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宇宙ごみの惨状 パート2:解決策を見つける

Artist’s impression of the OSAM-1 robotic service vehicle - Image credit NASA

燃料補充サービス衛星 「OSAM-1」が、衛星を捕獲しているイメージ画像。給油だけでなく、3本の器用な手足を駆使して廃止衛星を捕まえ、修理や解体を行います。
イメージ提供: NASA

地球は、周囲を高速で回るくず鉄置き場の中心にあります。ロケットの残骸、機能停止した衛星、破片など、不要となった人工物の雲の中にいます。理論上の衝突問題が深刻になり始め、国際宇宙ステーション(ISS)で働く宇宙飛行士の命に関わる問題となっています。この問題の解決策早急に求められています。

Damage inflicted on a window of the International Space Station - Image credit NASA

イギリスの宇宙飛行士、ティム・ピークが乗務していた時に国際宇宙ステーションの窓が画像のように破損しました。幸いなことに、中まで貫通はしませんでした。自動車のフロントガラスに石が強く当たった時に似た破損で、単なる塗装の薄片によって生じたと考えられています。破損部分は直径1cmです。
イメージ提供: ESA

宇宙ごみはどこからやってくるの?

スペースデブリと同様に「宇宙ごみ」という言葉もよく使われますが、実はこの2つは全くの別物です。宇宙ごみというとロケットの第2段階や第3段階など非常に大きなもので、例えばロケットブースターの第1段階を除く第2段や第3段のことを指します。通常のロケットの第1段のブースターは燃え尽きませんが、スペースシャトルとスペースXのFalcon9ロケットの第1段ブースターは再利用のために回収されます。しかし初期の通信衛星や気象衛星、スパイ衛星などは寿命が来ていますが、宇宙ごみの深刻な問題を考えていない時代のものなので今も軌道を回り、転がり、制御不能に陥っています。ですが実際のところ、これらの大きな鉄くずの塊は大きな問題ではありません。なぜならそれらは視認性が高く、容易に追跡できるからです。また、それらが衝突によって軌道からはずれた場合にかなり大きな塊なため地上に落下する前に燃え尽ききれないため、地上の人々にとって危険な存在となります。対してスペースデブリとはこのような衝突から生み出される何千もの小さな軌道上の残骸です。それぞれの破片は確実にその速度が変化します。速度には大きさと方向があるので、速度を失ったものは地球に向かって落下し、大気の抵抗を受け燃え尽きることになります。速度が上がるとデブリはさらに高い楕円形の軌道に押し出される可能性もあります。このような衝突が起こる際のプラス面は小さな破片は質量が小さく、大気圏上層部に投げ出された破片はわずか数分このガスに触れただけで急激に勢いを失うことです。マイナス面は、塗料の破片のようなものが時速18000マイルで移動する検知不可能なミサイルに変わることです。質量が小さくても速度が大きいと、宇宙船の皮膚を突き破るほどの勢いを持ちます。

End-of-Life Services by Astroscale demonstration (ELSA-d) - Image credit - Astroscale

Astroscale社が今年3月、スペースデブリ除去実証実験 (ELSA-d) ミッション衛星打ち上げに成功しました。これは2つの衛星が積み重なって構成されています 軌道から安全にデブリを除去するサービサーと疑似デブリとなるクライアントです。サービサーが軌道から離脱した衛星を強力な電磁石を使って捕獲します。
イメージ提供: Astroscale

国際政治

1960年代にスパイ衛星が実用化されて以来、スパイされる側の国々はスパイ衛星を無力化する方法を研究してきました。対衛星攻撃システム (ASAT) はアメリカ、ソ連、中国、そして最近ではインドによってテストされてきています。その多くは対空技術をベースにしており、誘導ミサイル、専門用語ではキネティック-キル ビークル(宇宙設置運動エネルギー撃破飛翔体)を発射して目標に衝突させ、粉砕するものでした。事実、軌道力学の問題からこの作戦は非常に難しく、稀に成功しても設計というより運によるところが大きかったです。1985年、アメリカが戦闘機からミサイルを発射し、最終的に廃止衛星を破壊することに成功しました。ですがそれ以後、このような試みは行われていません。 2007には中国が極軌道上にある自国の気象衛星を1つ破壊しました。高度500マイルの地点での破壊のため、多くのデブリが軌道上に残っています。 わずか2年前の2019年、インドはスペースデブリの発生に対する懸念が高まっているにも関わらず、LEOで衛星を粉砕することによって、その軍事的到達力を誇示することにしたのです。破壊した衛星の軌道がはるかに低かったので残骸の大部分は今頃大気圏で燃え尽きているはずです。そう願うばかりです。

