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サステナビリティに貢献するものづくり活動に挑戦しよう!
「産業化」は私達の生活を向上させ豊かにしてきました。と同時に一方では気候変動や環境破壊を進める事にもなりました。そして今日、気候や環境を大きく変動させることなく持続させる事、「サスティナブル」な発展に世界が注目しています。私たちは、ビジネス、娯楽、高水準な医療、豊かな住宅といった”産業化の恩恵”を保ちながら、サスティナブルな発展を同時に到達するソリューションや新技術を必要としています。そしてそれを実現する技術者や技術的な活動が求められています。このようなサスティナブルな志を持った技術活動する人々を、我々は「アクティブエンジニア」と呼ぶことを提案したいと思います。
環境意識の歴史
工業化に起因する健康被害の懸念については、産業が始まって以来、絶え間なく続いています。特にここ数十年は産業公害(工業汚染)に関するニュースを見聞きする機会が増えています。その中には不適切な設備や不十分な法律が原因となっているものもあれば、産業を進める人が”利潤”を求め故意に「手抜き」をして引き起こされたものもあります。
インドのボパールで起きたユニオンカーバイド社のバッテリー工場事故では、特に沿岸の貧しい地域の労働者に甚大な被害をもたらしました。さらに化学汚染についての不安と掛け合わさるように、会社の工業安全に対する責任感への疑念が強まりました。
1980年代から90年代にかけて起こった酸性雨(二酸化硫黄や窒素酸化物などの化合物と大気中の水分が結合して起こる雨)は農作物や動植物、湖や川の健康を脅かしました。酸性雨などの大規模な環境問題は対処が難しく、問題の正確な特定、問題の程度、原因の特定、実用的な解決策の立案とその実施のための膨大な量のデータを収集・分析する必要があります。さらにその後、問題の原因とされた企業・団体はコンプライアンスを確保する必要が出てきますが、これにはよりクリーンで新しい設備や改善プロセスへの莫大な資金投入が必要なためさらに実現の難易度が上がります。
今では環境、気象パターン、動物の個体数、海面水位の変化、サンゴ礁の減少などの生態系の破綻が地球温暖化の影響を受けていると考えられ、工業汚染や酸性雨などの問題は地球レベルまでスケールアップしています。その問題に対処すべく、これまで非常に多岐にわたる環境についての研究と何年も積み重ねてきたデータの共有と分析、仮説議論、モデリングが行われました。そして原因と地球温暖化が及ぼす影響の証明が提示され、今後想定される事態を予測できました。これにより社会全体、個人から企業そして政府に至るまでの地球温暖化対策に関連する2015年のパリ協定や最近の2021年11月に行われたCOP26会議のような協定を推し進めることができています。
上記で取り上げた問題は必ずしも最近になって対処し始めたわけではありません。問題自体は古くから認識されており、そして公害を減らすための努力も以前から続けられていました。
*The Historical Archive(歴史資料)には1913年に、世界初の大気汚染防止装置「シンダーキャッチャー(Cinder Catcher)」が作られていたことが記されています。
また、化石燃料のような従来のエネルギー源が地球温暖化の原因となることや、燃料の有限性が認識されるようになり、エネルギー需要の削減が求められるようになりました。エレクトロニクス分野では鉛フリーはんだへの移行やEUのRoHS指令やWEEE指令、EUのErP、米国のエネルギースター、家電製品のエネルギー表示制度、電気機器の外部電源アダプタや充電器などの製品に適用されるエコデザイン規則などのエネルギー関連法規や行動規範が最近の取り組みとして挙げられます。
このように地球温暖化に対しての問題は多面的に長い年月をかけて対処し続けてきていますが、現状解決には至っておらず課題は尚増加傾向にあります。ではどうすればよいでしょうか?一緒に考えていきましょう。
大量消費主義が原因?
