの優れた要素を保持しながら、現場で活躍できる実践的なシングルボードコンピュータ」です。それぞれ詳しく解説します。
Raspberry Piとの互換性と代替可能性
プロセッサ
ROCK 4C+のSoCは「RK3399‑T」で、CPUは「Dual-Core ARM® Cortex-A72 @ 1.5GHz and Quad-Core ARM® Cortex-A53 @ 1.0GHz」です。一方、Raspberry Pi 4BのSoC「BCM2711」のCPUは「Quad core Cortex-A72 (ARM v8) 64-bit SoC @ 1.8GHz」です。数値的に比較するとほぼ同等で、代替として十分の処理能力があることがわかります。
Geekbench 4と、Geekbench 5での結果です。それぞれ計測内容により若干の差がありますが、単体の処理能力としては同じくらいです。
https://gadgetversus.com/processor/rockchip-rk3399-t-vs-broadcom-bcm2711/
メモリ
ROCK 4C+は4GBのメモリを搭載していますが、一方でRaspberry Pi 4Bは1GB/2GB/4GB/8GBから選択が可能です。8GBの選択肢がないのは残念ですが、Raspberry Piの互換性を維持しつつ高性能を求める場合、価格は上がりますが「ROCK 5A」という選択肢があります。ROCK 5Aは最大16GBのメモリをサポートし、CPUの性能も向上しています。この意味で言えば、ROCK 4C+の4GBメモリは十分であると言えます。
サイズ、コネクタ配置
サイズはRaspberry Piと同じ85mm x 56mmです。外回りのコネクタの種類やその配置も同じです。これにより、周辺機器やアクセサリの流用が期待できます。
価格
販売サイトによりますが、ROCK 4C+は「8,796円(税込み)」、Raspberry Pi 4B (4GBメモリ)は、「8,702円~」と価格帯はほぼ同じです。(2023/12/20 時点)
運用で嬉しい機能
eMMCモジュールが使える
実験や検証時にはmicroSDカードでも問題ありませんが、長期的な稼働を考える際にはより信頼性が求められます。ROCK 4C+にはeMMCコネクタが備わっており、この点で安心して利用できます。
電源ボタンが搭載されている
頻繁に電源を入り切りする商品の中に組み込む場合、やはり電源ボタンは必要不可欠です。
外付けアンテナ
無線を使う前提であれば、外付けアンテナをケース外に配置することで、選択しづらかった金属ケースも使えるようになります。この記事の後半では実際に鉄製の公式ケースに収容してみます。
比較表
ROCK 4C+ | Raspbrry Pi 4B | |
SoC | Rockchip RK3399-T | Broadcom BCM2711 |
CPU | Dual-Core ARM® Cortex-A72 @ 1.5GHz and Quad-Core ARM® Cortex-A53 @ 1.0GHz | Quad core Cortex-A72 (ARM v8) 64-bit SoC @ 1.8GHz |
GPU |
Arm Mali™ T860MP4 GPU, supporting
|
VideoCore VI
|
RAM | 4GB | 1GB/2GB/4GB/8GB |
ストレージ |
|
|
USB |
|
|
ビデオ出力 |
|
|
カメラ | MIPI CSI 2レーン | MIPI CSI 2レーン |
オーディオ | 3.5mm ジャック オーディオ入出力 | 3.5mm ジャック オーディオ入出力 |
Ethernet | Gigabit Ethernet PoE対応(別途 PoE HAT が必要) | Gigabit Ethernet PoE対応(別途 PoE HAT が必要) |
拡張ポート | 40PIN | 40PIN |
WiFi/BT | 802.11 b/g/n/ac(WiFi5) /Bluetooth 5.0 with BLE *1*2 | 2.4 GHz and 5.0 GHz IEEE 802.11ac wireless, Bluetooth 5.0, BLE |
