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自作IoTデバイスでCEマークを取得 パート1: 準備

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本シリーズの記事では、IoT製品の一般販売のためのCEマーク取得のための工程を、プロトタイプ、テスト、設計変更に至るまで取り上げます。

CEマーク取得についての未経験エンジニアの反応は、恐怖に震えあがるか、または幸運にも何も知らないか、反応は大きく2つに分かれるでしょう。一旦関わると、間もなく幾つもの基準に目を通す羽目になり、どの基準を自分の製品に適用すべきか、どうやってテストに着手すればよいのかに苦悩し、さらにその予想外の費用の大きさに追加費用をどのように捻出すべきか考え始めるかも...。いやいや、本シリーズの記事では実はCEマークの取得はそれほど恐ろしいものではないことを説明したいと思います!

今回のケーススタディで取り上げるのは、LoRa、WiFi、Bluetooth、SigFoxなどの無線機能搭載マイコンを備えたPycomモジュールベースで自作した環境センサプラットフォームです。

その設計はエンドユーザ向けではなく、むしろPycomモジュールと同様に、開発で使用されたりエンドユーザ向け製品に統合されたりするコンポーネントだといえます。

しかしながら、たとえきれいな筐体に入っていなくても、生産ファームウェアやサービスインテグレーションが消費者向け製品に組み込まれる可能性がある場合、しっかりとテストすることはできます。そうすればエンジニアや製品設計者は製品製造の段階になってから、自分たちの設計が原因の問題に対処する必要はないのだと安心できます。

そもそもCEマークとは?

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CEとはConformité Européenne (European Conformity、ヨーロッパ適合)の略称であり、その製品が、欧州経済地域(EEA)で販売する製品として健康面/安全面/環境保護面の各基準に適合していることを示します。

「CEマーキング」については、最初にこれに当てはまらないことから説明すると分かりやすいと思います。

    • CEマーキングは、政府の研究機関や業界団体などの第三者機関の認定ではありません。
    • 「China Export (中国の輸出品)」の意味ではありません!(China ExportマークはCEマークに非常によく似た形をしており、しばしば混乱の元になっています。)

1点目は、正しい理解が必要な重要事項です。CEマーキングは、ベンダー側が製品が基準に適切に対応していることを主張するために行います。テストを一切実施しないでマークを付けることもできますが、それは保険に入らないことを選択するのと同じです。もちろん程度の差はありますが、ベンダーが干渉(EMI)や身体的な悪影響までも起こし得る潜在リスクを抱える中で、どれくらいのリスクを自分でとるかという点が問題になります。

2点目について、CEは「中国の輸出品」の意味ではないのですが、その意味でマークしているベンダーさんも何社かいます。本件については、欧州議会が関心を示しています

さて、つまりCEの関連する基準とはいったい何でしょうか?それはすべて対象となる製品次第であり、適用される基準はその製品が自動車、ノートパソコン、電子レンジ、医療機器など、どのような種類かによって大きく変わってきます。

ここではこれ以上の詳細には触れず、適用される基準については今後の記事で説明します。但し、電磁両立性(EMC)について基本的に言えるのは、いかなるエミッションについても許容可能なレベルに抑え私たちが十分に干渉を受けないよう徹底するということです。

自作環境センサーのハードウェア構成

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環境センサプラットフォームはPycom LoPy  (162-8047) モジュールを中心に構築されています。Pycomモジュールに慣れていない場合は、適度なパワーを備えるWiFi搭載32ビットRISCマイクロコントローラのESP8266と、さまざまな低電力ワイヤレス基準に対応する追加サポートを統合します。これらはMicroPython経由でプログラム可能です。MicroPythonは際立って初心者に使いやすいPython言語に見られる機能一式を提供し、更に統合された周辺機器に簡単に適用できるサポートを備えています。

上記のブロック図を左下から時計回りに見ていくと、センサプラットフォームがPycomモジュールから次のように広がっていることがわかります。

    • I2C接続されている周辺光センサ
    • I2C接続されているBME680統合環境センサ
    • アナログ入力の騒音測定器
    • シンプルなデジタルGPIO経由で接続されるPIRセンサ
    • Pmod拡張
    • ステータスLED