私たちはかつて、モノを使い捨てることはしていませんでした。昔の人々は所有物をより少なく、あるもので間に合わせてやりくりして生活していたのです。ですが現代はどうでしょうか?人々は必要以上にモノを買い、その分捨てています。人間の性質が昔と前(数十年の間)で劇的に変化するというのはあまり考えられません。性質が変わっていたのではなく、昔はモノの入手が容易ではなくそれにより物欲求が抑えられていたのです。近年ではより高密度でハイテクなテレビや白物家電が手頃な価格になり、それらを大量に購入して捨てています。
そのような中でエレクトロニクス業界は消費者の生活をより生産的により快適に、より楽しくするために、日々新しい発明をしてきました。パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、ゲーム機、その他の多くのものが巨大なテクノロジー世界市場を作り出しました。特にエレクトロニクス技術や半導体は目立たないものの重要な役割を担ってきました。例えば、20世紀後半における半導体による樹脂とそれに関連する成形プロセスの発展は、多くの製品の品質と外観を向上させたのはもちろん、製造性を高め、消費者の懐に入るようコストを下げるのに大いに貢献したのです。
この時代は大量消費主義がブームを迎えた時期で、これが21世紀でさらに加速しました。1970年代初頭、平均的な家庭にはテレビ、洗濯機、冷蔵庫、レコードプレーヤー、Hi-Fiがそれぞれ1台ずつありました。対して現代ではより高度な家電が出てきており、値段も手頃なため欠陥があればすぐに捨てられます。もちろん中には修理サービスなどで修理を依頼する人も居ますが、大半の人たちはインターネットで代わりの新しいものをすぐに注文するでしょう。
どんな製品も最新世代になればなるほどよりスタイリッシュで機能的になり、新しい選択肢がどんどん増えていきます。さらに価格競争によって金額もより合理的なものになっていきます。プラスして新しいものを買いたくなるように魅力的な保証が付いてきます。これらの利益がメーカーのビジネスを成長させ、市場シェアを獲得し、株主を満足させるために販売を拡大していきます。つまり企業の存続(およびそれに伴う雇用と年金)には次世代製品を迅速に、予定通りにそして競合他社よりも早くリリースしていくのです。この”循環”こそが「大量消費主義」を引き起こし定着させているのです。
一方でエレクトロニクス分野に狭めて見てみると、この分野はそもそもサステナビリティにあまり適していません。代表的な例としてスマートフォンがあります。スマートフォンは買い替えの間隔が比較的短く、素材の再生やリサイクルが困難です。Energy Industry Reviewによると携帯1トンに含まれる金の量は、金を抽出できる鉱石1トンの金含有量の100倍にもなります。
さらに半導体メーカーは各チップの消費電力を最小限に抑え、その他にも設計者がアプリケーションレベルで利用できる柔軟な電源管理モードを実装することを目指していますが、より多くの機能や高速応答に対するユーザーの要求により、設計~リリースまでの全体の消費電力は上昇の一途をたどってしまっています。
代替案は?
大量消費主義やそれが環境(+貧しい社会とすべての人間の精神・肉体)に与える影響についての懸念は生活、商業、そして成功のための”正しい道”について、消費主義的な見解を覆す議論と新たな考え方を生み出す事を促しました。
その1つの考え方として循環型経済(サーキュラーエコノミー)が挙げられます。循環型経済とは、あるプロセスで発生した廃棄物を他のプロセスに材料として投入することで最終的にごみを減らし、さらに新しく採掘や生産プロセスでの新素材の需要を最小化するという考え方です。
循環型経済には例えばEUの循環型経済行動計画や関連する欧州グリーンディールなど、政府レベルの取り組みがすでになされています。
もう一つの考え方としてBuy Better Buy Less(賢い買い物をし、消費を減らす)があります。この考え方はファッション業界から発信されたものですが、家電製品や産業用電子機器など様々な業界や市場にわたって適応できます。カナダのジャーナリストはより”良い”服を買うことを推奨しましたが、これは単に高いものを選ぶのではなく「メーカーや素材を調査し、品質が良いものを特定する方法を学び、探す」ことに時間をかけて選ぶべきだと提言しました。
