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昨年夏のサッカー欧州選手権中に、オランダ アムステルダムにあるヨハン・クライフ・アレナ(Johan Cruijff ArenA)スタジアムにおいて、3つのグループリーグとベスト16の試合が開催されましたが、この会場、普通のサッカースタジアムとはわけが違います。次世代のスマートなスタジアムとしての様々なイノベーションの実験場と呼んでもよいかもしれません。
今年は、アムステルダムとAjax Football Club(アヤックス・アムステルダム)の提携25周年の年になりますが、現時点で世界最先端の施設です。
オランダは小さい国ですが、国民のDNAの奥深くには、独創的な思想が眠っています。スタジアムがあるアムステルダムの南東部は、ユニークな場所へと変貌を遂げ、そこでは移動性、サステナビリティ、体験、安全、セキュリティーが組み合わさって、一つのオープンイノベーションプラットフォームとなり、スマートスタジアムや、スマートソリューションの開発と試験を盛んに行うことが可能になっています。
このスタジアムでは、施設維持や来場者による環境負荷を最小限にするための、検証済みの革新的なサステナブルテクノロジーを集積し、可能な限り幅広い分野で大小さまざまなに採用しています。こういった取り組みによって、スタジアム内だけではなく、周辺の近隣環境や、より広範な社会にも利益をもたらしています。
オレンジ色のユニフォームとグリーン色のエネルギー
大会中、フランク・デ・ブール(Frank de Boer)がピッチに立った時、ピッチ内は オランダ代表の象徴なオレンジ色のユニフォームで彩どられましたが、ピッチ外ではスタジアム中のエネルギーはグリーンエネルギーで満たされていたのです。
スタジアムの屋根に設置された4,200枚超のソーラーパネルと、近くのアウデンデイク(Oudendijk )にある風力タービンの組み合わせにより、ヨハン・クライフ・アレナはスマートでサステナブルな施設を実現しています。
さらに、スタジアムの画期的な挑戦は続きます。今後のさらなる革新を目指し、エマージングテクノロジー(実用化が期待される最先端技術)の実証実験の場としても利用が進んでいます。例えば、サステナブルな方法でいつでも必要な時に発電・蓄電・給電できるシステムも採用されています。このシステムは、RS ComponentsのサプライヤーであるEatonを含め、日産、BAM、Mobility Houseも加わり、 Amsterdam Climate and Energy Fund (AKEF) や Interreg(国境を越えた地域間協力の促進を目的とする戦略的プログラム)の後援により設置されました。これにより ヨハン・クライフ・アレナ スタジアムは、商業施設内に設置するものとしては欧州最大規模の蓄電システムを開発するに至ったのです。
常に前進し、新たな機会を探し求めることで、ヨハン・クライフ・アレナ スタジアムは「サステナブル」としてのブランディングに成功しているといえます。
中古の日産リーフ車のバッテリー148個分が、2.8 MWhの能力を伴う3 MW の電力ストレージを提供します。この高度なシステムは、スタジアム内におけるエネルギー供給と需要の均衡を保つことができます。また、停電中のバックアップとしても動作し、ディーゼル発電機の使用を確実に減らすことが可能です。
このシステムの主な目的は、停電が起こった場合や、電力使用が多い場合に、スタジアムにバックアップ電力を供給することです。しかし、持続可能エネルギー源を確実に提供するのと同時に、コンサート中やその他の大きな電力を消費する出来事中の、オランダの電力網に対する負荷を緩和します。
また、低需要期には、スタジアムから電力網に電力を供給でき、7,000戸に1時間電力を供給し、500,000台のiPhoneを充電可能です。
JCAのチーフイノベーションオフィサー、ヘンク・ヴァン・ラーン(Henk van Raan)氏は次のように述べました。
「 我々の目標である、『持続可能エネルギーで全ての電力を賄う』というのは、つまりエネルギーをどのように蓄えるか?を考える事でした。試合やコンサートは毎日あるものではなく、週にたった1度のことなので、エネルギーを蓄え、必要な時にだけ電力として使用できるようなバッテリーの開発を試みていました。
そこに、EV自動車を開発・製造する日産からある提案を受けました。EV自動車で使用されているリチウムイオンバッテリーは、自動車用途として寿命を過ぎた後であっても何年間も充電することができ、破棄するのではなく何かの形での再利用する事が議論されていいます。我々の蓄電システムの取り組みが公表された際に、同様の課題を抱えていた日産から。EV車用バッテリーのセカンドライフとしての使用を提案されました。」
ピッチはただの芝生じゃないの?
