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日本製ラズパイの工場見学レポート

 今日はラズベリーパイが製造されている愛知県稲沢市のソニーの工場を見学する機会に恵まれたのでここで報告したい。「え?!ラズパイってイギリス製じゃないの?日本で作ってるの?」という方のために少し解説しよう。

 ラズパイって日本製なの?

結論から言えばラズパイは日本でも作られている。現在RSが日本向けに販売しているラズパイのほとんどが日本で製造されたものだ。背景は次の通りだ。ものづくりは「設計(デザイン)」と「製造(マニュファクチャリング)」の2つの工程から成るが、ラズパイの場合、イギリスにあるラズベリーパイ財団が「設計」を、RSが「製造(と流通)」を、それぞれ担当している。ただRSは製造設備を持たないため、2013年より英国ウェールズにあるソニーのペンコイド工場に製造を委託し、それを輸入して販売していた。

しかし今後発生するであろう「日本市場での更なる需要拡大」に対応できるよう、2016年10月より愛知県稲沢にあるソニーの工場でも製造を開始した。つまりラズパイは、同一設計製品を英国と日本の2拠点で製造・管理する「グローバル生産体制」を持つこととなったのだ。これにより日本国内向けの需要に迅速対応できるようになった。

いざ稲沢市へ!

 

4月の初旬、膨らみかけた桜のつぼみがまた閉じてしまいそうな雨模様の中、愛知県稲沢市にある 稲沢駅に降り、タクシーで10分ほど移動すると、開けた一画にその施設があった。

おぉ!ソニーの工場だ!ここで日本製ラズパイが作られているのか!

 

驚愕の事実!

日本版ラズパイの製造が行われているソニー工場の正式な社名は「ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社」だそうだ。(以下SGMO社と記載する) 今回訪問したSGMO社 稲沢サイトでは、主にBRAVIAなどのテレビの製造や、各種基板の実装を行っている。受付の待合室では大人の身長ほどある特大のBRAVIAが展示されていた。

 

工場見学に入る前にSGMO社のご担当の方から同社についての簡単なご説明を頂いた。会社概要、組織構成、各拠点での生産製品など。その途中で驚愕の事実を知ってしまった。

 ご担当者「もともとスマートフォン基板の製造設備の余力でラズベリーパイを作ってまして・・・」

 あまりにもサラリと話してくれたことで、僕はその一大事を聞き逃すところだった。

 僕「え?スマホ?! Xperiaですか?! ラズベリーパイはXperiaと同じ設備なんですか?!」

ご担当者「はい。そうです。」

 なんと日本製ラズパイの専用ラインは、Xperiaと同等の最先端技術でつくられているのだ!これは驚いた。実装の最先端設備なんてなかなか見ることできない。この後の施設見学への期待がさらに膨らむ。

 ついに製造の現場へ

説明のあと、僕らは広大な敷地の一角に案内され、クリーンウェアとクリーンシューズに着替えエアシャワーを浴びて施設の中に入った。そこには約4~50mほどチップマウンター等の最先端設備を横一線に配置した製造ラインが横たわっていた。なお施設内は原則撮影禁止だったが特別にいくつかの写真の掲載を許可してもらった

エアシャワールーム

製造ライン

  ラズパイの製造工程は大きく3つに分かれるそうだ。まず基板に表面実装部品をつけ、次にコネクタ類を手付けし、最後に動作テストを行う。今目の前にあるラインでは最初の工程が行われる。上の写真の手前側からベース基板が流されペーストはんだを塗布し各種部品をマウントし高温炉ではんだ付けを行う。次に基板をひっくり返して裏面の実装が始まる。この一連は完全自動化され、人手を要することはない。部品実装が終わると、特殊な治具を使ってコネクタ類が実装される。この工程でようやく僕らのよく知っているラズパイの形になる。

中央が製造中のラズパイ基板

 不良率0を目指して

 最後に動作テスト。完成したラズパイは下記写真の機械で動作テストを行う。CPU動作、メモリやストレージの認識、入出力周りの通電、無線LAN強度、製造バラつきなどをチェックし、基準に合致しているもののみを出荷する。

 

以上の各工程作業は、使用設備・作業者・設定パラメータ・作業時写真が全て記録され、基板上のQRコードのIDと紐づけて管理されており、トレーサビリティーを保証している。これにより不良品が発生しても、遡ってどのロットのどんなトラブルかを特定でき、工程の改善や効率化を行える仕組みとなっている。

 見学を終えたあと、同社のご担当者から万が一不良品があった場合の情報提供を依頼された。不具合情報の解析によって、製造の品質や高効率化に役立てたいのだそうだ。そう言えば他社の中国製造品ではSDカードや部品の実装不良などがしばしば発生していると聞くが、日本製造版は全くと言っていいほど聞かない。そのほか、SGMO社には製造部門だけでなく設計部門も持っており、ラズパイの品質向上や製造効率化の観点から、財団に様々な改善案を提示したいとの事だった。

 中国に負けないコスト競争力

 今回の見学を通し、SGMO社製のラズパイが、日/英の2拠点にまたがり高い品質レベルで作られている事を実感できた。と同時にエンタープライズレベルの品質・管理を維持しながら中国製並のコストパフォーマンスを実現していることに驚かされた。

一般的に微細な加工や高度な品質対応を求められるスマートフォンでは、大変高価な最先端設備が使われる。一方、数量がまとまらないマイコンボードや開発用ボードは人件費の安い国で古い設備を使って安く作るものだ。スマホと同じ設備で作られているマイコンボードなんて聞いたことない。ラズパイが先端設備で作れているのは、マイコンボードとしてはあり得ないほどの大量需要と、SGMO社の長年蓄積された高効率化ノウハウ によるものだ。

数年前にITエンジニア向けのガジェットとして誕生したラズベリーパイだったが、経験豊富なソニーによる”供給力”と”品質力”のバックアップを得たことで、今後急成長が見込まれている日本国内のIoTインフラ、産業ソリューション、教育事業での本格的なプラットフォームとして、次のステージに向かっているのだと感じた。

 中央に技適マーク(認証番号付)のある物がSGMO社の日本製ラズパイ

RSコンポーネンツ Innovation(Japan) マネージャー。ラズパイの成長をリリース前よりサポートしてきました。 (なおDESIGN SPARKに投稿した内容は個人の見解です。RSを代表する物でないことをご了承ください。)