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産業機械を音でメンテ ~機械の声に耳を澄ます~

Bill Marshall
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Robot_factory1_748436305a2422c4dff89277f0f6a3a4734ac892.jpgインダストリー4.0の基本コンセプトでは、製造設備の故障を事前に予測することで、設備のダウンタイムを極力0にすることが期待されています。(画像:ウィキペディアより)

機械工は衰退しているのか?

「機械」という言葉は、あなたにとってどのようなイメージでしょうか? 経験10年未満の技術者の場合、それはコンピュータで制御された装置のようなものを想像するかもしれません。特に昨今は「機械学習」のように、ソフト上で実現された1機能を意味する言葉で使われることもあるでしょう。

反対に私のように古い技術者の場合は、「銅の塊をギアやネジに加工する装置」「リレーコンピュータ」「油っぽく騒々しい設備」などが思い浮かぶのではないでしょうか?旋盤やフライス盤を手動で操って金属を加工する「機械スキル」を持った熟練労働者や、彼らが支えた産業は、今では急速に過去の記憶になりつつあります。既に1940年代頃には、熟練機械工の代替としてコンピュータ制御の採用が始まっています。

昨今、スマートファクトリーやインダストリー4.0などに関してあれこれ話している中では、機械工労働者・加工スキル・ツールを人工的な自動化機器に置き換えることばかり。昔ながらの、切断や成形といった加工技術、加工道具、それを操作する熟練労働者といった要素を忘れがちではないでしょうか?昔ながらの、電気モーターを使った騒々しい機械加工は終わり始めているのでしょうか?

いえ、全くそんなことはありません。

3Dプリンターは機械的な装置であり、工業用サイズにもなると、大きなモーターやギアボックス、回転シャフト、ベアリングなど、従来の機械工で使われていた技術で構成されます。言い換えるならば、機械はこれからも存在するか、長い間無くなることはないでしょう。

しかし、機械的なシステムは摩耗故障で信頼性が高くありません…

まあ、たしかに。これは、オペレータが問題と認識できないほどの乱用や過負荷にどれだけ耐えられ設計になっているのか、や、状態監視を施した定期メンテナンスを行っているかによって異なってきます。

それに、摩耗がないからといって電子システムの寿命が無限だという事もありません。私の「ウィスカと樹状突起について」という投稿を参照していただけると理解できると思いますが、デジタル電子回路は完全に機能していたにも関わらず、警告なしに突然停止する事もあります。抵抗器やコンデンサなどの受動部品は、使用するにつれて劣化し、それらの持つ値は時間とともに徐々に変化します。ただこれらの変化は、特性が劣化するだけで、システムとしては「動く」状態なので、電子システムの障害を事前に予測するのは難しと言えます。

一方、回転や駆動を繰り返すようなメカ部品の状態変化は、はるかに予想しやすくなっています。静かに動作する電子部品とは異なり、メカ部品は新品の場合でも何かしらの音を発生します。また音がない場合でも、例えば新品のベアリングなどは、耳に聞こえないような高調波を生成して動作しており、故障が近づくと可聴域の音を発生することがあります。これらを事前に整理し備えておくことで、その部品の障害発生の警告を、数か月前に予測することが可能です。

音や振動で異常を検出

機械の作動音を聞いて機械の障害を診断することは、新しい発想ではありません。経験豊富な自動車整備士は、かつて強力な診断ツール(ハンドルを耳に当て、先端がエンジンブロックのさまざまなポイントに接触する長いドライバー)を使用して、摩耗したベアリングや、その他の可動部品を特定しました。いわば、機械の病気のための聴診器のようなものです。今では、ドライバーと整備士の耳は、特殊な3軸加速度計チップや、振動計の形でMEMSテクノロジーに置き換えられました。例えば、STM IIS3DWB (201-0404) などです。考えてみると、ほとんどすべての機械は回転部品を持ち、そして、それらが生成するどんなノイズも、回転シャフトの速度に対応する周波数スペクトルのピークを含むことを意味します。ベアリング表面の小さな欠陥は、より多くのピークに影響します。そして、これらすべてが、固有の「故障サイン」になります。新品の機械でこれが記録された場合、サービスインターバルで比較するために、参照として機能します。

