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世界各国のメーカーや政府が化石燃料を動力源としている車両による支配終わらせようと全力で取り組み始めたことで、電気自動車の人気が高まりつつあります。私たち消費者は今後、電気自動車を受け入れられるのでしょうか?

私たちにとって問題となるのは、石油があまりにも便利すぎるということです。ガソリンやディーゼルは高いエネルギー密度をもち、自動車にとってとても有用な燃料なのです。それらの燃料は比較的わずかな容量と重量でたくさんのエネルギーを提供してくれます。現代のファミリーカーでは、約60リットルの燃料を45キログラム程度の質量で運ぶことができます。これは、1000キロメートル近く走行するのに十分な量です。タンクが空になっても、道路わきに何千とあるガソリンスタンドで10分もかからずに満タンにできます。

電気自動車の制限

これを同等の電気自動車と比較すると、バッテリーは60リットル燃料タンクと比較して数倍の質量をもち、同じ走行距離を達成するのはかなり難しいでしょう。現在、最も高性能な電気自動車を販売するメーカーのものでも、航続距離はわずか500キロメートルです。加えて、充電時間もまた問題になります。メーカーの中には、わずか15分の充電で300キロメートル走行できるだけの能力がある、専用の充電ステーションを設置しています。ただ、家庭用のコンセントから同じ自動車を充電するのには何時間もかかってしまいます。

この問題の解決策は2つあります。1つ目は、容量と充電時間の両方を改善するために、バッテリー技術の研究を続けることです。そして2つ目は、メーカーが従来のガソリンに対抗できるようなインフラを整備することで、急速充電を一般化することですが、ガソリンと電気の両社が近くに存在できるのかは未知数だと思います。私の中の工学オタク的側面から考えると、高圧の直流充電ステーションがガソリンを供給するポンプと同じ敷地内にあると考えるだけで恐ろしく思います。とはいえ、このネットワークが作られるのであれば利便性は非常に向上するでしょう。多くのドライバー達は、300キロメートルごとに15~20分の休憩をとる必要があることに対し、問題を感じないと思います。

Electric Vehicle Batteries

電気自動車用バッテリー

ここまでの消費者問題が解決されたとしても、電気自動車は気候変動を抑える解決策をとなりうるのでしょうか?電気自動車は充電が必要であり、そのエネルギーは何らかの方法で生み出される必要があります。電気自動車用に生み出されるエネルギーがすべて再生可能エネルギーであれば素晴らしいでしょうが、悲しいことに、実はそうではなく、今後もしばらく状況は変わらないでしょう。私たちの化石燃料産業に対する依存はまだまだ続きそうです。

バッテリー用リチウムの調達

また、環境に対する影響はほかにも考えられます。電気自動車に使用されている最も一般的な技術といえばリチウムイオン電池です。リチウムの入手方法はいくつかありますが、最近まで、この過程で消費されるエネルギーや水、土地に対して、環境的に高いコストがかかっていました。この点を考慮することは非常に重要ですが、世界銀行によると、将来的なバッテリー需要を満たすためには、現在の5倍のリチウムを採掘する必要があると予測しています。

また、バッテリーには寿命があります。バッテリーを搭載している自動車が廃車になった場合、バッテリーを取り出して大部分をリサイクルすることが可能ですが、リサイクルもまた、エネルギーを消費します。これでは今日の問題を解決するために、7~10年後に別の問題を押し付けているだけになってしまっていないでしょうか?こう問いかけたところで、リチウムが本当に古いバッテリーからリサイクル可能なのであれば、将来的にリチウムを採掘する必要性は減るでしょう。さらに、 非常に高いレベルのリチウムを含有する深層熱水 といった形で利用できる、新たなリチウム源が存在しています。この水を採取することはより環境にやさしく、優良な方法であると思われます。

結局のところ、バッテリーこそが未来を司るのかもしれません。しかし、水素という別の解決策も提案されています。水素は宇宙に最もありふれた元素のひとつであり、太陽の質量の4分の3ほどを占め、太陽の熱と光を生み出す燃料になっています。

水素燃料電池

水素によって水素燃料電池の大半が構成されます。水素燃料電池がどういったものか簡単に表現すると、終わりのないバッテリーと言えます。燃料電池に対して水素と酸素が供給される限り、電気が発生します。また、これは電気の発生時に何かを燃焼させる必要はなく、副産物は水のみです。さらに、水素を燃料とする自動車は充電の必要がありません。代わりに、燃料タンクにはガソリン車と同じように、水素が充填されます。

Toyota's vision of hydrogen cars - the new Mirai

トヨタの将来の水素自動車、Mirai

水素には特有な問題があります。第一に、水素は驚くほど軽いため、気体の状態では大気中を上昇していきます。また、可燃性が非常に高く、大気中に放出された水素は、適切な条件下で酸素と反応します。この反応によって純水が生成されますが、非常に威力のある、むしろ不都合な爆発のあとにのみ起こります。

