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プリント基板作成で同じ製造業者に何度も委託する場合や、お客様の細かい希望に合わせた設計をミスなく仕上げたい時があると思います。DesignSpark PCB(DSPCB)ではそんな「設計ルール」を統一化、変更することができます。この記事では、設計ルールを変更できるデザイン・テクノロジーファイル(Design Technology File)についてご紹介していきます。
デザイン・テクノロジーファイルとは?
デザイン・テクノロジーファイル(以下「テクノロジーファイル」と記載)とは回路図、PCBレイアウトを設計する上での「設計ルール」情報が含まれているファイルを指します。これは部品間の最小距離や最小線幅等といった設計する際の規定値を定めているものです。その他にも、回路図の色や文字フォントの規定値も含まれています。
デザインテクノロジーファイルではこれらの値をユーザー独自に変更・追加することができます。例えば、DSPCBでプリント基板を設計して、それをある製造業者に委託して製造してもらうとします。この時、プリント基板設計では委託する製造業者の「設計ルール」に沿った設計をしなければなりません。その際、あらかじめ委託製造業者の設計基準値をテクノロジーファイルに入力することで、基準を満足しているかどうかをDRC(Design Rule Check)で確認できます。さらに、同じ製造業者に何度も発注する際には以前のテクノロジーファイルを使うことで、設計ルールを気にする必要がなくなります。
あるいは、お客様が提案した細かい技術指定(グラウンド線幅やテキストサイズ、フォント)を全て満たして、ミスなく設計を行いたい場合においても有効です。最初にテクノロジーファイルの中でこの線幅やテキストフォントの設定をあらかじめ初期値として設定すれば、設計時のミスを大幅に削減することができます。また、製造業者と同様に、同じ設計条件の案件を繰り返す場合にはテクノロジーファイルを再度利用できます。
勿論、1つずつ配線幅や線間隔、部品の形状、テキストの変更・確認することも可能ですが部品が多い場合にはそれは不可能です。確認作業が重なればミスも増えていきます。
テクノロジーファイルは、より詳細で同じ条件の設計作業の負担を大きく軽減してくれる重要な要素です。
既存のテクノロジーファイルの保存場所
では、既存のテクノロジーファイルについて見ていきましょう!テクノロジーファイルはDSPCBソフトウェアに組み込まれているのではなく、ファイルとしてPC上に存在しています。
まずはそのファイルを見つけましょう。DesignSpark PCBを開き、Settings > Preferences...を選択します。
環境設定ウインドウが開きます。その中のGeneralタブのFolders、Tech Filesの項目にテクノロジーファイルの場所が記載されています。デフォルトでは
Cドライブのユーザー > パブリック > パブリックのドキュメント > DesignSpark PCB 10.0 > Technologyフォルダ
に指定されています。※この設定は人によって異なる場合があります
このフォルダの中身をエクスプローラーで見ると、複数のpcbファイルと以下のようなファイルが含まれています。これがテクノロジーファイルです。テクノロジーファイル以外の *.pcb ファイルはTranslate To PCB...で使用する際の基板外形テンプレートファイルです
この中にDSPCBの設計ルール情報が入っています。DSPCBではこのファイルを操作して設計ルールの変更、または参照して設計ルールを適応しています。
テクノロジーファイルの構成
上図で見てわかるようにテクノロジーファイルと呼ばれるものは複数あります。その構成を紹介していきます。
フォルダの中には.stfと.ptfの2つの拡張子が存在しています。
stf拡張子のファイルは回路図設計用のテクノロジーファイル、つまり回路図の設計ルール情報が含まれます。デフォルトではDefault(white)とDefault(black)があり、回路図(sch)のファイルを作成する際にはこの2つのファイルのうちどちらか一方を選択します。
もう一つのptf拡張子ファイルはPCBレイアウトのテクノロジーファイルです。こちらはPCBレイアウト設計ルール情報が含まれます。デフォルトでは
- Single Sided
- Double Sided
- Double Sided (metric)
- 4 Layer
- 6 Layer
が含まれます。ファイル名のsingleやDouble、4、6などの数字はレイヤー数(層数)を表しておりレイヤーごとにテクノロジーファイルが存在しています。Double Sided (metric)とDouble Sidedは単位(Units)がmmかthouの違いがあります。
PCBレイアウトファイルの作成時には設計したいレイヤー数のテクノロジーファイルを選択します。
テクノロジーファイルに保存される「設計ルール」の編集
それでは、テクノロジーファイルの内容にあたる「設計ルール」を設定していきましょう!この記事では「回路図」「PCBレイアウト」どちらにもある設計ルールを紹介していきます。次回以降の記事で、回路図編とPCBレイアウト編でそれぞれのテクノロジーファイルの詳細な項目と機能を紹介します。
単位
はじめにデザインで使用する単位についてです。単位の変更は右下の単位の表記をダブルクリック、もしくはSettings > Units...でもウインドウを開けます。PCBレイアウトファイルでは作成時に単位を設定します。
単位の種類はインペリアル(thou、inches、mil)とメトリック(cm、mm)があります。設計に合う単位を使用してください。
Precisionでは単位の小数点以下の有効桁数を設定できます(例:3桁で設定した場合、4桁目を四捨五入し 0.001 の精度で長さを表記します)。設計途中にこのPrecisionを変更する場合は、特に注意しなければならないことがあります。例えば、ある部品の長さを12.99と定義し、設計の途中でPrecisionを0に設定して少数低下を丸めて13と表示することができます。しかし、この時値自体は変更されていないため部品の長さは12.99のままです。そのため、値を13にしたい場合は部品のプロパティ等で正確に値を変更してあげることが必要です。つまり、Precisionはあくまでも”表示単位の桁数”を変更するものであることに注意してください。