つまり、エレクトロニクスメーカーはより長持ちする製品を設計しその理念を市場に溶け込ませることで、消費者にもアプローチすることができます。
また近年のパンデミックもモノの消費や購入に変化を与えたように見えます。McKinseyが英国とドイツの買い物客を対象に行った調査によると、現在では多くの人が気候変動への影響を軽減することを重視しており、気候変動や環境破壊を引き起こしてしまう可能性がある場合には自らの購買行動を変えることがあると回答していました。
サステナビリティに向けたデザイン
エレクトロニクス分野では、製品を一から設計する責任を持つエンジニアは素材や部品の選定、消費電力や効率といった製品性能からサステナビリティの問題に根源的に取り組むことができるのです。
設計の決定には循環型経済(サーキュラーエコノミー)の価値観を取り入れることができます。これには材料の選択とその調達先、さらには特定の部品の特性といった側面さえも含まれます。例えば、ある部品を再生材料から作られたものに直接置き換えることでコストと廃棄物減少への効果を期待できます。もう一つの例として、ポリウレタンファームのような従来の吸音材料を、吸音タイル材料として使えるガラスフォーム(glass foam)に置き換えるというものがあります。この材料は一般的なガラスをリサイクルしたものと、レストランなどから回収された卵の殻を組み合わせて作られており、製造に必要なその他の材料の調達した場所の近くで生産することが可能です。
(トレンドモニター:Environmental Trend: 生ごみから作られる5つの新素材)
作家のウィリアムギブソンが90年代半ばに発表した小説「Idoru」からエレクトロニクス分野の材料選択に関する考え方を紹介します。“彼は、プラスチック製のシェルに小さなチップやボードが入っているような家電製品の作り方が嫌いでした。そのシェルは店頭で目に付くように作られているだけで、買った後は特に意味がありません。リサイクルなどしなければゴミとして処理されるだけで、大抵は誰もリサイクルなどしていません。彼はかつて自分の店で作ったケースに本物のパーツを入れていました。例えばミニディスクユニット用に頑丈なブロンズケースを作り、黒檀の象嵌を施し、コントロール面には象牙の化石、ターコイズ、ロッククリスタルから削り出し作りました。“
“そしてそのケースの中の部品が古くなったり、より良いものが出た時にはケースを取り換えずに中身だけを取り出して新しいものを入れるのです。つまり、同じものを単により良い機能にするという事です”
時代を先取りするようなアイデアですが、これがエレクトロニクス分野の”ごみ”の問題を解決する有効な手段となるでしょうか?
実線する技術者「アクティブエンジニア」
これまでで気候変動は日々進行しており、それに対し私たちが様々な面から長い月日をかけてその課題に対処してきていることが分かったと思います。多くの法律や行動規範がエコデザインからモノの廃棄に至るまで、製品のライフサイクルに影響を与えようとしています。コンプライアンスは義務か任意によらず、環境良い影響を与える明確な証拠が存在しています。しかしそれはまだまだ消極的なものであり、世界的な環境目標を達成するためには法律が必要なレベルに追い付いていない現状があります。
気候変動と”戦う”ための設計は、自ら行動できるアクティブエンジニアへの呼びかけが重要です。さらに進んで、資源およびエネルギーの使用を製品の製造から寿命が終わるまでにかけて最小化していかなければなりません。理想的には寿命が終わった際に環境への負担をゼロにすることが必要です。
しかし、これは危険なことです。このような製品は一般的な商業目標を達成できません。そしてそのような製品を作った設計者はほとんど利益を得られないでしょう。その一方で、消費者の意識はより大きなサステナビリティを支持する方向に変化しており、今までニッチな製品だったものが拡大化し主流になることがあるかもしれません。しかし、現状においてそのような市場の変動はすぐに起こすことはできず、企業業績の評価と報酬のあり方を変えることに関しても何世代もの時間が必要です。その間にどのように”凌ぐ”かは別の挑戦です。
皆様もサステナビリティに向けたデザインについて考えてみてください。そしてその考えをこの記事のコメントやDesignSparkが提供する「アクティブエンジニア」プロジェクトで共有してみてください。
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