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深紫外線(UV-C)殺菌に有効な蛍光灯を制御 Infineon製評価ボード「 EVALICB2FL03GTOBO1」

インフィニオン社の新紫外線(UV-C)殺菌灯の駆動に適したICソリューションを提供しています。

Image showing the Infineon ICB2FL03G chip

はじめに

今回は蛍光管(蛍光灯)技術とその仕組み、始動と駆動方法について解説します。その後、蛍光管技術のソリューションとして有効であるスマートバラストコントローラIC「ICB2FL03G」を搭載したインフィニオン社製の評価ボード「EVALICB2FL03GTOBO1」をご紹介します。

蛍光灯の駆動について

蛍光灯は始動前にフィラメントの予熱が必要であることや、点火後は負性抵抗を持つという固有の特性、寿命自体も比較的短い、故障モードが複雑になるなど、制御が難しいです。蛍光灯を長持ちさせるためには、コントローラがランプがフィラメントの寿命を延ばすように制御して、動作させる必要があります。そして、整流効果などランプの寿命を示す様々なパラメータ・動作状態を注意深く監視・制御する必要があります。

蛍光灯は一度アーク放電が始まると負極性になり負性抵抗が発生するため、安定器(バラスト)が必要になります。バラストを使用しない場合にはランプの設計電流をはるかに超える大電流が流れるため、ランプが急速に自己破壊してしまいます。

ballast is required to drive a fluorescent lamp

このことから、蛍光管に流れる電流を制御するためのバラストが重要になります。一般的には受電する交流電源に直列に大きなインダクタを接続し、そのインダクタンスで電流を制限していました。その為、バラストの各パラメータは蛍光管の有効電力(ワット)に加えて交流電源によって異なってしまうという事です。

最新の設備では電流の流れを安定させるために制御回路に依存する電子安定器(電子バラスト)が使われることが多いです。また、電子安定器は磁気安定器と比べて効率も高いです。

蛍光灯にも、アーク放電を管内全体に”打ち放つ”ための始動回路が必要になります。従来は“グロースイッチスタータ”と呼ばれるサーマルスタータ(バイメタリックスイッチとグロー放電管を使用したもの)を用いて蛍光灯のフィラメントを暖め、その後スタータの接点が開いたときに高電圧パルスを発生させる方法がとられていました。発生した高電圧パルスはアーク放電を発生させるのに十分になります。この時、蛍光管に流れる電流は安定器により制限されます。

時折、蛍光管のフィラメントが十分に加熱されずに始動サイクルを繰り返してしまう場合があります。寿命に達した蛍光管であると、この繰り返しをフィラメントが焼損するまで、またはスタータ接点が焼損するまで続けられてしまい危険です。

一般的にほとんどの照明器具はプラグインスタータと互換性のある電子スタータを使用しているか、照明器具自体が電子安定器に統合されています。電子安定器には過負荷保護、整流効果によるEOL検出、予熱をスキップした状態での再起動、点灯維持失敗時の自動再起動などの機能が備わっています、これらは蛍光灯の保護と寿命延長に効果的です。

ハードウェア

評価ボード

今回紹介する「EVALICB2FL03GTOBO1評価ボード (222-6958) 」 には、UV-C殺菌灯もサポートするスマートバラストコントローラを内蔵した Infineon製マイコン「ICB2FL03G」を搭載しています。評価ボードには力率補正用インダクタやランプ駆動用昇圧コンバータなど、UV-Cランプを駆動するための部品群も搭載されています。

Circuit diagram showing main features

この「ICB2FL03G」マイコンには高力率を実現できるPFCが搭載されています。力率が高いという事は、電力供給会社が大型のオフィスビルなど大口需要家に対して力率低下のペナルティを課すことがあるため、大規模なエネルギー供給を行う消費者にとっては重要視する部分です。またコントローラ内にソフトスイッチングを実装することで回路から発生するEMIを最小限に抑え、同時に90%以上の効率を実現しています。

コントローラは複数ランプの連続接続にも対応し、電圧制御か電流制御を選ぶことができます。電圧制御では複数の異なるランプタイプを同時に制御することができます。電流制御では部品点数削減ができ、BoMコストを削減できます。

