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Industry 4.0に向けたPLCの一新

産業用IoT (IIoT)Industry 4.0は、第4次産業革命へと急速に移行している。その中で現在の産業オートメーションの大黒柱であるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、大きな変化を迎えようとしているのだ。

このテクノロジーは本来柔軟性のないリレーに代わるものとして開発された。大きな50フィートの長さのキャビネットに、マシンを制御するためのリレーやワイヤが一杯に詰まっている様子を想像してみてほしい。当時は問題や設計変更が発生すると、システム全体を紙に手書きし、マシンをシャットダウンしてリレーを追加し、ワイヤを移動し、そしてデバッグしてやり直すといった必要があった。1968年に、GMのエンジニアが「標準マシンコントローラ」の設計基準を提示した。そしてBedford Associates社が契約を勝ち取り、新たなMODICON (MOdular DIgital CONtrol)テクノロジーを開発した。1973年には184種類のモデルがリリースされ、MODICONはプログラマブルコントローラを先導する製品となったのだ。

初期のPLCは、「プログラムできること」、「リアルタイムの応答」、「信頼性」の3つの主要な要素に対応するために設計されていた。そのPLCは先のような従来のアプリケーションには適していたが、現在では限界に達し、その再検討が必要になってきている。PLCプログラミングを定義する主要規格(IEC 61131)は、私たちが慣れ親しんだソフトウェアの柔軟性ではなく、リアルタイムの動作と信頼性を強化することを目的としていたのだ。

PLCは、ローカルの入力と出力に対応するスタンドアロンデバイスとして設計されており、論理レベルとアナログ出力を駆動する変化に応答する内部制御アルゴリズムが、外部のアクチュエータを制御する。IEC 61131規格の中心となっているのは、PLCのリアルタイム操作を制御するソフトウェア構成(プログラムとデータ)の実装だ。プログラムとデータの構成は、それぞれのスタンドアロンPLC向けに行われていたのである。

PLCネットワーキング

テクノロジーの発達に伴い、PLCはFielbus (IEC 61158)の使用でネットワーク化が進んでいたが、IEC 61131のコアアーキテクチャは、ネットワーク内のすべてのPLCを論理的に独立したものとして、独自の個別構成で取り扱っていた。プログラムは、それぞれIEC承認言語で記述できるインターコネクト機能ブロックで構成されていた。タスクスケジューラによってこれらの機能がトリガされ、各タスクは周期的な動作を行うように、特定の形式(ループ、継続、クロックによるトリガ、又は入力によるトリガ)で実行されるよう構成されていたのだ。 

こうしたアーキテクチャは、失敗の可能性を小さくして予測可能な結果を得ることができる一方、非常に大きな柔軟性を必要とする産業オートメーションにおける開発に当たっては、面倒な作業が増えてしまう。また、IIoTには、かなり深いレベルで共同作業が可能な制御システムが必要だ。個々のPLCが相互に共同作業を行うだけでなく、工場内や外部の他のシステム(クラウドなど)と緊密に連携する必要があるだろう。

分散型制御

現在は分散型制御をマシンレベルで使用することが多くなっている。そのため、通常のような1つのPLCを使用してロボティクスマニピュレータや複数のアクチュエータを統合するマシンの操作を制御するのではなく、個々のPLCによる“リアルタイムでの制御”がアーキテクチャによって個々のサブシステムに分散されているのだ。これにより、ネットワーク内の各PLCを相互に応答させたり、お客様の注文の最終段階における変更などの外部からトリガされるイベントに応答できるようになるため、応答時間が短縮されるとともに、全体的な運用効率も向上するのだ

ネットワーキングと分散型制御は、IIoT対応PLCには最も重要であり、そのためには、より強力なプロセッサが必要になる。主な要件は以下の通りだ。

  • 実行パフォーマンス
  • Transaction-Layer Security (TLS)などのセキュリティ強化プロトコルを扱うことのできる処理能力
  • インターネットプロトコル(IP)スタックを扱うことのできる十分なメモリ容量

デジタル信号処理

ARMなどのアーキテクチャをベースとした32ビットプロセッサは、PLCのコアな演算能力を発揮する。カルマンフィルタなどの高度な制御アルゴリズムの使用は、デジタル信号処理(DSP)命令の追加によりサポートでき、現在のモータ駆動型のシステムでは一般的に利用されている。ただし、完全なDSPアーキテクチャへの移行は、必ずしも必要というわけではない。また、DSP命令を追加するためのプロセッサもある。例えば、DSP命令を汎用ARMアーキテクチャに追加するためのARM Cortex-M4や、高性能DSPを搭載したアナログデバイスのBlackfinアーキテクチャ、MCU(Memory Control Unit)アーキテクチャに対応した汎用命令を搭載した拡張機能などだ。

ネットワーキング用の汎用プロセッサコアと、リアルタイムの制御タスクを処理するDSPを複数組み合わせたプロセッサを統合することは、ますます一般的になってきている。こうした場合、パフォーマンス要件が高いものの、先のようなアーキテクチャを採用すれば、1台のプロセッサでネットワーキング、管理、監視、ハイレベル処理タスクを処理できるほか、他のプロセッサ(1個または複数)による処理の一時的な中断(割り込み)や、リアルタイムI/Oにも対応できるのだ。

確定的ネットワーキング

デバイスの中には、メインの32ビットプロセッサ(Renesas RX600など)からパケット処理タスクをオフロードする、専用ネットワーク処理ハードウェアを追加したものもある。EtherCATなどのネットワークテクノロジーは、高度な確定的ネットワーキングをサポートしており、リアルタイムの分散型制御アルゴリズムもサポートしている。導入の際には必要なネットワーキングテクノロジーをサポートしているデバイスを探そう。例えば、Infineon TechnologiesのXMC400シリーズのMCUには、EtherCATサポートが組み込まれている。

