United Statesからアクセスのようです。言語設定をEnglishに切り替えますか?
Switch to English site
Skip to main content

プロメイカームーブメントは製造業を変えるか?

古い製造業を破壊する「Maker(メイカー)」とよばれる個人ハードウェア技術者が、混沌の中から誕生しつつあります。

Maker_movement_65c9f10b3a086ba9638fc19efbe1860a197e7d58.jpg

混沌はいうなれば巨大な不安要素です。ほとんどの仕事において混沌は避けるべきものでしょう。しかしある条件が揃えば、良い結果をもたらすこともあります。

少数で製品をつくる「メイカームーブメント」は一部の人には「混沌」としたものに見えるかもしれません。「正しいやり方」より独自のやり方で進める彼らのやり方に馴染み辛さを感じるかたも多いでしょう。

メイカーの人物像に特異な共通点はありません。彼らは、さまざまな職業の、多様な能力を持つ人たちです。唯一共通するものは、「過去存在しなかったものを生み出したい」、「今あるものを独自の形に改良したい」という欲求です。彼らが従来型のエンジニアと違うのは、何かしらの改良点をみつけると喜ぶ」というところです。

DIY愛好者や自家製パン作りなど、基本材料から何かを作る人なら誰でも、堂々と「メイカー」を名乗る資格があります。このことは、世界中のMaker Faire で出展されている幅広い作品を見ても明らかです。

Life_Maker_Faire_2018_022_small1_c66ff06fc283ca940a33ae9ab3734e551f466f8e.jpg

イギリスで開催されたMakerFaire UKの様子(写真提供: Life Science Centre) 

中でも シングルボードコンピュータ(SBC)、モジュール、その他の電子機器製品を使ってモノ作りをするテクノロジーメイカーは、最も新しいタイプの意欲的なMakerでしょう。木工作業の釘うちしかできない金槌とは異なり、SBCや電子部品があれば無限に近いツールを自由に作り出すことができます。テクノロジーメイカーにとって、これはとても魅力的です。パン作りでは材料の組み合わせに限りがありますが、テクノロジーメイカーにとって限界を決めるものは自分の想像力だけです。メイカームーブメントについては、進んでアイデアを共有してくれる他の人の想像力も活用できます。

大きなパラダイムシフトが起きている状況では、メイカーはより重要な存在となるかもしれません。つまり、職業技術者がメイカーと同調すべき時が来ている可能性があるということです。当然、この2つの間には許容できない領域が存在することもありますが、これらはグレーゾーンです。

「プロシューマ(生産財消費者)」―という言葉をご存じでしょうか?プロシューマ―とは「熱心なアマチュア写真家」「熱心なアマチュア音楽家」「熱心なアマチュアアニメーター」など、業務用グレード製品をコミケなどの非職業的な動機で消費する人たちのことを指します。

この「プロシューマ―」とは真逆の意味で「プロメイカー」という言葉が普及しつつあります。非職業的な動機でつくられた製品を業務用途で使う人たちのことを指します。例えばメイカー向けのSBCを業務用途むけに活用するような事例です。例えばラズパイやArduinoを設備として活用するような事例もこれに含まれます。

このプロメイカーという言葉はまだ定着しておらず、プロシューマー(生産消費者)という言葉ほど一般的ではありません。当然このような活用はまだまだ議論の余地があり、誰でも受け入れられる考えではないのでしょう。これまでも一般消費者向け製品を産業用途に活用する事例はありましたが、それがテクノロジーメイカーでも同じことが起きようとしています。

高性能、低コストで事前設定済みの機能を備えたプラットフォームの利用の増加が、メイカーの存在を可能にしています。メイカーは、市販のデバイスにわずかな期間で特定の機能を追加できます。エンジニアリング環境では、プロメイカーは通常の設計サイクルや相互評価プロセスに頼りません。成果は単一用途の「ツール」で、その用途がなくなったら、できるだけ早くそして簡単に、別の用途で使えるようにします。たとえば、電気機械ラッチのストレステストを行うために設計されたテスト装置や工場内の特定のエリアで足音をモニターするデバイスなどが考えられます。多くの場合、標準的なSBCの機能を簡単に拡張できる多数のセンサーにはコードサンプルが付属しています。これは、設計にあまり労力を割かなくても、複雑なシステムを構築できることを意味します。耐用期間が数時間に限られていたとしても、このようなシステムの価値は非常に大きい場合があります。このアプローチは、従来のエンジニアリング分野でも増えつつあります。

SBC_21eb86121029ffc2833e438e3cb83e255c27ed44.jpg

モノ作りをして(理想としては低コストで)、それに価値を付加するプロセスが経済全体を支えていますが、同じダイナミクスがメイカームーブメントに当てはまるとは限りません。従来の経済では、最終製品の有効市場にはコストを正当化できるだけの規模が必要であり、利益がコストより高いうちは生産を続けるべきとされます。いわゆる収穫逓減の法則です。このモデルは、個々のエンドユーザーにもたらされる価値を考慮したものではなく、むしろ有効市場に対する全体的な価値に寄ったものです。メイカーの場合、末端市場は実質的に1つなので、ほぼ間違いなくコストは重視されません。価値が非常に高い場合は特にそうです。問題に対するソリューションの価格を、そのソリューションを使った大量の製品で償却できるモノ作り環境において、このダイナミクスはこの上なく魅力的です。

生産ラインで障害が発生した場合、保守チームが修理できる可能性があります。それできない場合に、製造業者が関わる必要がでてきます。1つの問題が何度も繰り返し起きる場合、現場のエンジニアがソリューションを考案することができます。今では、テクノロジーメイカーが、汎用の一般的なツールを使って、そうしたソリューションを実装することも可能です。

エンジニアリングにおける認識の変化で重要なのは、ツールの質です。SBCとモジュール、センサーとアクチュエータ、そして設計環境。これらの質は、産業市場に特化して設計された他の製品とほぼ同じです。より質の高いデバイスが必要な場合、比較的簡単にシステムに統合できます。これこそが、メイカーとエンジニアの間にある実際のグレーゾーンであり、プロメイカーの成長の場となります。

エンジニアは「知識欲」と「問題解決意識」を持ち合わせており、これらを組み合わせて問題を解決していきます。メイカーには「ソリューションに対する意欲」と「クリエイティブでありたいという欲求」を持っており、これらが融合した場合も同様です。このことはメイカーに対する製造業者の見方に影響を与えていますが、おそらくそれ以上に、エンジニアがエンジニアリングに取り組む形に影響を与えているのではないでしょうか?

DesignSpark Community Manager and all-around geek girl.