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基板上に部品を付けない丸いはんだ用パッドを見かけたことはありませんか?2つの半円で描かれている場合が多いそのパッドを”はんだジャンパー”といいます。他にもショートランド、ソルダージャンパー、半田ジャンパー、半田ブリッジジャンパー等いろんな言い方があります。
この記事では、はんだジャンパーの特徴やライブラリの作成方法を説明していきます。
はじめに
はんだジャンパーは、はんだを”故意にブリッジ”させて使用します。これによりジャンパー機能を提供できるのです。ピンヘッダーでジャンパーリンクを行うよりもコンパクトになります。しかし、繰り返し使うことはできず、一度ブリッジしてしまうと元には戻せません。
はんだジャンパーは標準的な表面実装用パッドを使用して設計することが多いです。そのため、はんだジャンパーを多用してしまうと、ユーザーが部品のはんだ箇所を間違えてしまうことや、はんだ箇所と部品数が合わずに部品が不足していると思ってしまうかもしれません。はんだジャンパーの使用はできるだけ少ない方が良いと言えます。
ですが、設計の中で必ず必要になる場面も多くあります。例えば、チップアドレスピン、50/60Hz設定、フィールドサービスや開発時の補助として共通点(スターポイント)でのグラウンド分離(絶縁)、アナログ、デジタル、電源のグラウンド接続が必要な場合などです。
はんだジャンパーの使用するパッドは”円”であることが多いですが、理由は半田を溶かすと自然にボールができる性質があるため、その性質を利用してよりブリッジしやすいようにしています。
では次に、はんだジャンパーの理論について理解したところで、2つの半円形の銅パッドを使用した標準的なハンダジャンパーの作成方法を説明します。
1. PCBシンボルの作成
ではここからはんだジャンパーのライブラリを作成していきます。説明の都合上PCBシンボルから作成して、その後に回路図シンボルを作成していきます。
Library ManagerからPCB Symbolタブを選択し、保存先のライブラリを選択してNew Item...を選択します。
注意:フットプリントに使用するTechnologyファイルを<Tech Files...>ボタンから選択することもできます。またTechnologyファイルは、最後に使用されたものが選択されます。
2. Padの追加
Add Padでパッドを選択して、パッドを1つ追加します。
3. 新規スタイルの作成
最新バージョンでのやり方
追加したパッドを選択して右クリックを押します。
ウインドウが開きますので“Bullet”を選択して幅と長さを入力します。長さは、幅の半分以上にする必要があります。(後に半円にするためです)。Hole SizeをZeroに設定し“Plated”のチェックを外します。
OKをクリックして保存します。
保存が完了する前に下のような警告ウインドウがでますが今回は無視してOKを押してください。
一応内容を説明しておきますと、一つ目はつ目は既存のパッドデザインを使わずに新しいパッドスタイルを使っても問題ないかを警告しています。二つ目はそもそもパッドスタイルを使用しているので、パッドに必要な”穴”が空いていないことについて警告しています。どちらも今回のデザインには支障が無いので問題ありません。
旧バージョンでのやり方
また、古いバージョンでは上記のChange Styleのウインドウは存在しますが、新しいスタイルを追加して使用する場合はこのウインドウでは変更できません。そのため3で説明したようにPropertiesウインドウで変更します。
下図のPropertiesウインドウのハイライトした部分に、先ほど説明したChange Styleウインドウと同じパラメータを設定します。設定後、適用・OKをクリックしてください。こちらでも上と同様に警告ウインドウが出ますが、無視してOKをクリックします。
4. パッドスタイルの確認
上記設定がレイアウトに適用されていることを確認します。また、ここで使用したい大きさに設定してください。
5. 2枚目のパッドを追加して必要な隙間になるように配置
コピー&ペースト等で作成したパッドをもう一つ追加して下の画像のようにパッド間に隙間をあけて配置しましょう。
この時、パッドの動く量が多くて所望の隙間にあけられない場合は右下のグリッド数を変更してください。これにより移動量を変更することができます。
Gridはグリッドごとに動く、Half Gridはグリッド半分ずつ動くというような動作をします。
