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DC/DCコンバータの測定から始める電源設計

車を愛する人は、愛車のスペックデータに敏感

殆どのドライバーは、愛車の燃費がメーカー公表値より伸びていなと「騙された!」と感じることでしょう。しかし、この場合「騙す」は適切な表現なのでしょうか?メーカーがだましたというよりも、メーカーの試験環境が実際の消費者の運転環境とは大きく異っているという方が正しいと思います。

車に何も載せずに決められたテストコースを走るだけなら、定員の家族4人を乗せて近くの山道を走るより燃費がよくなるのは、誰が見ても明らかです。

車のスペックだけでなく電源回路にもこういった問題が生じます。電源の場合、何がそのスペックに影響を与えるのでしょうか?AC/DC電源やDC/DCコンバータが回路に組み込まれている場合は考慮すべきことがあるのでしょうか?

        

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: Traco Power製品シリーズのさまざまなDC/DCモジュール

要件の分析

例えば ポルシェ911はすばらしい車ですが、南米熱帯雨林の旅に向いていません。ポルシェよりもっと安価な 4輪駆動のジープの方が適しています。このように、それがどのように使われるのかを明確にすることが重要です。

  • 電位を分割する必要はありますか?
  • 入力電圧範囲及び出力電圧範囲はどれくらいですか?どの出力電流に何が必要ですか?
  • どのくらいのスペースを確保できるのか?たとえば、周辺の部品に影響しないか?
  • どの規制に従う必要がありますか?(産業、鉄道、医療など)
  • 最終製品は何ですか?
  • その製品の使用環境の条件はどのようなものですか?
  • 回路全体と用途に求められる信頼性はどれくらいですか?

これらがクリアになったら、次に以下のことを考えます。

  • 正しく測定し、誤差をなくすには、どうすればよいですか?
  • リップルとノイズにどう対処しますか?
  • 突入電流が生じるとどうなりますか?
  • 電磁両立性(EMC)に関して、何を知っておく必要がありますか?

 

スイスの電源部品メーカー Traco Powerの製品ラインナップには、超低リップル/ノイズのTVNシリーズ、医療用途で認定されているTHMシリーズ、絶縁電圧3,000VDCの鉄道用途で承認されているオープンフレームタイプ又はTMR-WIRシリーズなど、25以上の3ワットDC/DCコンバータシリーズがあり、たくさんの選択肢があります。

これから電源設計を行う方は、あらゆる要件を全て満たすようなコンバータや、そのまますぐに使えるソリューションを好むでしょう。しかし、電源設計の現実はもう少しお金と手間を使う必要があります。要件を満たすための複数のコンバータ、あるいは必要な価値を実現するための追加の配線が必要だからです。

最初のステップは、必要な測定値を判断することです。シンプルな測定では、大まかな評価(コンバータ/負荷の入出力電圧/電流、可能性のある効率変動など)を簡単に実行できます。

測定誤差をなくす

「シンプルな測定」の場合でも4線式測定が望ましいと言えます。独立したテストリードを使用した電流と電圧の測定では、リード固有の抵抗は値にあまり影響しません。  

また、最終的な用途について考えることも重要です。

たとえば、手術室では、電源と実負荷の間のワイヤが30mになる場合があります。必要な負荷が24Vの場合、ワイヤ内の電圧損失を相殺するために、ソースはより高い出力電圧を必要とします。

つまり、負荷とソースの両方を測定する必要があります。以下の図で、ソースでの典型的な4線式電圧測定の例を確認してください。

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: ソースと負荷がある、4線式測定の回路図

リップルとノイズの確立と影響

リップルとノイズを測定するのはなぜでしょうか?

用途に関係なく、実際にDC/DCコンバータを使用すると(ブリッジの測定など)、リップルとノイズが発生します。そのため、結果としてリップルとノイズを個別に考慮及び評価する必要があります。

リップルとノイズとは何ですか?どうすれば明確に測定できるでしょうか?