The ICB2FL03G chip featured on the EVALICB2FL03GTOBO1 evaluation board

もう一つの「ICB2FL03G」マイコンの特徴として、ランプを高周波(評価ボードでは45kHz)で駆動することで、ランプの動作効率を高めています。このため、一般的なインダクティブバラストよりもランプの動作効率が向上します。

リファレンスデザイン仕様

コントローラの高集積化により抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの最小限の受動素子とインダクタ、MOSFET3個でバラスト回路を構成でき、BoMの部品点数を最小限に抑えられています。チップの各種動作パラメータには動作周波数、予熱時間及び予熱周波数などがあり、これらは全て抵抗器により設定されるため、複雑な外部回路は必要ありません。

このボードは180-270VACの入力電圧を257mAの入力電流で受け取ります。54Wのランプを接続するように設計されていますが、55Wのランプで動作させることも可能です。

PFCフロントエンドのおかげでAC入力に提示される全高調波歪みは4%未満、力率は通常の運転条件において0.99以上、効率は90%を超えます。

ボードオペレーション

バラストボードの起動には蛍光管が点灯して正常に動作するまでに複数のステップがあり、そのすべてを制御ICが注意深く管理しています。

最初のステップはコントローラを「UVLO」状態から脱却させることです。AC入力が印加され、コントローラ入力の電源電圧が10.6Vまで達したときに脱却させることができます。この時点で内部電源が作動しフィラメント検出が開始されます。

フィラメント検出はランプがソケットに装着されているか、始動に適した状態であるかを確認します。もし検出器が無く、フィラメントが切れている場合にはランプを始動できません、さらに存在しないランプを始動しようとするとはランプソケットの接点がむき出しになり、高電圧ショックが発生する可能性があります。
ランプフィラメント検出が正常に完了すると、今度はランプを駆動するためのPFC回路とインバータ回路の起動に移ります。

インバータとPFCの起動時には、高電圧バスが通常範囲の12.5%から105%の間にあることを確認します。この条件が満たされたらインバータはDCバス電圧を公称電圧まで引き上げるために運転を開始します。引き上げ値が公称値の95%に達するとPFCセクションが作動をはじめ、AC電源からのクリーンな電流消費を確保できます。

その後、ソフトスタートに入り穏やかに蛍光管を始動させます。この時、ランプのフィラメントには大電流が流れ、ランプ全体に低電圧がかかります。コントローラはインバータのスイッチング周波数を予熱周波数に向かって下げていきます。予熱周波数に達すると、外部抵抗器“PATH”によって設定された周期で終了するタイムアウトが開始されます。

Graphs showing the soft start of the tube

タイマーが終了すると、コントローラは点火フェーズに移行します。インバータ周波数は再び、設定された予熱周波数から動作周波数に向かって下がり始めます。このプロセスのある時点で、ランプ全体に発生する電圧はアーク放電を発生させるのに十分な大きさになります。この時、コントローラは実行前段階(プレランフェーズ)に移行しますが、このフェーズではランプの状態が安定しないため、IC内の制御系が誤動作する可能性があります。これにより、このフェーズは短時間で終了します。

このプレランフェーズではランプが消灯、点火不良を起こした場合に再点火するためのコントローラのイグニッションレギュレータがまだ動作している状態です。一方で、ランプの安定化に必要なコントローラの全ての保護機能が動作しているわけではありません。このフェーズが完了すると、コントローラは実行モード(ランモード)に移行し、すべてのランプ保護機能が有効になります。

この時点でランプは正常に動作し、ランプを消灯したり故障状態が発生しない限りコントローラはこのフェーズを維持します。

ランプ・バラストの保護機能

ICB2FL03Gにはサージ保護、インバータとPFC過電流、バス過電圧と電圧不足保護、4種のランプEOL検出、容量性負荷検出及び非常検出を含む、多くの不具合検出モードが搭載されています。

Graphs showing protection detection modes of the ICB2FL03G

サージ検出は、有害なAC電源のサージからランプと制御回路を保護することを目的としています。これはDCバス過電圧とインバータの過電流を監視することによって行われます。サージ現象が発生すると、ランプは消灯してその後、再始動(予熱時間を含む)し、バラスト回路内のMOSFETデバイスとランプ本体を保護します。

