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オフグリッドキャンピングカープロジェクトの一環として、本記事では雨水集水装置の製作工程を紹介しよう。
はじめに
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は今月、最新の環境評価報告書を提出した。これは我々が今世紀目にするであろう最も重要な文書と言ってもよく、ここイギリスのグラスゴーで開催されるCOP26での話し合いにも大きな影響を与えると見られている。
報告書では数千の査読付き論文を綿密な政府間監査の元に検証して気候変動の詳細などについて述べている。これによれば地球温暖化の根本原因は、今更驚くまでもないかもしれないが、やはり化石燃料の過剰な使用だ。
過去、私は気候変動に関して我々の直面する問題や今我々の持っている解決策について長々と書き連ねてきた。しかし環境問題をめぐる状況には一向に大きな変化はなく、問題が解決されることはない。私はただ問題について議論しているだけでは何も進まないことに気付いてしまったのである。
そこで私はオフグリッドキャンピングカープロジェクト(仮称)というものを始めた。このプロジェクトではこれまでに太陽光、風力などの再生可能エネルギー発電と交通手段のテーマで技術開発を行ってきている。プロジェクトでは身近に利用できる技術で低炭素なライフスタイルの実現へ歩を進めてきた。
IPCCの報告書のことを考えれば、このような技術の実現はさらに加速しまた普及させていかなければならない。どれだけ私が個人の範囲でこれらの技術を用いて問題解決に努めても、持続可能なインフラの整備や政府の環境改善政策が遅い以上あまり意味がないのである。そこでこのように外部へ公開することで、読者の一人一人に問題への関心を持ってもらい、行動する人を増やしていくことが私の目的だ。
この記事ではその一環として、低炭素技術を駆使したスマートで自給自足可能な遠隔居住環境の実現に向け、雨水集水装置の実現可能性を探ってみたいと思う。
集水装置の開発
ろ過装置も何も通さず、自然そのままで十分にきれいな水というのをいわゆる先進国で得ることは難しい。その理由は人間が今まで大した考えもなく汚染物質を流してきたからだ。
発生源は工場や農園からの流出、下水処理での放出などで、含まれているものはといえば化学物質、重金属やマイクロプラスチックなどだ。これらの物質の多くは毒性を持っていたり、あるいは細菌や藻類を増殖させてしまう。集水装置を作るのには、雨水が地面に落ちてこうした物質に汚染される前に貯水するという意義もある。
ただし、その雨水すらも必ずしもきれいなものではないということには注意が必要だ。雨はその土地の大気中に含まれる炭素、窒素酸化物、その他微粒子などによって汚染を受けるため、対策が必要になる。もっとも、この雨水集水装置について言えばキャンピングカーに載せるという前提がある。汚染度が高い地域は避けて移動するという手段も考えられるだろう。いずれにせよ後々の段階でそうした汚染物質はフィルタで取り除けるようになる。
DesignSpark Mechanicalによる装置のモデリング
では、いよいよオフグリッドキャンピングカーに載せる雨水集水装置の設計に移ろう。集水には一般家庭で使われるような市販品の雨どいを利用する。そして設置には、以前ソーラーパネルを取り付けるために製作したルーフラックをそのまま使う。このときソーラーパネル表面に落ちた雨滴も装置に集まる形にすれば、さらに多い集水力を期待できる。
DesignSpark Mechanicalを使用して、屋根に取り付ける雨どいの外形をモデリングする。雨どいの長さはおおよそキャンピングカーの横幅に揃えた。それから雨どいの端につける樋止めをモデリングする。これは樋の中の水を保持するものであると同時に、ここでは繋いだゴム管から集めた水をタンクに送れるようにするものでもある。
3Dプリンタで出力したケーブルグランド付きの樋止め
30mmの平鋼1本を構造の補強として使用し、また2本を使ってルーフラックにまっすぐ雨どいを乗せるための平たい支えを作る。そして3Dプリンタで出力した樋止めと金属固定具を利用して、雨どいを平鋼に対してぴったりと固定する。最後に、樋のあらゆる溝や穴部分をシーリング材Sikalex522で閉じる。このシーリング材はキャンピングカーでの使用に特化して造られたものだ。
組み立てた雨水集水装置
パーツリスト
- 半円型の雨どい
- 3Dプリント用フィラメント
- M8 ねじ
- M8 ペニーワッシャ
- M8 チャンネルナット
- ゴムホース
- M25 ケーブルグランド
- Sikaflex 522 シーリング材
設置とテスト
集水装置の組み立てが完了したら、いよいよキャンピングカーに取り付けてその性能を試すことができる。装置を車に乗せ、M8ねじ2本とペニーワッシャ・チャンネルナットで固定した。
完成した装置をルーフラックのレール上に固定
装置のケーブルグランドにホースの片側を取り付け、ホースのもう一方の側は必要に応じて貯水タンクの注水口に取り付ける。使っていないときはホースをソーラーパネルの下に収めておくか、もしくは完全に外して車内にしまっておくことができる。
ホースの水で雨を模擬
貯水タンクに注水口から注水
装置をテストしてみよう。水道に繋いたホースから雨どいに水を流し、降雨を模擬する。すぐに雨どいからタンクへ水が滴り落ちてくる音が聴こえるだろう。バルブを開いて水が出てくるかどうかを見れば、正しく動作しているかを確かめることができる。
バケツを用いた雨水集水装置のテスト
出てくる水をバケツで受ければ水が貯まるスピードを確認することもできる。バケツに水が貯まっていくのを眺めるのはとてもワクワクする作業で、装置全体が問題なく動いているのを見るのはまさに報われるような思いだった。実環境でのテストも早くやりたくて仕方がない。特にイギリスの気候だと定期的に降雨があるので、このようなオフグリッド給水システムにとっては都合が良いはずだ。
次の記事では家庭用浄水器を使用した不純物の除去や、オフグリッドで得た電力を利用した初歩的なポンプ給水システムを検討する。