ボタン | 電源ボタン | なし |
電源 | USB C 5V/3A | USB C 5V/3A |
サイズ | 85mm x 56mm | 85mm x 56mm |
参照元
- Radxa ROCK 4C+ Tech Spec
- Raspberry Pi 4 Model B specifications – Raspberry Pi
- Raspberry Pi 4B Allegro
Okdoからもみやすい比較表が公開されています。
*1 自身の環境ではしばらく5GHzのアクセスポイントが見つからないということがありました。アクセスポイント側の設定で帯域を80MHzから40MHzに変更すると見えるようになりました。利用していたアクセスポイントはだいぶ古いので、相性の問題もあるのだと思います。
*2 工事設計認証番号(2.4GHz) : 214-123993 / 工事設計認証番号(5GHz) : 214-123993
互換性の検証
ROCKの公式サイトによれば、公式のアクセサリーに加え、サードパーティのアクセサリーとしてRaspberry Piカメラやタッチスクリーンが使用可能であるとされています。
(Radxa公式サイトより一部抜粋)
これらが実際に使えるかどうかも気になりますが、今回はたいていの利用シーンで必要とされるヒートシンクとファン、そしてケースに焦点を当てて調査します。使用するのは「Raspberry Pi 用の Extreme 冷却ファンキット」と、「Raspberry Piオフィシャルケース」です。「Raspberry Pi 用の Extreme 冷却ファンキット」については、ROCK 4C+専用のケースに取り付けた状態で適切に収まるかどうかも含めて検証します。
Raspberry Pi 用の冷却ファンキット
Raspberry Pi 用の Extreme 冷却ファンキット
取り付け
付属していたRaspberry Pi 3B用のサーマルテープをカットして貼り付けました。
MIPI CSIのコネクタの位置はRaspberry Piと異なるため、MIPI CSIのコネクタの位置だけヒートシンクで覆えていない箇所がありますが、ヒートシンクがROCK 4C+と干渉する可能性はありません。
動作確認
ROCK 4C+の5VとGNDに線をつないで起動すると、ファンが動きました。GPIOのピンは「ROCK 4 Family GPIO Definition | Radxa Docs」に公開されています。
ROCK 4C+ケースに入れてみる
先ほどのファンとヒートシンクをつけたまま、ROCK 4C+のケースに収容してみます。鉄製の丈夫なケースです。
Okdo ROCK SBCケース ROCK 4C+ シングルボードコンピュータ用 OKdo Rock 4C+ Case
ケースにROCK 4C+を収めてみました。ケース横の穴からアンテナを外に出すことができるので、鉄製のケースですが無線の利用に支障がありません。収容してもケース上部に十分な余裕があり、ヒートシンクやファンがついていても問題なく蓋が閉まります。
動作にも問題ありません。専用のケースだけあって電源ボタンがケース外から押せるのは便利です。
起動しました。
Raspberry Pi オフィシャルケース
RadxaのROCK 4C+の商品紹介ページには、見覚えのあるケースに入ったイメージ画像があります。Raspberry Piケースに入るよとは書いていませんが、この画像はどう見てもRaspberry Piケースです。
(Radxa公式サイトより一部抜粋)
これはおそらくRaspberry Pi オフィシャルケースだと思うのですが、このイメージ画像からはぴったり入りそうな期待をしてしまいます。
Raspberry Pi Raspberry Piケース, Raspberry Pi 4B 用 Official シリーズ プラスチック RPI4 Case Red/White
試してみる
このケースは上下のプラスチックの突起で留めるタイプです。最初は下側に入れる際、わずかに引っかかっているように感じましたが、何度か試行するうちにスムーズに嵌まるようになりました。最初は思い切りが足りなかったのか、何度も試しているうちに突起が削れてしまったのかはわかりません。最終的にはサイドのコネクタ位置もぴったり合い、期待できそうです。