6. パッド間のレジストを除去する方法
ここではレジストを除去する、つまりソルダーマスクを追加するための「Solder Maskレイヤー」について説明していきます。
レジストを除去することではんだがパッド同士を接続しやすくできます(半田ブリッジしやすくします)。
レイヤー操作の有効化
デフォルトのTechnologyファイルではSolder Maskレイヤーを操作することができません。それはライブラリで使用するTechnologyファイルにそのレイヤーが含まれてないためです。そこで、Solder Maskレイヤーを追加して操作できるようにします。方法としては大きく分けて2つの方法があります:
- 手動で操作レイヤーを追加する
- Technologyファイルを編集して、Solder Maskレイヤーを追加する(別の記事で紹介)
ここでは上記の1の操作方法を説明していきます。2の方法については、説明が長くなりますので別の記事にて紹介します。
まずSettingsからDesign Technology...を選択します。
ウインドウが開きますので、次にLayersタブを選択してAddを押します。
さらにウインドウが開きますので、以下のように設定します。
パラメータのName、Type、Side、Colorを変更してください。その他のBias、Usage、Netは何も記入しない、もしくは設定されているままの状態で変更しないでください。設定できたらOKをクリックします。
Design Technologyウインドウに戻ると以下のように、今設定したTop Solder Maskレイヤーが一番上に追加されていることがわかります。この状態でウインドウを閉じても良いのですが、このままだとレイアウトのビューではソルダーマスクレイヤーが一番上に表示されてしまいます。そこで、このレイヤーを下げてビューを正しく表示するようにします。Design Technologyウインドウにある追加したTop Solder Maskを選択して、Downを押して上から3番目におろします。
降ろせたら適用、OKの順にボタンを押してウインドウを閉じます。
すると、先ほど作成したレイアウトの外側部分が緑色(ソルダーマスクを緑色に設定した場合)になっていることがわかります。
ソルダーマスクの設定(レジスト除去)
では、本題のソルダーマスクを設定していきましょう。
左のバー、もしくはAddタブのRectangleを選択します。選択された状態でカーソルをレイアウト上の何もないところに置き、右クリックを押すとウインドウが開きます。
ウインドウのChange Layerをクリックするとさらにウインドウが開きます。ここで追加するShapeのレイヤーを選択できます。先ほど設定したTop Solder Maskを選択します。
7. パッド間にレジスト成型、形状の塗りつぶし
6の状態でパッド間に四角を成型します。パッドに被らないように注意してください。
成型した形状の一辺を右クリックしてPropertiesウインドウを開きます。下図でハイライトしたFill(塗りつぶし)にチェックを入れます。
できたら適用・OKをクリックします。
8. 塗りつぶしと最終的なレイアウトの確認
7で入れたチェックにより、成型した四角の真ん中が塗りつぶされていることを確認します。さらにパッドのレイアウト全体で問題がないかを確認します。
9. パッドのレイヤー変更
最後にパッドのレイヤーを変更します。通常のパッドは穴があるのでレイヤーとしては「All(全レイヤー)」として設定されています。しかし、今回作成しているパッドは表面レイヤーのみのパッドです。
片方のパッドを選択し、右クリックしてChange Layerを選択します。下図のウインドウが出てきますので「New Layer」にTopを選択します。
同じようにもう一方のパッドにもレイヤーを設定します。
パッドのレイヤーが変更できるとパッドの色が変わります(デフォルト:灰色→赤)。
10. ライブラリに保存
ではFileからSaveを選択して、保存先のライブラリとSymbol Nameを入力して保存します。
これでPCBシンボルの作成は完了です。
11. Library Managerでレイアウト確認
Library Managerで作成したはんだジャンパーを確認しましょう。Library Managerを開き(ctrl+L)、PCB Symbolタブ保存したライブラリ先を選択します。作成したSymbol NameがLibrary Contents項目にありますので、それをクリックします。右側にあるPreviewチェックボックスにチェックが入っていない場合はチェックを入れます。