最後に、水素を見つけるためには労力が必要になります。水素の性質上、他の化学物質と結合する傾向があるため、気体の状態で見つかることはありません。最も一般的な生産方法では、(お察しの通り)化石燃料の燃焼が必要になります。また、多くの人が高校時代に経験した実験である、電気分解によっても生成可能です。ただ、この電気分解は通常の生産方法よりもさらに非効率的であるため、化石燃料が主要な供給源であることに変わりはありません。

水素燃料電池が一般的な自動車用のソリューションになるためには、完全に新しいインフラを開発する必要があります。水素の爆発しやすい傾向は懸念材料であり、水素の輸送方法や貯蔵施設については、新たな手法が必要となります。通常の大気圧で保持できるガソリンとは異なり、水素燃料は圧縮ガスとして供給されることになります。水素が貯蔵されるタンクは内側の圧力にも耐え得るように球形である必要ですが、どのようなエンジニアも、車のようなものを作る際に大きなボールといった要素がどれだけ邪魔か、語ってくれるでしょう。

つまり、水素は入手が困難であり、貯蔵も困難、漏れた場合には爆発の危険が多少なりとも考えられます。娯楽的ではありながら、水素の生産や貯蔵に関する非常に正確な研究として、アンディ・ウィアー(Andy Weir)の『火星の人(Martian)』をお勧めします。

これほど困難を極めるにもかかわらず、なぜわざわざここまでの努力をするのでしょうか?

前述のように、エネルギー密度が大きな理由です。水素の質量が一定であれば、同等のリチウムイオン電池よりも燃料電池の方が、航続距離が長くなります。ただ、その優れた航続距離にもかかわらず、水素の不便さが路上走行での普及を妨げるかもしれません。しかしながら、水素をソリューションとして受け入れてくれる土俵はあります。

水素を航空機に

航空機産業は長い間、気候変動への影響について注目視されてきました。現代の航空エンジン設計は進歩しているにもかかわらず、飛行機を飛ばすには膨大な量の燃料を燃焼させています。しかし、飛行距離が長いため、現在のバッテリー技術では、航空会社が必要とする性能を提供できません。航空機産業においては、重量は敵であり、航空機に多くのバッテリーを追加することで、その有効性が低下してしまい、何かを輸送する手段として成り立たないまでになってしまいます。

高いエネルギー密度をもつ水素燃料電池は、民間航空にとって期待の星になるかもしれません。水素の輸送や貯蔵の問題は、航空機産業にとっては他の産業に比べ、はるかに管理しやすいものになります。道路交通のような、50キロメートルごとの充填ステーション設置が全く必要ありませんし、多くの空港は、必要とするインフラに対応するのに十分な規模です。また、そういった空港の数もはるかに数が少なく済みます。

この業界は、未来の燃料としての水素に注目し始めています。ブラジルの航空機メーカーであるEmbraer(エンブラエル)が最新の航空機イメージを発表し、私の飛行機オタク心がくすぶられました。

Brazilian aircraft manufacturer Embraer Aircraft Design

最新機のイメージ(Embraer

この最新機種であるE50-H2GTは、従来のターボファンエンジンをジェットファンで置き換えたもので、ブレードがエンジンの内側ではなく外側にあります。さらに、このエンジンは翼の下でなく、機体後部に設置されています。これは初期のジェット機で一般的な配置でしたが、近年はあまり好まれないものになっていました。しかし、この旧方式へ回帰した裏側には、大きな理由が存在します。

Embraer社はこの航空機を、水素燃料に対応できるように設計しました。水素は球状のタンクに貯蔵しなければなりませんが、主翼には十分なスペースがありません。その代わり、タンクが機体後部に設置されることになりますが、それなら燃料を貯蔵する場所の隣に配置したほうが良いのでは?と、考えます。不明瞭な設計特性に見えますが、メーカーがどのように未来を見据えているのかを見ることは刺激的なものです。

水素の未来

水素は未来を象徴するものなのでしょうか、それとも、単に私たちの将来のエネルギー需要を表す、ジグソーパズルのピースのひとつにすぎないのでしょうか?私は、バッテリーと水素のどちらにも長所があり、それぞれがエネルギーネットワークの中に居場所を見つけるだろう、と考えています。

どちらのソリューションも化石燃料からの独立を約束するものではありませんが、輸送の問題に具体的な解決策を提供します。太陽光、風力、宇宙ベースの電力 といった、エネルギー生産のさらなる発展とともに、私たちに代わって気候変動への公約を果たすべく、我々を支援してくれるものになるでしょう。

Connector Geek is Dave in real life. After three decades in the industry, Dave still likes talking about connectors almost as much as being a Dad to his two kids. He still loves Lego too. And guitars.