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ポータブルDJシステム「Red Tin」誕生の物語
私は若い頃から音楽に夢中になっていて、十代後半から二十代前半はDJプレイに夢中になっていた。その後、仕事・結婚・子育てでしばらく疎遠になっていたが、数年前の誕生日に DJ MIDIコントローラーを手に入れて以来、DJプレー熱が再燃。近所の「The People’s Republic of Disco」というクラブで出入りし、毎週末 DJプレイを行うようになった。
そう、あれは DJ人生を再スタートさせて数年が経ったある金曜日のことだった、 私は小さなバーでいつも通りのDJプレイをして過ごしていた。
いくらDJでもレコードとワインはMIXできない!
その日、私は客のリクエスト曲をミックスすべく、ノートPCをDJシステムに接続していた。すると ノリノリになった客の一人が興奮のあまり飲んでいたワインをなんと私のノートPCとMIDIコントローラーにこぼしてしまったのだ!「貴重な曲のライブラリが!!!」とかなり焦ったが、幸運なことに私の機器は生き残ることができた。ホッと胸をなでおろしたのもつかの間、私は考え込んでしまった。高価なハードはもちろん貴重なデータを何らかの形で(しかも出来るだけスマートな方法で)保護する必要があるのではないだろうか。
これは私だけの問題ではない。小さなクラブやバーでDJをしている人は、ほぼみんな似たような経験をしていて、不幸にも全てを失った人も少なくないだろう。
「Red Tin」の誕生
帰宅した私はさっそく考えた。私のDJシステムの保護になにか使えそうなものはないだろうか。そう考え部屋を見渡していた私の目に、最近テレビスタンド代わりに買った赤い工具棚が目に入った。たしかこれに付属してた一回り小さい工具箱があった・・・、ほとんど使ってないし・・・、サイズ的にいけるかも・・・などと考えるより先に作業に取り掛かかっていた。工具箱の上部にはノートPCをのせ、引き出しの1つにMIDIコントローラーを取り付け、他の引き出しにはヘッドフォン、ケーブルなどを収納させてみた。うん。良い感じ! いくつか穴をあけることでノートPCからコントローラーへUSBケーブルを繋げることもできた。こうして、私の最初のポータブルDJセットを赤い工具箱に収納することができた。これが最初の「Red Tin」だ。
以降、このポータブルDJセットを現場に持ち込み使うようになった。赤を基調とした特徴的なデザインのためか、いつの頃からかそれは「The Red Tin」と呼ばれ、私のトレードマークになった。レコードとターンテーブルという従来のシステムからは大幅にサイズダウンしたものの、その色と形状で、Red Tinは存在感と謎めいた雰囲気を醸し出すよい演出となっていた。
時には、演奏のふりをしながら事前にPlayしたMIXデータを垂れ流し、PCでSNSをチェックしているだけのこともあったが、フロアの聴衆にばれなかったのはRed Tinの存在感のおかげかもしれない(笑)。また当初の目的どおりアルコールなどの液体からシステムを守り、湿った地面の上などの場所でもプレイを可能のしてくれた。なによりレコードとターンテーブル一式を運ぶよりもはるかに手軽に移動できる。
Red Tin ver.2
長年に渡り、私はRed Tinの改良を続けた。バージョン2では、ノートPCが収まるようにいくつかの大きな穴を開けたり、ケーブル配線を整えたりして、小さく、軽くしていった。何年にも渡ってデザインを改良していた日々がなつかしく思い出される。
Red Tin ver.3: さよなら、ノートPC
いくつかの現場では小さなPC(Intel NUC や UDOO x86 )も使用してみた。工具箱にノートPCを組み込む方よりもすっきりするだろうと考えたからだ。使っていくうちに、これらが理想的であると考え始めた。そこで Arudinoベースの DIY MIDIコントローラーを探し、引き出しに入りそうなものを見つけ搭載した。そして、私は最初にUDOO x86と工具箱を注文し、どのように組み合わせるか考え始めた。最初の試みで作られたモノは配線ぐちゃぐちゃの、まるで自家製の時限爆弾のようだった。
さすがに爆弾っぽいDJ機材は印象が良くない。DJとしてとしての世界デビューといった万が一 のチャンスも潰しかねない、などと妄想しながら改良をつづけた。この過程で初めてレーザーカッターにも手を出してみた。これはとてもワクワクする作業だった。仕切りを取り外し、レーザーカッターで作ったアクリルのユニットを収め、羽根つきナットで固定することが最善の策であると考えた。こうしたことで余計な手間が必要なく、簡単にデザインを変えたり、モノを移動させたりすることができるようになった。.
最終的に、メインとしてUDOO x86、ストレージとしてHDD、USBハブ、サウンドカードを最上部に配置することに決めた。配線を通すために工具箱の側面に穴を開けた。Red Tinは動作中にインターネットやUSBに接続する必要はなかったが、使用ソフトや重要な音楽のコレクションのアップデートに接続性を確保することができる。一番上の引き出しにはMIDIコントローラーが、また一番下にはUDOO x86スクリーン用電源、ヘッドフォン、ケーブルアダプター、鎮痛剤(DJの必需品)を収めてみた。
さらなる洗練のために
デザインと人間工学の面で最も注意が必要な部分がMIDIコントローラーだ。これは使っている人間が、しっくりこないといけない。ツマミ、ボタン、フェーダーなどをアレンジする必要がある。しかし、難しく考える必要はない。現代の技術に、少し「レトロ」な雰囲気を与えるアイディアが好きな私はシンプルにしようと決めていた。そこで、私は工具箱から離れて、MIDIコントローラーを見ながら、「どのようなボタンが何をしていたのか覚えているか?」と自分に問いかけた。私は1970年代のクラシックなロータリーDJミキサーに憧れていたものを欲しがっていた。私はAuroraや Instructablesの優れた記事など、他のオープンソースのMIDIコントローラを見て回った。私は Dart controller kitを購入し、 Arduino Leonardo (761-7324) を追加して、引き出しに合わせてレイアウトを調整することに決めた。キットを買ったことで余計な開発に時間をかけること必要が無かった。今年の夏、私が出演する音楽祭に持ち運んで使おうと思っている。
私は今、Korg Nutubeといくつかのニキシー管を使ったレベル・メーターを追加して、レトロフューチャーな雰囲気を加える予定だ。 私たちはこれがどうなるかを見ることになるだろう。
金属容器の中の電子機器
私のプロジェクトはこの記事を書いているように、家庭用電子機器を、金属容器に入れるという伝統に沿っている。1970年代といえば、ツナ缶ラジオが代表的だろう。その他にも「electronics projects in tins」で画像検索を行うと、Altoids peppermintの缶を使用した様々な例を見ることができる。私のプロジェクトもこのような伝統の一部になれることを願っている。