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ESDK向けの長距離伝送用の拡張ボード「CREボード」を開発

今回は、長距離データ伝送が可能な ESDK用のCRE:Cabled Range Extenderボードを開発したのでそれをご紹介します。このCREボードはCRE-AボードとCRE-Bボードの2つから構成されています。

ESDK Cabled Range Extender (CRE) board

ESDK用のケーブルレンジエクステンダー(CRE:Cabled Range Extender)ボードで、ESDKの長距離伝送やリモートマウントを可能に!!

CRE-Aボード

ESDK Cabled Range Extender board CRE-A

ESDK CRE-Aボードには既存のESDKエコシステムに接続するためのコネクタと、センサーチェーンの延長に標準的なイーサネットケーブルを使用できる8ピンのRJ45コネクタ、そしてケーブル抵抗による電圧損失を低減する12V昇圧(ブースト)コンバーターが搭載されています。

CRE-A features a Texas Instruments boost converter controller

CRE-Aボードには、Texas Instruments(テキサスインスツルメンツ)社のLMR62014「SIMPLE SWITCHER(シンプルスイッチャー)」昇圧コンバーターコントローラが搭載されています。このコントローラは外部部品としてインダクタ、ダイオード及び受動素子が1つ必要という少ないコンポーネントで使用できます。さらに、このレギュレータはTI Webench Designerからのサポートも手厚く、実施設計の負担を大きく軽減してくれます。

昇圧コンバーターが最大350mAで12Vを供給して1.6MHzでスイッチングするようにパラメータを選択し、スイッチャーのフットプリントを小さくしながら、より大きな過渡応答も提供できるようにしました。加えて、念のためレギュレータのオーバーロードを防ぐ用として、出力を200mAまで下げました。

Graphs showing operation under various conditions

上の図はシミュレーションをWebench設計プロセスの一部として実行し、さまざまな出力電流での効率プロットなど、各種の出力条件下でのコンバーターの動作を示しています。

また、Webenchはサンプルプリント基板レイアウトを作成できます。私たちはスイッチャーのデータシートとアプリケーションノートに記載されているベストプラクティスに則り、このレイアウトを元に大まかな試作レイアウトを作成しました。

CRE boards feature the NXP PCA9615

どちらのCREボードにもNXP 差動I2Cバスバッファ PCA9615 が搭載されており、I2Cバスが破損することなく長距離伝送できるように支援してくれます。このバスバッファは最小限の外部部品と、ケーブルからの反射を最小限に抑えるための適切なバイアス抵抗器が必要になります。

差動I2Cバスバッファ PCA9615は2つの電圧レールをサポートしており、1つはシステムインターフェース用、もう1つはケーブルを駆動するものです。ノイズ耐性を向上させるため、ケーブル側は3.3Vではなく5Vで駆動されます。この2つの電圧間のレベルシフトは差動変換の一部として提供されます。

I2Cインターフェースに関わる信号の配線は昇圧コンバーターほど重要ではありませんが、問題が発生する可能性を低くするために、両者を十分に離すことにしました。

CRE-Bボード

CRE-B Board

ESDK CRE-BボードはCRE-Aと非常によく似ていますが、異なる点は昇圧コンバーターが5V出力を生成する降圧(バック)コンバーターに、5Vレールを3.3Vに降圧するリニアレギュレータに置き換えられています。

The ESDK CRE-B board has a buck converter

CRE-Bボードも、Texas Instruments社のスイッチングコントローラを選びました。選択したコントローラはコンパクトなSOT-23パッケージのLMR12010です。もちろん、この部品もWebenchのサポートに対応しています。

出力パラメータは最大電流300mA及びスイッチング周波数1.6MHzで、電圧は5V一定に設定しました。これはCO2センサーがかなりのパルス電流を流す可能性があるため、部品サイズを抑え、過渡応答を改善するためです。ヒューズは5Vと3.3Vの両方のレールを保護できるポリヒューズを使用しました。

降圧コンバーターでは、ツェナーダイオードを使用して「BOOST」ピンへの電圧をさげています。LM12010のデータシートでは、最大電圧は5.5Vとの記載がありますが、私たちのプロジェクトではこれが12Vまで上昇することがありました。これはICの安全評価のために、TI社が提案したソリューションです。

Graphs of CRE-B produced under differing operation

CRE-Bボードでも、同じようにシミュレーションを実行してプロットを作成しました。すべてのプロットでレギュレータが動作すること、そして最大88%という基準以上の効率で動作することが確認されました。プリント基板レイアウトは私たちの設計にコピーして、2層基板のスタックアップが収まるように変更しました。

CRE-Aと同様にPCA9615バスバッファを使用して、差動シングルエンド変換を行いました。このボードではドライバにプルアップ抵抗が含まれていないため、通常のI2Cインターフェースに2つのプルアップ抵抗を追加する必要がありました。

2本の差動I2Cラインと、センサーチェーンに向かうシングルエンドラインを含む、ボード上の全てのバスにTVSダイオードが追加されました。次にシングルエンドラインヘディングをセンサーチェーンに加えました。これにより、ボード上の部品をESDダメージから保護できます。

Mod配線の数々

CREボードの初期作成は(ほぼ)成功しました。5-12V昇圧コンバーター、12-5V&3.3V降圧コンバーター並びにレギュレータは電源が動作し正しい電圧出力が得られました。

しかし、I2Cドライバをテストしてみたところ、バスの両端がプルアップされているもののI2Cバススキャンを実行してもデータがケーブルに伝送されないという問題が発生しました。

CRE-A側でオシロスコープを使ってプロービングを行ったところ、PCA9615の出力がバイアス抵抗分割器によって設定された電圧レベルの部分で行き詰っていることが分かりました。そこで回路図を再度チェックし、すべてが正しく接続されていることを確認したところ、あることに気づきました。

私たちはSDAラインのプラスとマイナスの出力を取り違えて、バイアスネットワークの間違った側に送ってしまっていたのです。これがチップの動作を完全に停止させてしまったようです。SCLでさえも、入力にクロックがあるとトグルしません。このエラーはCRE-AとCRE-Bの両方のボードで発生したので、両方のボードに修正が必要になりました。

Wire modifications made to the boards

研磨ガラス繊維ペンシル(ファイバーグラスペンシル)が無かったので、メス(スカルペルナイフ)の刃の裏側を使ってソルダーレジストを削り取り、銅の配線が剝き出しになるようにしました。そして適当なところで銅線に切れ目を入れて切断しました。

フラックスとハンダをたっぷり塗ってすずメッキを施し、配線用ペンシルのマグネット線2本をすずメッキを施した配線にはんだ付けして、ボードの正しい位置にジャンプさせました。

その後、イーサネットケーブルで両ボードを接続して電源を入れ直したところ、両ボード間でI2Cデータの受け渡しが正常に行われました。その後、正しい回路図とプリント基板レイアウトを再作成してGitHubに公開(プッシュ)しました。

仕上げに

CREボードセットにより、センサーを本体から少なくとも100m離れた場所に設置することで、リモートエンドに対して昇圧・安定な電源と堅牢な差動通信を供給できるため、ESDK向けのあらゆる種類のユースケースを実現可能にします。例としては、既存のCREボードと防水・防塵を施した野外筐体を使用して、野外の大気質のセンシングを可能にします。

CREボードのデザインファイルはGitHubで公開しています。興味のある方はぜひ作成して、ESDKのセンサー技術の幅を広げてみてください!

Engineer of mechanical and electronic things by day, and a designer of rather amusing, rather terrible electric "vehicles" by night.