まとめると、これらはデジタルとアナログの入出力機能を持つ周辺機器の集まりであり、今後に向けた拡張性も備えているので、テスト実施時には興味深い組み合わせが可能となります。

プロトタイプ

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この環境センサプラットフォームは、そもそもアールエスコンポーネンツ英国本社でのIoTスマートビルディングのデモ用機器としてプロトタイプ開発されました。このボードはDesignSpark PCBで設計された2つのリビジョンのうちのセカンドリビジョンのボードです。このセカンドリビジョンボード30点が、社内の小型のチップマウンタで部品実装されました。

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この30点のボードのうち24点が実際に建物に設置運用され、残りは開発やテストで使用されました。設置されたボードは数ヵ月たった今も問題なく動いており、以下のセンシングデータを、The Things Network経由でサーバ上に蓄積しています。

    • 温度(BME680)
    • 湿度(BME680)
    • 気圧(BME680)
    • 揮発性有機化合物(BME680)
    • 周辺光レベル(BH1750FVI)
    • 騒音レベル(マイク + プリアンプ + アナログ入力)
    • PIR (Panasonic EKMC1603111)

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The Things Network Console上で表示されるデコードされたデータ

こうして便利なソリューションが実現したものの、このセンサプラットフォームの一般販売、およびCE認証は当初想定しておらず、関連する基準に対応するために幾つかの設計変更が必要になる可能性は十分にあります。運がよければ、こうした変更はわずかで済む場合もあります。当初の設計者がプロフェッショナルなエンジニアで、プロトタイプやデモ用機器であっても常に努力してベストプラクティスを追求していれば、そのようなケースもあり得るでしょう。

CE認証プロセス

ここからはまさに各分野のエキスパートのサポートが大きな助けになります。例えば、適用される基準に関する助言、適切に調整されたテスト用機材の手配、その正しい使い方、それから問題発生時の原因特定と改善策についての知見などです。

当社はEMCテストサービス企業のUnit 3 Complianceと協業する予定です。同社は予備適合性試験とEMC対応の製品設計を専門としています。おおよそのプロセスは以下のとおりです。

    1. 初期設計のレビュー(Unit 3 Compliance)
    2. 新たなCADリビジョンとボードの作成
    3. 予備適合性EMC試験(Unit 3 Compliance)
    4. 必要であれば、新たなCADリビジョンとボードの作成
    5. 認定済研究施設でのテスト

直接プロセスの3に進むこともできますが、当社側で設計のマイナーチェンジや別用途のボード追加といった要望が出てくることもあり、小規模な製造過程を1回実施するのは当社にとってもテスト前に設計をレビューして微調整する好機になります。

仮にテストで望ましい結果が得られたとして、リスクに対するアプローチ次第ではプロセス 3で止めることもできます。また、実際には認定済研究施設のサービスを利用していないベンダーも多いかもしれません。お察しのとおり、コストが高いためです。しかしながら今回のケースについては、認定済研究施設のテストレポートによって再度保証を得ておきたいと思います。

最初から認定済研究施設でのテストに進むのはどうでしょうか?先に述べたとおりコストが高く、予備適合性サービスの方が問題の特定と対処を高い費用対効果で実施できます。また、不運なことに、関連する基準に対応するために設計変更の繰り返しや再テストが必要になるかもしれません。この場合も認定済研究施設より予備適合性試験での実施が適切です。

成果物

最後に成果物について触れておくと、テストの結果と共に、さまざまな設計資料やファームウェアも順次共有する予定です。最終的にはDesignSpark PCBデータベースにオープンソースハードウェアとして公開され、誰でも当製品を製造したり、関連製品の土台として活用したりできます。

Andrew Back

Open source (hardware and software!) advocate, Treasurer and Director of the Free and Open Source Silicon Foundation, organiser of Wuthering Bytes technology festival and founder of the Open Source Hardware User Group.