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この記事では、近年の社会情勢から、運輸業がどのような影響を受けてきたかを見ていきます。と同時にエレクトロニクス業界にどのような影響を与えているかも考え、電気・電子部品を取り扱うバイヤー(資材担当者)の皆様に向けて「正しい解決策」をしていくための情報を提供します。
直近の1年間は、国際運輸とサプライチェーンがいかに脆弱だったかを痛感する年でした。新型コロナウイルスのパンデミック開始と同時に、航空輸送では何千便ものフライトがキャンセルされ空の交通に大きな影響が出ました。航空貨物の大部分は人と一緒に旅客機で輸送されるため、旅客便の運航減少は航空貨物業界全体の輸送力をも減少させました。12ヶ月経った今でも、空の旅はパンデミック前よりも少なく、貨物業者は製品を配送するための代替手段を早急に見つけなければいけません。
また道路を使った陸運ではコロナウイルスがヨーロッパで大流行した際に、感染拡大を防ぐために各国が国境を封鎖して通行を禁止する光景が見られました。イギリス海峡の両岸に大量のトラックが立ち往生している光景は、2020年のニュースでよく取り上げられ国境閉鎖が国際貿易に与える影響の好例となりました。
たった一つの出来事が世界を変えた
画像:EPA
2021年初頭には、感染症対策の面でも世界貿易の面でも改善の兆しが見えたかのように感じました。ところが2021年3月、大型コンテナ船がスエズ運河を約1週間にわたって塞ぐという事態が発生し、グローバルサプライチェーンの脆弱性が改めて浮き彫りになりました。世界貿易の約75%は海路で行われていますがその大部分はスエズ運河やパナマ運河などの少数の隘路を通行しなければなりません。このような狭い水路では小さな事故が大きな社会情勢への影響を与えることがあります。
スエズ運河の事故を受けて、海運会社は製品を市場に送り出すための代替ルートの確保を図りました。しかしその努力はさらなる事象を引き起こしたのです。スエズ運河の事故が復旧し、滞留していた船が一気に解放されたことで、一度に多くの船が港に到着するようになり、一部の港が船の輸送量に対応できなくなりました。
電子機器(エレクトロニクス)への影響
この状況下で電子機器(エレクトロニクス)業界は激動の時代を体験しています。通常、電子機器のサプライチェーンでは頻繁に欠品やリードタイムの延長が発生します。これは成長産業の需要が急増した場合や、原材料が不足した場合などに起こります。このような状況下では部品メーカーはリードタイムを延長します。そしてそれに対応すべく部品ユーザ(特に大口顧客やその商社)は欠品回避のために複数注文や先行手配を行い、そしてその過剰オーダーが供給不足問題をさらに悪化させることが多いです。これが「アロケーション(allocation:割り当て)」の世界であり、多くのバイヤー(資材部)を混乱に招き入れる言葉でもあります。
確かにこの現象は半導体や受動部品(素子)の世界ではよくみられる光景です。コネクタ市場では一般的には同じ問題は発生していません、少なくとも同じ程度の問題でもありません。しかし昨年来のサプライチェーン問題の影響はコネクタを含めすべての産業業界に及んでいます。
部品が安定的に供給できない市場状況において、製造スケジュールに合う代替部品を手配するのがバイヤーの業務です。部品の中には他メーカーの代替部品でも問題が少ないものもあります。特に受動部品やディスクリート部品のようなものは他のサプライヤの同等品と代替できることがよくあります。
しかし、コネクタ部品は必ずしもそうであるとは限りません。大半のコネクタはピンとソケット、オスとメス、プラグとレセプタクルなどのペアで動作します。
コネクタは通常、ペアで動作 上図モレックス社のVersablade
画像:Molex
そして、コネクタのペアの片方しか入手できない場合に大問題となります。期日通りの納品を望む顧客や担当営業、工場を停止させたくない生産現場、業績の下方修正を避けたい株主や経営者などから、強烈なプレッシャーの集中砲火をバイヤーは受けることになります。
バイヤーへのプレッシャー
このようにバイヤーがプレッシャーを受けている状況下では、短期的な問題を解決するために異なるメーカーのコネクタを混在させたくなることがあります。確かに、ある場合ではこれは全く問題ありません。例えば軍用コネクタを使う場合です。軍用コネクタは共通の規格に基づいて製造されており、このような状況下での接続性を考慮して設計されています。しかし市販のコネクタは必ずしも互換性があるとは限りません。表面的に似たようなスペックの製品に見えても、実際に使うと危険な組み合わせになる可能性もあります。
コネクタメーカーは様々な状況下で多数の結果を達成するために、製品の製造に様々な材料を採用しています。しかしすべてのアプリケーションに対応できる材料はありません。バイヤーは機器の性能に合わせて適切な材料を選択することの重要性を理解しておく必要があります。異なるメーカーのコネクタを混在させると相性の悪い2つの材料を導入する可能性があり、設計の機能に影響を与える可能性があります。
上記の一例を挙げると、様々な高出力コネクタは耐高温材料の使用が重要となります。例えば動作温度が105℃のコネクタと、85℃のコネクタを接続して使用する場合を考えてみましょう。多くの産業用アプリケーションに見られる過酷な環境下では、高温が劣るコネクタの温度(85℃)を超えてしまい、プラスチックが軟化して破損したり火災が発生したりする危険性があります。
このようにコネクタ部品は、その使われるシステムの根幹にかかわるものであるため、代替え品を使用することの危険性をバイヤーおよび使用者は正しく認識する必要があります。
誘惑に負けない!
この1年間で世界の部品供給状況に大きな変化が見られました。航空貨物市場はコロナウイルスのパンデミックの影響から回復しようとしています。また、世界各国では病気の蔓延を防ぐために国境を越えた旅行を依然として制限しています。さらに2021年3月のスエズ運河閉鎖などの不測の事態の影響もあり、サプライチェーンの状況はいまだに混沌としています。
しかしだからと言って、短期的なサプライチェーンの問題の対処として、バイヤー及び使用者が不適合な代替品を使用するのは危険です。例えバイヤー自身が問題を自覚し正しく対応しようとしていても、不敵な圧力をかけてくる利害関係者が多数表れてくることでしょう。
異なるメーカーのコネクタを混在させることで発生する目に見えないリスク(潜在的な品質問題、設置不良、機器の故障など)は、後々のブランドイメージを損なうことになりかねません。最悪の場合、重大な安全上の問題を引き起こす可能性もあります。安易な解決策の誘惑に負けないように気を付けましょう。
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