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プラスチック部品のクリーニング、PSU内コンデンサやファンの交換、NVRAMの修理を行う。
この シリーズの最初の投稿 では、Sun SPARCstation IPXについての紹介し、稼働しなくなったPSU(電源ユニット)の電解コンデンサを交換したのち、イーサネットアドレスとSunホストIDの格納に使用されるNVRAMを交換しました。加えて、PCでのBIOS設定と同じような設定を行いました。
システムを起動させることができたので、プラスチック製筐体の掃除、いくつかのPSUに関する作業、未だ解決できていないNVRAMの問題への対処に移ります。
復元に関する注意
このようにビンテージの電子機器を復元する場合によくあることですが、元の設計をどのように維持するかを決める必要があります。これについては後述しますが、一般的に言って、不可逆的な変更は避け、可能な限り長期的な視点を持って行うことを推奨します。ただし、これは一筋縄ではいかない問題であり、博物館やプロの修復士の間ではもちろん、アマチュアコレクターや愛好家の間でも多く議論されるトピックの1つ言えるでしょう。
Sun SPARCstationは古くも珍しくもないという意見もあるでしょうが、ケースに傷がついていたり、角が欠けていたりと、特に無傷な状態のものを見つけることは、次第に難しくなっています。あと数十年たてば、さらに多くのマシンが失われ、さらにダメージを受けてしまうでしょう。恐らく、最も顕著なのは、何人もの手にわたる上で、梱包不十分で宅配便を経由することです(悲しいことに、私もこういった経験をしたことがあります)。
ですから、ここでの目的は、美的かつ実用的なものを作りたいという欲求と、慎重に扱うことのバランスをとることです。衝動的に便利な手段を実践すると、すぐにメリットが得られるかもしれませんが、後悔することになります。
クリーニング
うれしいことに、Sunのマシンのプラスチック部品のように、この時代のものは、多くのその他のビンテージコンピュータ装置とは違い、黄ばみの影響をそれほど受けていないようです。ただし、プラスチックにはわずかに凹凸が施されているので、ホコリが溜まりやすく、汚れが落としにくくなっています。上の写真を見ると、特にSun CDROMドライブの外側が汚れていることがわかります。
SPARCstation、CDROMドライブ、およびマウスはすべて解体し、電子部品を取り外します。次に、プラスチックを洗剤と温水できれいにした後、非常に弱めの研磨剤が入ったT-Cut(スクラッチリムーバー製品)を使用して、頑固な汚れを落とします。実際にやってみると、V字にカットされたアプリケータースポンジは、ケースの溝の掃除に非常に効果的であるとわかりました。
クリーニング前のマウス
余談ですが、このマウスは光学的にかなり興味深い設計でした。LED2個とフォトダイオード2個で構成されており、プラスチック製の球体のペアが、グリッドが印刷された独自のマウスマットの上に直接光を投射し、マウスから反射を受け取るという仕組みです。このマットを逆方向に置いてマウスを動かすと、なんとカーソルは逆方向に移動するのです!
上の写真では、マウスケースの下部分が確認できます。透明なプラスチック球が上に取り付けられていて、組み立てると、プラスチック球はマウスの内側に配置され、球体が基板とケースの下部分との間に挟まれることになります。
クリーニング後、マウスの外見がずっとよくなりました。
残念ながら、CDROMドライブの筐体上部分の汚れは取り切れませんでしたが、SPARCstation自体は非常にきれいに掃除することができました。ただ、SPARCstationのプラスチック製筐体は塗装されているようで、CDROMドライブが塗装なしのむき出しのプラスチックかのように見えます。
プラスチックの黄ばみを処理する一般的な方法としては、過酸化水素入りのクリームを塗布して、その部品を日光に数時間さらすことで、UV光線をあてるという方法が挙げられます。
なかなか取れない汚れに関して、私はこの方法を試してみることにしましたが、クリームを塗っておくのは約1時間だけにしました。
この時点で、まず注意しなければならないことは、過酸化水素を含む製品を使用する際には手袋を着用して、眼の保護具等を着ける必要があることです。また、漂白したくないものを漂白してしまう可能性もあります。たとえば印刷されたロゴ、または十分注意していないと、服なども漂白されてしまいます。ですから、これは他人のアドバイスとして受け取るのではなく、必ずご自身で調べてから、実行に移してください。この工程は、プラスチックをもろくする可能性があるとも言われています。今回の場合は、使用したのが少量であり、長期間放置しなかったので、そうならないことを祈ります。
この最後に行った工程は、CDROMの筐体、そして、特に頑固な汚れを全体的に落とす上で役立ち、結果的には非常に満足なものとなりました。ただし、プラスチックが黄色に変色していないことを考慮すると、洗剤と温水を使って、もっとこするだけでも、汚れを落とすことができたかもしれません。そうすれば、他のものまで漂白してしまうかもしれないというリスクをとる必要はなかったのかもしれません。SPARCstation IPXバッジの”X”にはすでに傷があることにお気づきでしょう。このロゴは青色の下地の上にクリーム色の塗料を塗り、それを部分的に消した構造のようです。
ヴィンテージマシンの筐体の漂白は、専門の保存修復士の観点からは許容できるものなのでしょうか?恐らく、上記の潜在的なリスクのため、答えはノーでしょう。どのような効果的な洗浄方法が一般的に使用され、一般に適切であると認められているかを調べてみるのも興味深いです。
PSUファンとYクラスコンデンサ
オリジナルのファンはまだ動作しますが、ベアリングが古くなっているようで、少々ノイズを発生させています。そのため、新しいファンを取り付けます。適した仕様で、かつ可能な限り静かな交換パーツを選ぶことにしました。