表示グリッド
グリッドとはデザインする際のマス目(デフォルトではドット線のマス目)のことを指します。グリッドを変更するには回路図およびPCBレイアウトファイルを開いた状態で、右下のGrid>Grids...かメニューバーのSettings > Grids...をダブルクリックします。
グリッド設定ウインドウが開きますのでScreen Gridタブを開きます。
Step Sizeはグリッドの間幅を数値で指定できます。ここでのグリッド単位は選択したテクノロジーファイルの単位に基づいて定義されます。回路図ではXとY方向両方の間隔がこの値になります。PCBレイアウトではXとYの間隔を別にできます。別にしたい場合はDifferent Yにチェックを入れて、Yの項目に値を入力してください。
Same As Working Gridのチェックボックスは後の説明にあります、移動単位(スナップ)と同じ単位でグリッドを表示するかを選択できます。移動単位と同じ間隔でグリッドを表示させたい場合はここにチェックを入れます。それ以外に独自でグリッドを表示させたい場合は、チェックを外して下の項目に数値を入力します。
Color and Visibilityではグリッドの表示形式や色を指定できます。Primary Colorは10グリッドごとに定義されるグリッド設定のことを指します。右の項目ではPrimaryグリッドのカラーを変更したり、Linesのチェックを入れればドットから実線になります。Secondary ColorはPrimaryを除くグリッド設定を指します。ここでもPrimaryと同様に、右の項目でカラーや実線形式表示を選択できます。
Visibleのチェックボックスはグリッド表示の可否を選択できます。また、この設定は回路図やPCBレイアウトファイル操作時でもショートカットキーGで設定変更が可能です。
Draw Grid Firstのチェックボックスはグリッドの表示優先度を示しており、チェックを入れるとグリッドがすべてのアイテムの下に描かれます(グリッドの上に部品が表示)。
グリッド変更例
移動単位(スナップ)
移動単位とは配線や部品を動かすときの移動間隔です。これを小さくすれば細かく動かせ、反対に大きくすれば大胆に動かせます。変更するには先ほどのGridsウインドウのWorking Gridタブを選択します。
Step Sizeではこの移動単位を数字で変更できます。(PCBレイアウト画面の場合、X軸とY軸、個別に設定が可能です。)
ただ、こちらはデフォルトのまま変更しない事をお薦めします。移動単位を細かくしたい場合は、以下の「Snap Mode」の変更で対応する事をお薦めします。
Snap Modeでは現在表示されているグリッドを基準としてそのグリッド毎や、グリッド半分毎等のようにグリッド基準で移動単位を変更できます。また、この設定は上図ウインドウだけでなく操作ファイルの右下にあるGridからでも変更できます。ショートカットキーCtrl+Gでも同じドロップダウンメニューが出てきます。移動単位を狭めたい場合、Halfグリッド(1/2)、Quarterグリッド(1/4)、Tenthグリッド(1/10)、Fortiethグリッド(1/40)の活用をお薦めします。
テクノロジーファイルの保存・出力
ではこの記事の最後に今まで説明したグリッド、スナップ、単位や続編の記事で紹介するカラーや形状といった設計ルールをテクノロジーファイルとして保存・出力する方法を紹介します。
まず、回路図ファイルでいくつか設計ルールを変更して、このルールを後に使えるように保存しておきたいとします。その設計ルールが適用されているファイルを開いて、操作できる状態にしておきます。※例は回路図ですがPCBレイアウトファイルでも同じようにできます。
ここでFile > Save Technology File...を選択します。
すると、保存先選択ウインドウが出てきます。この時以下2点にご注意ください。
- 既存テクノロジーファイルの保存されていた場所に保存する
- 既存テクノロジーファイルと別名で保存する
既存ファイルの保存場所は、デフォルトでは
Cドライブのユーザー > パブリック > パブリックのドキュメント > DesignSpark PCB 10.0 > Technologyフォルダ
です(人によっては異なります)。または、環境設定ウインドウのFoldersの項目に設定されているパスと同じパスのフォルダに保存してください。
今回「original」という名前で保存してみました。この後からはこのoriginalを再利用する方法について説明します。
テクノロジーファイルを使った設計ルールの再利用
テクノロジーファイルを使って回路図ファイルを新規に作成する場合は、新規ファイル作成ダイアログ(New Designダイアログ)を開きます。この時、「use Technology File:」のドロップダウンメニューに先ほど保存したファイル名が表示されます。
PCBレイアウトファイルでは回路図からTranslate To PCB...でファイルを生成する際にテクノロジーファイルの選択ドロップダウンメニューに保存したファイル名で以下のように表示されます。※下図はDouble Sided originalというファイル名で保存した場合
これらのファイルを選択してあげることで、先ほど設定したグリッド(間隔、色等)、スナップ、単位(小数点桁数)などが初期状態から設定されます。
このファイルは別ユーザーに提供したり共有して使用する事も可能で、例えばこのファイルのコピーし 別ユーザーのDesignSpark PCBのデザインテクノロジーフォルダに入れてあげることで、そのユーザーの設計ルールにも同様の設定を適応することができます。これにより、チーム内の複数の設計者の間で設計ルールを統一管理できたり、以前作成したルールを再利用することができます。
まとめ
今回の記事ではテクノロジーファイルの説明と、回路図とPCBレイアウトでの共通事項を紹介しました。次回はテクノロジーファイルの回路図編、次々回ではPCBレイアウトファイル編を紹介していこうと思います。
次へ
デザインテクノロジーファイルPCBレイアウト編(Coming soon)