ケスラー症候群

1978年、NASAの科学者ドナルド・ケスラーは軌道上の宇宙ごみの量が限界に達すると、これが連鎖反応を起こしさらに多くの物体が衝突し、核反応のように新たな宇宙ごみをその過程で発生させるという理論を提唱しました。そうなるといつかは地球軌道上で安全に活動することが不可能になります。まだそのような極限には至っていませんが、もうすぐそこまで来ているのです。2009年、アメリカの通信衛星イリジウムとロシアの軍事衛星コスモス2251の衝突事故が初めて記録されました。両衛星は破壊され、”追跡ができる破片”だけでも約2300個が飛散しました。

Robot prototype called NEO-1 into LEO - Image credit - Origin Space

A Chinese space-mining start-up company just launched a robot prototype called NEO-1 into LEO capable of scooping up debris and other junk with a giant net.
Image credit: Origin Space

私たちができることは何か?

この連載のパート1で大きな宇宙ゴミを除去するための基本的な原則についてお話ししました。その中には比較的少数の検出可能で回避可能な大型なものを大量の小さな、目に見えないが致命的な「弾丸」に”変えない”という方法がありました。既存のデブリの雲に対してできることは衝突の影響を和らげること以外にはあまりありません。ほとんどの大型宇宙船、特に有人宇宙船は ウィップルシールド(Whipple Shield)と呼ばれる一種の「(多重)空間装甲」で重要な部分を保護しています。この「空間(space)」という言葉は文字通り、装甲と宇宙船の外壁が隙間で隔てられていることを意味します。

ディフェンスアーマー

第一次世界大戦で使われた最初の戦車は機関銃の弾丸や砲弾の破片から乗員を守るために厚い鋼板で作られていました。しかし、それまでほとんど気づかなかった現象が戦車の乗組員にとって大きな懸念事項となりました。それは弾丸などが車両の”外側”に当たった際に装甲板の金属片の砕け、または剥げ落ちが車両の”内側”で起こることでした。弾丸は貫通しませんが装甲板自体が高速で移動する金属の塊を放ち、これが弾丸と同じくらい致命傷となりました。たとえ、重い装甲を持つロケットがあったとしても宇宙船内の宇宙飛行士にも同じことが起こります。

軍事機器に詳しい方なら、この空間装甲についてはよくご存じかと思いますが空間装甲板は何十年も徹甲弾から戦車を守るために使用されてきました。戦車の場合だと砲弾は外側のシールドに接触すると爆発してシェルが突き刺さり、その過程で運動エネルギーのほとんどを失うという原理です。内側の板はシェルの破片と爆風による衝撃を軽減して耐えるだけでよいのです。宇宙船のウィップルシールドは爆発する弾頭に耐える必要はなく、ただ「弾丸」に耐えるだけで良いのです。外層やバンパーは通常薄いアルミ板で簡単に貫通することができ、破片をさらに小さく粉砕して隙間の中に散らばせます。内側の外皮も薄いアルミ板でこれらの小さな破片を貫通させず、衝撃に耐えられるように設計されています。当初からウィップルシールドは進化し続け、ケブラー[1]など他の素材を用いて多重層にすることも可能です。ISSの重要な部分はすべてこのようなシールドで保護されており、ガラスとプラスチックの層でできた窓もその一つです。

軌道離脱開発

ほとんどの宇宙機関は地球軌道上の大きな廃品を除去する方法を研究しています。これらの取り組みは大きく分けて3つのカテゴリーに分類されます:

