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新年度が始まるこの時期、電子工作に挑戦し始める学生を多く見かける。アイデアを実現するために泥臭く手を動かして製作に取り組み、実際に動く形にになったときの感動に勝るものはない。もしあなたがそうした工作を始めようとしている初心者の一人であり、作業環境の整備に戸惑っているのであれば、この記事がきっと役立つに違いない。
2021年の初めごろから整備を始めた私の作業環境を少し紹介する。これはもちろんプロの人間向けの環境ではない。学生あるいはホビイストのような人間が、限られたスペースでそこまで機器にお金をかけず作業をするためのものだ。
何から始めればいいの?
まず差し当たってデスクかテーブルが必要だ。ここでは財布にやさしいことに重点を置いているから、100ユーロを超えるようなものをおススメするつもりはない。個人的にはToolstrade社の作業台で十分だった。残念ながら、この記事を書いている今では私が手に入れたものと同じモデルは売り切れてしまったようだ。代わりにAmazonにおける類似の商品のリンクを残しておこう。他にはIKEA製品を使用している人も見かけたが、組み立て作業が大変そうに見えた (それに加え、コロナ禍の中でのIKEA店内はもはや悪夢だ)。
この作業台の良いところはまあまあ大きな引き出しがあり、上部にも収納スペースがある点だ。またペグボードにフックを差すこともできるから、細かいものや頻繁に使用する工具を整理できる。また、これは必ずしも手に入れなくてはならないものではないが、プラスチック製収納ボックス (909-6906) (909-6915) を入手しておくと作業台周りの整理整頓に非常に便利だ。
周辺のESD保護
ESDに弱い部品を扱う際はそれに特に気を使うべきで、作業環境にも少々対策を施す必要がある。ESDというのはelectrostatic discharge (静電気放電)の略で、プラスマイナス逆向きに帯電した2つの物体が接触したときに起きる放電のことだ。 静電気は、例えばカーペットの上を歩いているときや櫛で髪の毛を梳かしているときのように、ふたつの素材が擦り合わされたときに蓄積される。
一般的な活動で生まれる静電気の電圧の目安を表に示した。静電気の強さは湿度の値によっても変化する。
静電気の由来 |
静電気の電圧 (相対湿度10~20%の場合) |
静電気の電圧 (相対湿度65~90%の場合) |
---|---|---|
カーペットの上を歩く | 35,000 | 1,500 |
ビニール床材の床の上を歩く | 12,000 | 250 |
作業台で作業をする人間 | 6,000 | 300 |
作業指示用のビニール封筒 | 7,000 | 600 |
作業台から拾い上げられた一般的なポリ袋 | 20,000 | 1,200 |
ポリウレタンフォーム製のワークチェア | 18,000 | 1,500 |
よく見かけるESDに弱い部品には以下のようなものが挙げられる。
- IC部品(マイコン、オプアンプや電圧レギュレータなど)
- レーザーダイオード
- 高精度抵抗器
- CCDセンサ
- ほか
これらの部品をESDから保護するには、それらと触れる面、物体、および人などすべてをアースに接地することで同じ電位に保つ必要がある。以下のようなグッズを使うのが効果的だ。
- ESD保護マット (466-1643) は作業台の上に敷いて使用する。マットは静電気を吸収するうえ、色々と作業をしても摩耗・消耗しにくいように作られている。
- アース線 (287-7486) はESDマットをアース接地用のプラグに接続するためのものだ。コードの両側には留めるための金属ボタン(スタッド)がついている。
- アースボンディングプラグ (298-3890) はコンセントからアース接続のみを拾うためのものだ。電源コンセントに挿せば、アース導体のみと接続できる。
- ESD対策用リストストラップ (798-9275) はバナナプラグか金属スタッドがついていて、接地用ポイントに接続して使う。ESDに弱い部品や装置を扱っている際に作業者の体の帯電を防ぐものだ。
作っているものにどうやって電力を供給するの?