プレビュー画面に先ほど作成したはんだジャンパーがあれば大丈夫です。
12. 回路図記号の作成
ここからは簡単に回路図記号(シンボル)を作っていきます。
Library ManagerのSchematic Symbolsタブをクリックします。保存したいライブラリ先を指定し、New Item...をクリックします。
回路図編集画面が開きますのでAdd Shape Single LineやAdd Open Shapeではんだジャンパーの回路図を描画します。回路図では大きさなどは設計においては特に問題になりません。あまり大きく書くと回路図を作成するときに邪魔になるくらいです。
※RはReference Originです。Add > Reference Originで追加できます。
下図のように書ければ大丈夫です。
13. ピン設定
次に作成した回路図にピンを設定していきます。
Add Padを選択して、パッドを回路図の両端に配置します。このパッドがピンの役割をします。
最後にパッドのPin Nameをシンボル側に移動させてあげれば回路図記号の完成です。
14. ライブラリに保存
PCBシンボルと同様にFile > Saveで保存したいライブラリ先の選択とSymbol Nameを入力してOKをクリックします。
これで回路図記号(Shematic Symbol)も完成です。
15. コンポーネントの作成
最後にコンポーネントを作っていきます。
Library ManagerのComponentsタブを開き、はんだジャンパーのコンポーネントを保存したいライブラリ先を選択してNew Item...をクリックします。
ウインドウが開いたら、Component、Description、Package、Default Referenceパラメータを入力します。次にSchematic Symbolにチェックを入れて先ほど作成した回路図を選択し、PCBも同様にします。
全て設定したらOKをクリックします。
16. ピンマッピングと保存
回路図とPCBレイアウトのピンを対応するようにします。設定するにはハイライトした表に数字を入れます。
設定できたら、File > Saveで保存したいライブラリの選択とコンポーネントの名前を入力してOKをクリックします。
これでライブラリ作成の全工程が完了しました!!!
ライブラリの使用について
記事の最後にこのライブラリの使用方法について解説します。
注意事項!!
使用方法を説明する前に注意事項を説明します。作成したはんだジャンパーは「ソルダーマスクレイヤー」を使用しています。そのため回路図からTranslate To PCB...を選択してPCBレイアウトを作成する時には、必ずソルダーマスクレイヤーの設定を有効にする必要があります。
回路図作成画面でTools > Translate To PCB...を選択してLayersステップまで進めます。
進めたらDefine Layersにチェックを入れて、Solder Mask項目のTop SideとBottom Sideに必ずチェックを入れてください。
これで最後のステップまで操作を進めていけば大丈夫です。他のステップでは特に指定はありません。
使用方法
あとは、他のコンポーネントと同じようにAdd Componentから作成したはんだジャンパーコンポーネントを選択して、Addしてあげれば使うことができます。
下の例でははんだジャンパーを回路図シンボルとPCBシンボルとで比較して示しています。
今回作成した、はんだジャンパーコンポーネントはTop(表面)で設計していますが、Filpコマンドで反転してあげれBottom(裏面)に配置して使うこともできます。
まとめ
今回は簡単に、はんだジャンパーについて紹介して、そのライブラリの作成方法や実際に使うところまでを説明しました。はんだジャンパーははんだする時に回路を決定できるという利点があり、その利点を生かしてよりフレキシブルな設計を行うことができます。ぜひ一度、皆様の設計にも取り入れてみてください。
また、はんだジャンパーのライブラリ作成を通じてDSPCBのライブラリ作成の簡単さも同時に体感していただけたらと思います。
DSPCB Proユーザーであればこの記事のテクニックと併せて、パッドスタイルの例外機能などを使えばペーストマスクの開口部を自分の思うがままにデザインすることができます。