こちらの記事について、内容・翻訳・視点・長さなど、皆様のご意見をお送りください。今後の記事製作の参考にしたいと思います。
Thank you! Your feedback has been received.
There was a problem submitting your feedback, please try again later.
こちらの記事の感想をお聞かせください。
はじめに
皆さんは論理回路図を作成したことはありますか?論理回路は実体のある回路とは異なるため、通常の回路CADでの描画が難しい場合があります。しかし DesignSpark PCB(以下DSPCB)では通常の回路と同じように、論理回路図を作成することができます。さらに、その論理回路図データをレポート挿入用用に出力する方法も併せてご紹介します。(本記事では論理回路の作成にフォーカスを当てております。通常の電子回路図の作成についてはこちらの記事を参照ください。)
回路CADでできないなら、パワーポイントやエクセルで回路図を描こうと思うかもしれません。しかし論理ゲートは特に曲線を使っているのでそれらのソフトで所望の曲線を正しく描画することは、とても面倒で時間が掛かります。ですが、DSPCBならその作業は必要ありません。
今回は特にこの論理回路図の作成方法を紹介します。さらに、今までCADをあまり触ったことが無い人のために、DSPCBのインストールから特殊な操作をせずに、この記事にあるファイルをダウンロードして書き込むだけですぐに使えるような操作方法を説明します。
論理回路、論理ゲートとは?
まずは、今回話題にしている論理記号、及びそれらを使った回路について説明します。
論理記号とは以下のような記号の事を指します。
図1:記述タイプ別論理記号(出展:IBM、A visual of the schematic symbols and truth tables of typical logic gates)
論理回路とはHighかLow(1か0)のデジタル信号を入力として、その出力とする論理素子(論理ゲート)を配線で結んだものです。この回路で多種多様な論理演算や情報を記憶する回路を構成することができます。
論理ゲートとは論理回路の中の論理素子の事を指しています。複雑な動作を行う論理回路は論理ゲートを組み合わせることで構成しています。
以下に論理ゲートを紹介します。それぞれにはDSPCBで実際に扱う論理ゲート図と真理値表を載せています。
・NOTゲート(否定演算)
入力を反転したものが出力になる
入力 | 0 | 1 |
出力 | 1 | 0 |
・ORゲート(論理和演算)
2つの入力のいずれか、または両方が1の時、出力が1になる
入力1 | 0 | 0 | 1 | 1 |
入力2 | 0 | 1 | 0 | 1 |
出力 | 0 | 1 | 1 | 1 |
・ANDゲート(論理積演算)
2つの入力の両方が1の時のみ出力が1となる
入力1 | 0 | 0 | 1 | 1 |
入力2 | 0 | 1 | 0 | 1 |
出力 | 0 | 0 | 0 | 1 |
・NORゲート(否定的論理和)
2つの入力が0の時のみ出力が1となる(ORの否定と同値)
入力1 | 0 | 0 | 1 | 1 |
入力2 | 0 | 1 | 0 | 1 |
出力 | 1 | 0 | 0 | 0 |
・NANDゲート(否定論理積)
2つの入力が1の時のみ出力が0となる(ANDの否定と同値)
入力1 | 0 | 0 | 1 | 1 |
入力2 | 0 | 1 | 0 | 1 |
出力 | 1 | 1 | 1 | 0 |
・XORゲート(排他的論理和)
2つの入力の片方のみが1であるときのみ出力が1となり、両方の値が同じ場合には0となる。
入力1 | 0 | 0 | 1 | 1 |
入力2 | 0 | 1 | 0 | 1 |
出力 | 0 | 1 | 1 | 0 |
論理記号使用準備
では、実際にDSPCBで論理回路図を描いていきましょう。
本章では使う前の準備を行います。基本的に難しい操作はしません(ライブラリ作成等)。この記事の最後(最下部)にある添付ファイルを使って簡単にセットアップしていきます。
1.ファイルダウンロード&展開
では、本記事の最下部にあるGate.zipファイルをダウンロードしてください。ダウンロードしたファイルを任意のフォルダに展開してください。
展開先にファイルがあることが確認できればOKです。
2.DSPCBでファイル有効化
では、DSPCBで今ダウンロードしたファイルを有効化します。DSPCBを開いて、上にあるライブラリマネージャー(本のマーク)をクリックします。
すると、ウインドウが開きますのでFoldersタブを開きます。
右上にあるAdd...ボタンをクリックして、先ほど展開したファイルを選択します。
Library Folderウインドウに戻りますのでOKを押してください。
正しく選択できていると、Library Managerでは下のように追加したファイルのディレクトリが表示されているはずです。追加が確認出来たら、適用ボタンを押してCloseでLibrary Managerウインドウを閉じましょう。
これで準備完了です。
論理回路作成
では、いよいよ論理回路作成に取り掛かりましょう!