電源供給の方法にはいくつかの選択肢がある。どれを選ぶかはプロジェクトの要件次第だ。例えばなにか軽くて持ち運べるような装置を設計しているのであれば、アルカリ電池(充電式/非充電式)を使うのが便利だ。またコンパクトな装置の設計にはコイン形/ボタン形乾電池が向いている。市販の開発ボードや評価キットで作業をするならば、大抵の場合はPCから直接来るUSB電源で何とかなるだろう。
一方で、専用の電源装置があれば非常に便利だ。製作物に電力を供給するだけでなく、動作試験やデバッグ作業にも非常に役立つ。学校や実験室でよく使用されているのは可変直流電源だ。 これはコンセントからAC電源を得て、設定した特定の直流電圧を出力できる。
私が持っているものを例に、可変直流電源のいくつかの特徴を見てみよう。このRS Pro RS3005P デジタル制御直流電源 (国内在庫類似品: (123-3563) ) は出力電圧範囲0~30V、および出力電流範囲0~5Aをサポートする。これには4桁の表示ディスプレイと電流および電圧調節ツマミがついていて、バナナジャック端子と電源のオン・オフを切り替える電源ボタンがある。
RS PRO RS3005P デジタル制御直流電源
このモデルには2種類の作動モードがある。定電圧モードと定電流モードの2種類だ。定電圧モードでは負荷に供給したい電圧値を指定できる。例えば3Vを10kΩ抵抗器に供給すれば、オームの法則に従い0.3 mAが出力されるだろう。逆に定電流モードでは、負荷抵抗の値に関係なく一定の電流値を供給することが可能だ。
作業環境を完成させるために、RS Pro テストリード (273-9429) とワニ口クリップ (044-6967) を追加で購入した。これでプラス端子とマイナス端子に接続することができる。また、プラスマイナスのどちらかをGNDに接地したい場合は、ケーブルあるいは短絡バーを使うことで接地することができる。
強力な助っ人、マルチメータ
マルチメータは、例え電子工作をしている人でなくても一家に一台あれば非常に有用だ。リモコンの電池が切れているかどうか、照明器具がなぜちらちらしているのかといったことを確認できるようになる。もう少し詳しく見てみよう。
RS Pro Rs12ハンドヘルド式デジタルマルチメータ
ほとんどのデジタルマルチメータは主に3つの部分に分かれている。表示部、選択ノブ、そして測定ポートだ。表示部には測定値が表示される。選択ノブでは直流/交流電圧、直流電流および抵抗など、各種の測定対象を選ぶことができる。
RS Pro Rs12ハンドヘルド式デジタルマルチメータ (国内在庫類似品: (790-4101) )のデータシートを例として見てみると、この装置では5つの異なる種類の測定ができる。測定を行う前に、ツマミを回して適切なレンジを選ぶ必要がある。
仕様
機能 | 測定レンジ | 分解能 | 精度 |
---|---|---|---|
DC電圧 (Vdc) | 200mV | 0.1mV | ± (0.5%読み取り + 2桁) |
〃 | 2000mV | 1mV | 〃 |
〃 | 20V | 0.01V | 〃 |
〃 | 200V | 0.1V | ± (0.8%読み取り + 2桁) |
〃 | 600V | 1V | 〃 |
AC電圧 (Vac) |
200V | 0.1V | ± (1.2%読み取り + 10桁50/60Hz) |
〃 |
600V | 1V | 〃 |
DC電流 (Adc) | 2000μA | 1μA | ± (1.0%読み取り + 2桁) |
〃 | 20mA | 10μA | 〃 |
〃 | 200mA | 100μA | ± (1.2%読み取り + 2桁) |
〃 | 10A | 1mA | ± (2.0%読み取り + 2桁) |
抵抗値 | 200Ω | 0.1Ω | ± (0.8%読み取り + 2桁) |
〃 | 2000Ω | 1Ω | 〃 |
〃 | 20kΩ | 0.01kΩ | 〃 |
〃 | 200kΩ | 0.1kΩ | 〃 |
〃 | 2000kΩ | 1kΩ | ± (1.0%読み取り + 2桁) |
バッテリーテスト | 9V | 10mV | ± (1.0%読み取り + 2桁) |
〃 | 1.5V | 1mV | 〃 |
RS Pro RS12ハンドヘルド式デジタルマルチメータの仕様表
マルチメータの一番下にある3つのポートはそれぞれ、10A、COMおよびVΩmAとなっている。200mAよりも大きな電流値の測定には10Aポートを使用する一方、電圧値や小さな電流値、および抵抗値はVΩmAポートで測定する。COMポートはGND側を表す端子だ。
はんだ付けの基本
はんだ付けは私が思うに、電子工作に取り組む上で最も面白い技術のひとつだ。はんだ付けによって行うことは一言でいうと、2つ以上の金属部品を「はんだ」と呼ばれる溶加材を用いて電気的に接続することである。
はんだは接続する部品よりも融点が低い金属で、一般に有鉛はんだと鉛フリーはんだの2種類がある。前者は鉛を含んでいるため適切な取り扱いが必要だ。はんだ付け後に手を洗う、ヒューム(煙)排出器 (国内在庫品: (693-1590) ) を使用する、あるいは部屋の換気を十分に行うといった注意が要る。一方鉛フリーのはんだは環境にやさしく危険も少ないが、やや使いにくく、特に初心者にとっては扱いが難しい。
はんだ付けにおけるもうひとつの助っ人はフラックス (国内在庫品: (321-7655) ) だ。フラックスははんだ付けの前に部材に塗布することで、酸化を除去し部品をよりきれいに繋げることができる。
はんだ付けのための機器には実に多くの製品がある。予算、およびどのような機能を求めるかによって選んでいくことになるだろう。シンプルなタイプのはんだごてはコンセントに直接差し込めばすぐに使うことができ、安価でとても使いやすい選択肢だ。しかし、温度設定やこて先の変更には限度があることもある。以前私はこの手のタイプのものの1つを使っていたが、最近になってRS Proはんだ付けステーション(国内在庫類似品: (654-9220) ) に買い替えた。これは液晶表示画面、温度調節ダイヤル、そして高性能なアルミナセラミックヒーター搭載のはんだごてが一体になっている。私はこれに、こて先クリーナーセット (国内在庫品: 445-1159)とはんだ吸い取り器 (771-9543) を組み合わせて使っている。
プロトタイピングの必需品
プロトタイピングを始めるにあたって必要となる基本的な装置や部品にはどのようなものがあるだろうか?ここにはいくつかの個人的な必需品を並べてみたが、ぜひRSの学生向けプロトタイピング必需品のページも参照するとよい。
- はんだ付け可能ブレッドボード (043-4217)
- ニッパー (053-6420) および プライヤー (847-3765)
- LED (228-5562) 、 (247-1482)
- 抵抗器 (707-7587) 、 (707-8221) 、 (707-7745)
- ジャンパーワイヤ (204-8241) 、 (204-8243)
もしマイコン(マイクロコントローラ)の類を使ってみたいのであれば、提携企業であるSTMicroelectronics社およびArm社が現在EdXで自分のペースで学べる学習コースを提供している。こちらもぜひ見てみよう。
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