Graphs showing inverter overcurrent protection

インバータ過電流は過電流によるダメージからバラストを保護することを目的としています。過電流が検出されると40秒間のタイマーが動いてコントローラが再起動し、ランプが再点灯します。この間に2回目の過電流が検出されると、コントローラが障害をラッチします。リセットするにはランプの再挿入かAC電源の再投入が必要になります。

PFC過電流はPFCステージを過負荷から保護しており、インダクタ過電流が発生してもバラストの動作に影響を与えない方法で実装されています。この回路構成によりPFC MOSFETをサイクル毎にオフしてもランプの動作は停止しないため、動作障害とはみなされません。

Graphs showing effect of bus overvoltage caused by PFC start-up

バス過電圧はPFCの起動により発生して公称バス電圧の109%までのわずかな超過が許容されます。バス過電圧が起こった場合、バス電圧が公称値の105%に低下するまでPFCゲートドライブはオフとなり、バス電圧の低下が625ミリ秒以内に終わることができれば、コントローラはゲートドライブを再起動して処理を続行します。バス電圧が所定時間内に低下しなかった場合にはコントローラは保護のため電源をオフにします。

Graph showing bus undervoltage

バスの電圧不足は、VDE0108規格に準拠するために導入されている非常検出モードと連動しています。これは短時間の入力電圧の遮断であれば、ランプの点灯が即座に復帰することを規定したものです。コントローラではバス電圧が一定値以上であれば短時間の入力電圧の遮断後、予熱サイクルを経ることなくランプを再点灯させることができ、点灯までの時間が短縮されます。

ランプ寿命の検出はランプの過電流状態である「EOL1」をチェックすることで実施され、ランプ寿命の終わりをユーザーに知らせ、同時にランプを消灯します。蛍光管は「整流効果」(コントローラのアプリケーションノートでは「EOL2」と呼ばれています)という現象を示すことがあります。これはランプがAC電流を整流することにより、ランプや器具の損傷に繋がる可能性のあるカソードに熱を蓄える現象です。最後に、残り2つのEOLモードは「スイッチング整流効果」と「ハード整流効果」で、どちらもコントローラ内ではEOL1状態として認知されます。Littelfuse社では整流器効果とは何か、またその現象によりどのような影響を与えるかについて詳しく説明したアプリケーションノートを用意しています、ぜひご覧ください。

容量性モード検出は主にランプが電流モードの予熱で動作している場合に使用されます。ランプを取り外した(またはカソードが破壊した)場合にスナバコンデンサがMOSFETによって直接充放電され、損傷の原因となります。過電流状態が容量性モード検出で検出された場合、回路を損傷から保護するためにコントローラがオフになります。これはバラストの動作周波数がランプを駆動する無負荷共振回路の共振周波数より低い設計でのみ起こりえます。

回路設計

回路設計において、インフィニオン社は、このICB2FL03Gマイコンでバラスト設計する際のノウハウをまとめた詳細なアプリケーションノートと付属のスプレッドシートを公開しています。また、アプリケーションノートではコントローラの動作モードと動作理論についても詳しく説明しています。

まとめ

今回は蛍光管と蛍光灯の仕組みや駆動方法を取り上げ、最後にインフィニオン社製のUV-Cスマートバラストコントローラ内蔵ICB2FL03Gマイコンの評価ボード 「EVALICB2FL03GTOBO1」についてご紹介しました。

インフィニオン社製のICB2FL03Gマイコンはインテリジェントな予熱、高周波インバータによる稼働時の高効率化、低EMIエミッション、良好なAC電源力率を確保するためのAC PFCステージ、各種ランプ不具合検出モード、非常照明のためのVDE0108規格への準拠など、紫外線C殺菌ランプを管理する機能がフル装備されています。

また、インフィニオン社はカスタムバラスト設計の市場投入を迅速に進めるため、付属ドキュメント付きのリファレンスボードを提供し、部品選択プロセスについて詳しく説明し、設計プロセスの簡素化を実現しました。

Engineer of mechanical and electronic things by day, and a designer of rather amusing, rather terrible electric "vehicles" by night.