ヨハン・クライフ・アレナで応用技術を最も活用できる空間といえば、紛れもなくピッチです。
スタジアムには、芝生を確実に成長させる革新的なLED照明システムに加え、屋根の上に気象センサーが設置されていて、湿度、温度、風に関する情報を提供しています。加えて、ピッチ内のセンサーで、芝生の質とその密度を測定します。また、継続的なメンテナンスプロセスを向上させるために、データの照合、フィルタリング、分析が行われます。これには、サッカーの他にも利点があり、コンサートに向けて芝生を覆うプロセスを改善し、芝の状態をベストコンディションに保つようなアルゴリズムの開発することで、スタジアムが多目的会場となることにつながっています。これにより、アヤックスのサッカーシーズン中でも、イベントを開催することが可能です。
ヨハン・クライフ・アレナスタジアムのグラウンドキーパー長も、毎日ピッチを確認し、サッカーフィールドが、自然の芝生の生え具合に限りなく近いような、万全のコンディションに保ってくれています。しかし、彼が変化をもたらす主体となるまでには、そう時間はかからないでしょう。彼の作業道具にはそろそろ、ピッチに埋め込まれているチップと接続された異なるセンサーによって、芝生の質を測定することができるような特殊な靴底の靴が含まれることになります。このイノベーションは、彼の時間を節約するだけでなく、彼の意思決定の助けとなり、仕事効率をより一層良くしてくれるでしょう。
廃棄物への斬新なアプローチ
また、ヨハン・クライフ・アレナは廃棄物に対しても積極的なアプローチをとっており、廃棄物を極限まで減らし、高度なリサイクルを行ったり、廃棄物の分別回収を容易にするために、イベント中の残留廃棄物量を徐々に減らしたりと、可能な限り循環型の発想を取り入れています。
同時に、彼らは廃棄物を活用するクリエイティブな機会を積極的に利用しました。ピッチから刈られた芝生はアムステルダムの農場、De Dikhoeveに届けられ、ここではArenA(アレナ)チーズのためにヤギの乳を絞って、チーズはスタジアム内のチーズボードで販売されているだけでなく、ほかの取扱店やレストランでも提供されています。
スマートスタジアム、スマートファイナンス
ヨハン・クライフ・アレナは間違いなく、データ分析に重点を置いたエコシステム作りし、想像力を駆り立てて、世界中の都市にとって利益となるであろうソリューションに取り組むことに成功しました。しかし、テクノロジーの試験と導入に費やす無限の予算があったわけでもないのに、どのようにして成功を収めたのでしょうか。
ヨハン・クライフ・アレナのインターナショナルディレクター兼イノベーションマネージャのサンダー・ファン・スティファウト(Sander van Stiphout)氏は次のように述べました。「イノベーションと開発の最前線に立つには、様々な方法があります。多額の予算を使って市場にある関連製品全てを購入することもできますが、逆に、私たちが行っているのは、スタジアムを提携企業が野外実験室のように使用できるよう、誘致と動機づけを行い、彼らが提供できることすべてを世界に発信し、社会に影響をもたらすといったものです。そして、私たちはこれを、受益企業、Johan Cruyff Instituteのような企業パートナー、そして、スタートアップと協力するといった前提の下に行っています。私たちはイノベーションを起こし、加速していきます。」
下から、真の革新的なスタジアムになる方法について、スティファウト氏による無料ウェビナーを視聴できます。