三菱によると、オリジナルの”MMF-06D12DH 60x60x25㎜”のファンは、12V @ 0.12Aであり、毎時30mの風をおこし、ノイズレベルは29dBです。今回は、山洋電気製パーツ、”9S0612H4011 (751-1500) ”を選択しました。これは、消費電力がわずかに少なく12V @ 0.11Aで、発生させる風は少し速い毎時34.8 mで、24dBとノイズレベルが低減されているものです。
上の写真は、オリジナルのファンと交換用のファンです。交換用のファンには回転速度計用の、3本目の線が備えられていますが、今回は使用しません。
両方のファンのラベルを剥がし、電線とコネクターをオリジナルのファンから、交換用のファンに取り付けます。
次に、新しいファンを電源に取り付け、取り付けネジを元どおりにスレッドロック (051-4509) で固定しました。
以前、電解コンデンサを交換し、稼働しなかったPSUが復活しました。Part1の投稿へのjabuzzardさんからのコメントで、C111およびC112と指定された、Yクラスのコンデンサも交換する必要があるとのご指摘を受けました。これは、電源線とアースの間に配置される通常の構成ではなく、PSUのプライマリセクションとセカンダリセクションにまたがっているようです。
2つのコンデンサは、一次ラインと二次ラインとの間に、正確に配置されたパッド経由で、直列に接続されているように見えます。
コンデンサが故障しているという根拠は何もありませんが、念のため、助言通りにとりかえる (133-5629) ことにしました。
NVRAM
以前、バッテリーが切れていて、電源を切ると時刻と設定が失われるNVRAMデバイスを交換しました。最初は、オリジナルの同様の仕様である48T02パーツを使用してみました。しかし、設定は保持されたものの、OBPモニター(ファームウェア)は引き続きバッテリーが切れていると認識していました。この問題をオンラインで調査した後、48T12パーツも試しましたが、問題は解決されませんでした。
さらに調べてみたところ、ヴィンテージのSPARCstationに新しい交換パーツを取り付ける場合、TIMEKEEPERのパーツは世紀を保存するように更新されており、これが”diag”エラーの原因であることが示唆されていました。この種の問題は、ベンダーがシステムをまだ積極的にメンテナンスしていれば、ファームウェアの更新によって対処されるものです(この特定のファームウェアは2つのEPROMに存在しますが、これは、それらを取り出して再プログラミングすることを意味します)。
ありがたいことに、glitchwrks.com のWebサイトを提供している方が、上記のリンクの通り、解決策を提案してくれています。これは基本的に、元のデバイスから動作しない電池を取り外し、これを小型のコイン電池ホルダーと水晶発振器(電池に内蔵)を採用した基板に交換するという作業です。
このサイトはさらにありがたいことに、基板の設計図も共有されており、OSH Park経由でいくつか注文をしました。
指示に従い、両端に浅い溝の切り込みが入れられ、それがその後”CAPHAT"となっています。
これではIC部品から出ている部分が、必要な4本の線には十分な長さではありませんでした(クリスマスクラッカーを引っ張って、結果、負けたようなものです!)そこで、ワイヤーカッターでつついて、メスで削り取り、Dremelツールを駆使して、残っているエポキシ樹脂を取り除き、ICの両端の金属部分を露出させて、4本の新しいワイヤーを取り付けられるようにしました。
取り扱いやすくするため、そしてピンが曲がってしまうことを防ぐために、ICをDIPソケットに挿入していることに注意してください。
ボードの組み立てが終わり、エポキシ樹脂で固定し、電線にはんだ付けした後、SPARCstation 基板のソケットに挿入しました。
電源を入れ、OBPコマンドを入力して、ホストIDとイーサネットMACアドレスをプログラムするという工程をもう一度行いました。
リセットに入った後、SPARCstationが再起動され、ホストIDとMACアドレスが保持されている表示が確認できました。やっとNVRAMエラーが解決し、システムは自動的にUNIXをロードしました。時刻とイーサネットに関してのエラーはありましたが、時刻はOS経由で設定できるようになりました。あとはシンプルに、イーサネットトランシーバーを接続して有線ネットワークに接続するだけです。
IICの改造をせずに小型のカスタムボードを使う解決法があれば、理想的だったでしょう。考えられる方法としては、ファームウェアにパッチを適用することがあります。SunのOpenBootの新しいバージョン向けソースは公開されていますが、IPXハードウェアはこれをサポートしていないようです。これではEPROMにパッチを当てることができない、ということが言いたいわけではありません。実際、古いバイナリファームウェアにかなりディープな修正を行っている人々もいます。
オリジナルのTIMEKEEPERデバイスに物理的に手を入れることを強いられる方法に関してはあまり満足していませんが、この解決方法はかなり上出来で、ソケット付きのパーツは今後容易にに交換できます。また別のSPARCのハードウェアでも実施例があります。
次のステップ
SPARCstation IPXのコードネームはホッブズ(Hobbes)でした。マザーボードのシルクスクリーンには、ワターソンの絵本『カルビンとホッブス』の猫のキャラクターが印刷されています。
これでSPARCstationは正常に機能し、構成は維持され、設計通り、電源投入後に起動します。IPXも少しノイズが減り、マウスと外付けCDROMドライブは、はるかにきれいになりました。次の投稿の最終回では、O/Sの新しいコピーをインストールし、ペースを上げ、拡張オプションについて取り上げる予定です。
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