AC/DC回路とDC/DC回路におけるリップルとは、内部回路で生じる不規則な変動です。一方、ノイズは、スイッチング周波数でのパルス変換によって生成される、定期的に戻るピークを意味します。

実際の値を判断するには、プローブヘッドをピンに直接接触させ、接地リングと測定チップもピンに接触させる必要があります(下図参照)。結果をメーカーのデータと比較するには、オシロスコープの帯域幅を、研究室で一般的に使われている値の20MHzに制限します。

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: DC/DCコンバータのピンへの測定チップの正しい取り付け

通常、ノイズとリップルは、2つの並列スイッチコンデンサ(100nFの金属皮膜コンデンサと10µFの電解コンデンサなど)を使って簡単に低減できます。ただし、データシートの値は、最終的な使用時には他の要因の影響を受ける可能性があることを常に念頭に置いてください。

突入電流への対処

この情報は、上流の部品を正しい寸法にするのに重要です。

  • 電流は基本的にスイッチング速度によって決まるため、研究室では水銀スイッチを使うことが理想的です。
  • ソースの内部抵抗は、できる限り低くする必要があります。
  • 電流は、消磁されたチップを使って測定します。

周囲温度も突入電流に大きな影響を及ぼします。たとえば、電解コンデンサの使用は温度に大きく依存します。

以下の図は、LEDライトの突入電圧の例を示しています(黄色の線)。また、紫色でライトの電圧パターンも示しています。マークされているところ(オレンジ色の「T」)でデバイスがスイッチングされたことがよくわかります。約10Aの最大値に到達した後、10msで300mAに戻っています。

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: 非アクティブ状態のDC/DCコンバータの突入電圧(温度 = 室温25°C)

突入電圧が回路に及ぼす影響が問題となっている場合、サーミスタ(NTC)が有効です。

電磁両立性

一般的な用途の場合、EMC(電磁両立性)を確立することも重要です。内部フィルタを装備したDC/DCコンバータを使用しても、自動的にその用途で指定された値が守られるとは限りません。たいてい、EMCはさまざまな部品の影響を受けるからです。

多くの場合、安全上の理由から出力電圧を保護アースに接続する必要があります。これがEMCに大きな影響を及ぼします。通常、電源メーカーはEMC値を守る方法について助言しています。

ほとんどの電源メーカーは、Webサイトで適切なフィルタを提案するという形でサポートしています。たとえばwww.tracopower.comでは、こうした情報を関連デバイスのページから直接ダウンロードできます。選択した製品の回路図が見つからない場合は、ためらわずに電話かメールでメーカーに直接問い合わせましょう。

まとめ

結論として、メーカーが提供するドキュメント類やサポート情報を利活用すれば、電源周りの設計さほど大きな労力をかける必要はありません。いきなり部品の評価や選択をする前に要件を明確にすることが重要です。「不可欠なもの」と「欲しいもの」を明確に区別する必要があります。

冒頭の自動車の話でも言えることですが、計測が正しさや外部要因の影響を十二分に考えることが重要です。一般的に計測条件等は回路作成時に決定されますが、それがはたして実運用上の環境に回路が適合しているものでしょうか?

市場で入手可能な適切なデバイスがない場合、シリーズ製品、並列スイッチング、フィルタを活用することで、目的とする結果が生まれるかもしれません。

EMC要件を満たせるかどうかは、リップル・ノイズ・突入電流と同様、用途の分野と必須条件によって変わります。

多くのメーカーが存在することは周知の事実です。製品の価格だけでなく品質も大きく異なる場合があります。

シンプルなノーブランドの大量生産デバイスを選択すれば十分ですか?それとも、節約しようとして後悔しますか?常にハイエンドな製品を使う必要はありますか?

どのような提案があっても最終的に決めるのはお客様ですが、Traco Powerには、ドイツ語だけでなく多言語でサポートを提供するという、ヨーロッパのメーカーならではの利点があります。

ここをクリックすると、RSで入手可能なTraco Power DC/DCコンバータの製品をすべて見ることができます。

 

Innovative product and technology marketeer, enthusiastic writer and translator, and author of the ultimately underwhelming blog "Oneday711": technology, travel, sport. Particularly interested in the impact innovation has on our lives - good and bad.
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