1.回路図モード&必要な記号を探す
DSPCBの初期画面にして、左上の白紙アイコンをクリックします。
すると、このようなウインドウが出てきますので、以下のように Schematic Designの選択、Use Technology Fileにチェック、ドロップダウンリストからDefault(White) を選択してOKを押してください。
すると、以下のように回路図が描ける状態になります。
では、回路図を描いていきましょう!画面右側にあるインタラクションバーの下側に「Component Bin」「Goto」「Add Components」の3つのタブに注目してください。この内の右側のAdd Componentsを選択してください。(注意:インタラクションバーが表示されていない場合は Menuバーの View > Interaction Bar(インタラクションバー) で表示できます。もしくはショートカットキー F9でも表示できます。)
ここから記号を回路図に置くことができます。
次にインタラクションバーの上側からライブラリを選択します。今回は先ほど追加した「gate」のライブラリを使います。インタラクションバーの一番上のAdd Componentの文字の下にあるドロップダウンリストからgateを選択します。
選択すると、いくつかのコンポーネントが表示されます。
2.配置&配線
次に、記号を回路図に配置してその記号同士を配線していきましょう。
記号を置くには、先ほどのインタラクションバーの状態で、必要な部品をクリックして、その下にある記号をドラッグするだけです。
今回は下のように置いてみました。
では、配線していきましょう。各部品の×のところをダブルクリックすると配線モードになり、配線することができます。
今回は下のように配線してみました。また、部品配置は配線に合わせて微調整できます。下図でも配線をきれいに見せるため、初期の配置状態から調整しています。
3.文字を入れる
では次に端子の名前・役割を示す文字を入れていきましょう。
今、上記の回路では左側(入力)の端子3つ、右側(出力)の端子2つがあります。これらの端子に名前を付けていきます。
名前を付ける方法はいくつかありますが、今回は「Add Text」ツールを使っていきます。
左側のバーにある「A」のアイコンをクリックしてください。すると下のようなウインドウが出てきます。
一番上の空欄にテキストを入れることでその文字を回路図上に表すことができます。今回は「入力1」と入れてみました。その他の項目は変更せずにOKをクリックします。
すると上のように文字化けしたものが出てきます。この文字化けはフォントが正常に指定されていないため起きています。これを解消するために文字を選択して、右クリック - Propertiesを選択します。
ウインドウが出てきますので、Fontの項目のドロップダウンメニューを開いて@がついていない日本語フォントを選択してください(下のほうにあります)。
注意:@がついた日本語フォントは縦書き用になってしまいます。
またここでは、文字に下線を付けたり(Underlineチェックボックス)、テキストサイズ(Size)なども変更することができます。
今回は下のように選択しました。適用を押すと、Propertiesウインドウを閉じずに設定を反映できます。
これをいくつか設定して回路図を構成しました。※下図のテキストはsize項目を100に設定しました
4.整える
一応、回路図は完成です。しかし、出力の2端子が赤い線になってしまっています。この赤い線は配線がどこにも繋がっていないことを表しています。今回はこのエラー表示は不必要ですので非表示にします。上のバーのView - Colorsを選択してください。
そして下のようにunfinished connectionの項目のチェックボックスのチェックを外してください。もし、その下のShow All Unfinished Connectionsにもチェックが入っている場合はこちらも外してください。
チェックを外せたらOKをクリックしてください。
すると上図のように、すべて正常に描画することができました。
画像データへ出力
では描いた回路図をレポートに貼り付けて行きましょう。今回は代表的なソフトウェアとしてWordを使用します。まずは作図した回路図を全画面表示します。ショートカットキーのAを押します(押せない場合はView > All)。
注意:回路図に移っている画面が”そのまま”出力されます。つまり回路図が小さく映っている状態で出力作業をすると小さい回路図が出力されてしまいます。
回路図を正常な大きさにしたらFile > ExportにあるBitmap ImageとMetafile Imageのどちらかを選択します。この二つの違いは以下のようになっています。
- Bitmap Image : 回路図をドットベースの画像データで出力します。よく使われる画像形式ですが、曲線のある回路図の場合、曲線がゴツゴツと荒くなります。
- Metafile Image : 回路図をベクター画像で出力します。数式ベースなので曲線がなめらかで文字も解像度が保たれたまま拡大することができます。
今回は曲線なめらかなMetafile Image(*.emf)で出力します。
保存先を指定しファイル名を付けて保存してください。下記のように拡張子が.emfで出力されます。
レポートに張り付け
では最後にレポートに張り付けていきましょう。Wordなどを開いて先ほど出力した.emfのファイルをドラッグ&ドロップしてください。
上記画像のようにワードに添付できました!通常の画像ファイルと扱いは一緒です。拡大してもゴツゴツカクカクしません。
補足情報
今回使用した論理記号は「アメリカ形式」です。この他にもヨーロッパ形式があります。ヨーロッパ形式を使いたい場合は、インタラクションバーのライブラリ選択欄で、「ltspice」を選択してその中のANDやOR記号をご使用ください。
まとめ
今回は論理回路の描画方法と、出力及びレポートの貼り付けまでを説明しました。少し面倒に見えるかもしれませんが、やってみると簡単でエクセルで右往左往するよりもはるかに短時間で論理回路図を描けます。
単純作業を時短し、レポート内容の本質のブラッシュアップに時間を使いましょう。