高度なフォールトトレランス(障害を考慮した設計)を、従来のPLCアーキテクチャで利用可能な冗長コアと共に実装することができる。例えば、Infineon製のマルチコアMCUのAURIXファミリは3個のプロセッサコアを搭載しているため、2つをロックステップで稼働させることができる。その動作の結果の違いにより実行時のランダムエラーが検出されるほか、一度検出されたエラーをチェックし、再度実行して確かめることも可能だ。さらに一度システムを停止してテクニカルチェックを行い、製品の損傷や安全性の低下を防ぐ。

また、PLCは独立して稼働せず、通常はネットワーク接続を通じてクラウドに接続されているため、PLC機能のセキュリティは耐障害性に不可欠だ。PLCは分散型制御システムに参加する前に認証が必要である、逆に言うと、このPLC自体でネットワークを認証しなければならないのだ。操作やそれに影響するトランザクションは暗号化が必要であるとともに、ハッカーによる傍受(盗聴)やさらには変更(なりすまし)を防止するため、そのトランザクションは承認を受ける必要がある。コアPLCハードウェアに組み込まれたハードウェアの「信頼されたルート(root)」が、コアMCUや専用の暗号プロセッサやセキュアなメモリデバイスを使用するという条件が主な要件となっている。基本的にこれらは、ブートイメージのセキュリティ侵害がなく、PLCに取り付けられているすべてのデバイスが有効であることが確認されない限り、起動プロセスを完了できないようになっている。

統合セキュリティとデュアルコア組み込み処理は、Cypress SemiconductorのPSoC 6とともに提供されている。ARM Cortex-M4形式でのハイレベル処理は、I/Oイベントに即座に応答するARM Cortex-M0+と組み合わせて提供されている。ローカルデータストレージへのアクセスを保証できる信頼性の高い実行環境により、ハッカーは簡単にはファームウェアにアクセスできないのだ。

小型化

分散型制御は、少し前からトレンドとなっているだけでなく、近年では小型化も進んでいる。これは、設置や設置後のメンテナンスを簡単にできることとバランスを取りながら進める必要があるためだ。中期的にみると、大部分に従来のねじ止め端子ブロックが使用されるのと同様に、少なくともI/O接続は今後も残るだろう。I/O接続の設定能力も不可欠だ。一般的なアナログとデジタルのI/Oポート構成をサポートする1つのPLCボードを構築することはできるが、バックプレーンにプラグインされたドーターボード(主基板上に搭載されるボード)又はPLCマザーボードに直接取り付けられたドーターボードを使用したモジュール形式のI/Oアーキテクチャを引き続き使用することのほうが理にかなっている。

ダウンタイムは、ウォームプラグ/ホットプラグの切り替えにより短縮できる。PLCを用いて、I/Oカードの1つの切り替え中に他のサブシステムの制御を継続しながら、通常稼働しているシステムを中断することができるのだ。この機能が必要な場合は、カードが誤って分離しないように、ピンの密度と固定力が高く、さらにドーターボードを簡単に取り付けられるようなコネクタのデザインにする必要がある。

絶縁

切り替え時に電子部品の損傷を防止するためには、ホットプラグインターフェイスデバイス(電源が入った状態で部品を脱着可能なデバイス)を使用する必要がある。さらに、システムの稼働中に様々な産業環境で絶えず発生する過電流や過電圧に対する追加の保護措置として、ドーターボードに絶縁機能を設ける必要があるだろう。これまではオプトカプラ(フォトカプラ, 電気的に絶縁しながら信号を伝達する素子)を使用して絶縁を行ってきたが、トランスなどの高電圧電気バリアをベースとした新たなテクノロジーが使用できるため、信号調節電子機器や外部I/Oと、より繊細なロジック機能やPLCのコア内部のADCの間をコンパクトに絶縁できるようになった。オプトカプラに代わるコンパクトで信頼性の高い製品の例として、Analog DevicesのiCouplerテクノロジーや、Silicon LabsのデジタルアイソレータSi8xxxシリーズなどがある。

USBなどの高速インターフェイスを使用すればPLCの構成と周辺機器の拡張が可能だが、市販のコネクタデザインでは、様々な産業環境に耐えられない場合がある。しかし、特殊コネクタを使用することにより、IP67等級の密閉構造などの厳しい産業環境で、堅牢性と拡張機能を発揮できるのだ。その例としては、HARTINGの耐久性の高いixレンジ産業用コネクタ(イーサネットインフラストラクチャへの接続用)や、AmphenolのMUSBR産業グレードUSB-Cコネクタなどがある。

最後に、電源自体についても考慮する必要がある。現在の多数の高度PLCはそのサイズの縮小化が進んでいる。そのため、大きな冷却ファンを使用するよりも対流を利用するほうが効率的だ。現在、高度統合DC/DCコンバータでは、90%を超える効率性を達成できる。また、マルチフェーズ操作とはさまざまな負荷条件で高い効率性をサポートできることだ。そのため、マシンの操作において、PLCで高電流を出力できるのはもちろん、そこから省エネルギー状態の休止モードにも簡単に移行できるのだ。

全体的にみると、必要なテクノロジー、サブシステム、部品が容易に入手可能だ。現在のIIoT (産業用モノのインターネット)への対応に必要な産業オートメーションの堅牢性、回復力、コスト効果を向上させるPLCアーキテクチャの変更を行う準備は整っているのだ。

IIoTに向けた設計について興味がある方は、RSオンラインの「IIoTのPLCについて」を確認してほしい。

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