  • 将来、人工衛星が使われなくなったときに「自滅」することを可能にする自己消去技術[2]:この技術には大気抵抗を増加させるために「帆」を使用します。このような装置は、軌道上で長期間にわたって動作することが保証されていなければなりません。つまり、技術的にシンプルでなければならないということです。ブレーキスラスターのような複雑なシステムは必要な時に機能する可能性が非常に低くなります。このカテゴリーは短期間、1回のみのミッションを完了した後の安価なCubeSats(キューブサット)を撤去するのに理想的です。
  • 廃品除去のために特別に設計された別の衛星(脱軌道船)によって、既存の「死んだ」宇宙船を能動的に軌道から外す:現在の設計では「銛」または「漁網」を使ってジャンクを捕獲するようになっています。捕獲後は両方の衛星が軌道を外れ、燃え尽きます。この方法では脱軌道船は転がり落ちる標的の「射程距離」内に入るだけでよく、ドッキングなど動きを同期させるような試みは必要ありません。このような全損システムを使用するのはかなり高価な方法であるため、より費用対効果の高い解決策へと考えが進んでいます。
  • 全損なしの多くの目標に対応できる様々なタイプのビークル技術:これには軌道離脱に代わって衛星修理や給油のコンセプトが導入されています。克服すべき大きな課題は以前に衝突した後、元の軌道に戻す必要があるような衛星の捕獲とドッキングの問題です。現在、ロボットのサービスビークルが開発されています。例えば、NASAが開発したOn-orbit(軌道上)Servicing(保守)Assembly(組み立て)Manufacturing(製造)1 OSAM-1)などです。2023年に最初の運用が見込まれています。

宇宙ゴミの除去は政府であれ民間企業であれ、すべての破片の法的所有権を確立することが大きな障害となります。法律の世界ではすべてのものは誰かのものであり、宇宙にある一つ一つの破片にはそれぞれ所有者が存在するのです。その所有者の許可なしに軌道離脱を行うことはできません。弁護士にとっては、またとない大儲けのチャンスです。

スペースロボット

民間企業は宇宙ゴミの収集という困難で金銭的にも見返りがなく、リスクの高い事業に関与することにあまり興味がありません。軌道から外れたゴミが地球に戻ってきた場合の影響は考えただけでも恐ろしいものです。一方、廃品物を収集して貴重な資源を集め、再利用することで自動車両の開発・配備にかかるコストを大きく削減できるかもしれません(もちろん、多額の手数料がかかります)。中国の宇宙採掘のスタートアップ企業であるOrigin Space社は明らかにそのような方向で考えているようです…

最後に

すべてのスペースデブリが偶発的または意図的な衝突に由来するわけではありません。ここでは「通常」運用の一部として発生した潜在的な危険を持つ物体の例をいくつか紹介します:

  • 2460回以上の固体ロケットモーターの燃焼により発生した酸化アルミニウム (Al2O3)のマイクロサイズのダストからセンチメートルサイズのスラグ粒子。
  • 1960年代のマイダス計画で無線通信実験の一環として放出された細い銅線。
  • 1980年代にロシアの偵察衛星からブーク原子炉が放出され、大量に宇宙空間に放出された冷却液(低融点ナトリウム・カリウム合金)の液滴。
  • 紫外線と原子状酸素により、衝突した微粒子は宇宙物体の表面を侵食します。その結果、表面のコーティングが大量に失われマイクロメートルの大きさの塗料が剥がれ落ちます。これが塗料の剥がれ落ちの原因です。
  • アポロの宇宙飛行士の尿は、月への行き帰りに船上に捨てられるのが日常でした。これらの投棄物は瞬時に凍って「あられ」の雲となり、おそらく地球と月の自由回帰軌道の周囲を旋回したままでしょう。

 

References

[1] Meteoroid/Debris ShieldingEric L. Christiansen, NASAジョンソン宇宙センター。宇宙船防護の総合設計マニュアル。

[2] Drag-enhancing deorbit devices for spacecraft self-disposal: A review of progress and opportunitiesJennifer L. Rhatigan, Wenschel Lan, 宇宙安全工学ジャーナル

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Engineer, PhD, lecturer, freelance technical writer, blogger & tweeter interested in robots, AI, planetary explorers and all things electronic. STEM ambassador. Designed, built and programmed my first microcomputer in 1976. Still learning, still building, still coding today.