振動センサーは整備士の耳とドライバーに取って代わりましたが、整備士の脳を代用できるほどではありませんでした。センサー出力は、3軸方向の、時間でサンプリングされた加速度値で構成されます。これをフーリエ変換し振動の周波数分布を得ることができます。

ただ、現実的には、摩耗の初期段階では故障を特定する振動が小さすぎてベアリングのランダムノイズにかき消されてしまい、異常を検出できない場合もあります。かといって摩耗が進み故障になる寸前でやっと検出するのでは意味がありません。よって多くの研究者は摩耗初期で異常を検出する早期故障診断(EFD: Early Fault Diagnosis)の領域での新技術開発を目論んでおり、そして必然的に人工知能や機械学習の応用が検討されています[1]

ダウンタイムを0にする

製造設備のダウンタイムは運用者に大きなダメージを与えます。完全に自動化された工場において、EFD技術はこのダウンタイム回避のために必要不可欠なものです。これを人間の修理担当者に「ダウンタイムを0にして」と依頼するのは、「障害を発生させないで!」もしくは「発生しても瞬時に修理して!」と依頼するようなもので、いくぶん現実的ではないでしょう。

人間は、あらゆる種類の障害に対処できる修理ロボットとは遠く離れた存在ですが、インテリジェントな制御システムにより、定期メンテナンスの範囲内でダウンタイムの可能性を未然に防止する方法がいくつか考えられています。

  • 影響を受ける部分への負担を減らすことにより、そこの摩耗率を低減します。これは、潤滑性を増す、シャフト速度を下げる、または負荷を減らすことによって達成できるかもしれません。コントローラーによる「調査」から、そのうちの1つが何らかの理由で実際には許容範囲外であることが明らかになると、さらに介入することなく問題を修正可能です。
  • 危機的な状況では、予備のマシンに切り替えて、障害のあるマシンを交換します。これには明らかに多くの先行投資が必要であり、追加のスイッチングハードウェアが必要な、こういったコールドスペアの提供は、障害により壊滅的な状況となる可能性がある場合にのみ考慮されます。例えば、原子炉の炉心冷却システムが考えられます。

長年にわたって使用されてきた「障害」検出と自動「修復」の興味深い例としては、ガソリンエンジンの「ノック」検出と除去が挙げられます。エンジンのノッキング、または「ピンキング」は、点火スパークがサイクルの早い段階で飛び、シリンダー内における高温ガスの急速で、スムーズな膨張とは対照的に、爆発のようなものが発生した場合に起きるものです。最新のエンジンは、エンジンノイズを「聞く」ノックセンサーと、信号を分析し、ノッキングの開始が検出された場合に点火タイミングを変更するマイクロプロセッサーを備えています。これは、DSPチップを使用した、リアルタイムデジタル信号処理での初期のアプリケーションでした[2]

最後に

可動部品を備えた機械システムは、その稼働状態を私たちに訴えています。私たちは、彼らの声に耳を傾け、言語を理解する事が必要です。インダストリー4.0の自動化された工場が成功するためには、自動化されたメンテナンスと、修理の問題に取り組む必要があります。

参考文献

[1] A Review of Early Fault Diagnosis Approaches and their Applications in Rotating Machinery Entropy 2019

[2] Engine Knock Detection using Spectral Analysis Techniques with a TMS320 DSP Application Report SPRA039

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Engineer, PhD, lecturer, freelance technical writer, blogger & tweeter interested in robots, AI, planetary explorers and all things electronic. STEM ambassador. Designed, built and programmed my first microcomputer in 1976. Still learning, still building, still coding today.

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