ROCK 4C+の裏にはeMMCも取り付けたままですが、サイドのコネクタ位置もぴったりです。
上の蓋を閉めてみました。ちょっと隙間が空きます。
蓋を閉めるときにヒートシンクを取り付けたまま、ピンにケーブルを挿したままだったことは、さすがに問題かと思いましたが、よく見るとその原因は基板の厚さでした。ヒートシンクが原因であれば、この箇所では蓋が基板よりも上に浮くはずです。
基板の厚さ
手元ボードを計測してみました。ROCK 4C+は1.75mm、Raspberry Pi 4Bは1.36mm。わずかですが、0.39mmのROCK 4C+の方が厚くなっています。
微調整する
干渉している突起を少しやすりで調整してみました。許せる程度に蓋が閉まるようになりましたが、次はUSBコネクタ上部が蓋と干渉して完全にぴったりとは閉まりません。この部分も削ればぴったり閉まるかもしれないですが、とりあえず閉っていると思う程度には閉っているのでこれで良しとしました。
microSDカードもケースに入ったまま挿すことができます。
微調整だけではどうにもならなかったのが電源ボタンでした。電源ボタンをケース外から押せるようにするには、ケースに穴を開けるのと、ケース外側からボタンのある位置まで届くスイッチ用の棒を用意する必要があります。ただ、Raspberry Piと同じように電源ケーブルの抜き差しで、電源のON/OFFを行う分にはケースと電源ボタンが干渉しているわけではないので、使用上の問題はありません。
動作確認
ケースに入った状態でLANケーブル、キーボード、マウス、mircoHDMIを挿して、起動してみました。
どのケーブルも奥までしっかり挿入されているようで、特に問題なく使えました。
Raspberry Piアクセサリを使用する時のポイント
今回の検証結果より、RaspberryPiアクセサリを使用するときに留意した方が良いポイントをまとめます。
MIPIコネクタの位置
ROCK 4C+のMIPIコネクタ位置はボードの端にまとめられ、かつコネクタの高さも低いため、それほどMIPIコネクタが干渉する可能性は低そうです。ただし、ボードの端まで覆うタイプのヒートシンクなどは干渉の恐れも考えられます。
基板の厚さ
基板の厚さがわずかに違います。それにより、そのまま使えないアクセサリがあるかもしれませんが、基板の厚さだけの問題であれば、微調整で使えるかもしれません。
電源ボタンの干渉
Raspberry Piにはない電源ボタンは、RaspberryPiアクセサリには全く考慮されていません。アクセサリと電源ボタンが干渉しなければ動作上は問題ないかもしれないですが、電源ボタンをケースに入ったまま使いたいという場合は素直に専用ケースを選択した方が良さそうです。
裏側の部品の配置
ここでは詳細は触れませんでしたが、もう一つRaspberry Piのケースでも検証してみました。しかし、裏側の小さな部品が干渉して入りませんでした。これはやすりで少し調整すれば対処できる範囲のものですが、Raspberry Piに特化しすぎたケースは注意が必要です。特に、ケース裏側の隙間がシビアな場合、eMMCを取り付けた際にも干渉する可能性が考えられます。
おわり
ROCK 4C+の利点や特にRaspberry Piとの互換性に焦点を当て、今回は冷却ファンキットとケースの検証を行いました。互換性を主張しているだけあって、検証したどのアクセサリも大きな問題はなく使うことができました。そのほかのRadxa公式サイトに掲載のサードパーティアクセサリーも機会あれば検証していきたいと思います。
ROCK 4C+の利点についていくつかご紹介しましたが、結局、ROCK 4C+の最も注目すべき特長は、eMMCが利用できる点だと思います。過去のプロジェクトでもその点が心配でRaspberry Piの中でもReTerminal(Raspberry Pi CMを搭載したeMMC内蔵のディスプレイ付きの製品)を検討しましたし、社内サーバーとして活用した時もHDDを利用していました。それくらい日々運用して使う機器としては、microSDカードは信頼性に不安があり避けていたのです。スペックや価格、サイズもほぼ同じですので、一つ検討してみてはいかがでしょうか?