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#4 How do I know you're not a robot?
「ロボット」の生まれ故郷
「ロボット」という言葉は、Karel Čapekの戯曲『R.U.R. (ロッサム万能ロボット会社)』で初めて使われ、現代では一般の語彙として定着している。この言葉は、強制労働を表す「robota」というチェコ語に由来している。ロボットに最先端の機能をつぎつぎと搭載している現代においても、この言葉はロボットというものの役割をかなり正確に表していると言えるだろう。
またこの戯曲では、ロボットが人間にとって代わり、人間を不要にするのではないかという恐れも描かれている。
まず、「ロボット」とは何だろうか?
戯曲のロボットがそうであるように、多くの人は、ロボットと聞くと人間のような姿の機械を想像するだろう。そういったロボットは、レプリカントやアンドロイドと呼ばれることがある(「アンドロイド」という言葉は、ギリシャ語の「人間に似たもの」に由来する)。一方で、産業用ロボットは、Rethink RoboticsのBaxter (図1)のような人間の形にかなり似たものである場合もあれば、SCARAや直角座標ロボットのように特殊な形である場合もある。
図1. Baxter は人間のような見た目をしている。(画像ソース)
トヨタのT-HR3やホンダのASIMOなどの人型ロボットのように人間の動作や表情を模倣しようとするロボットが作られている一方で、Boston DynamicsのSpotは動物のような形のロボットであり、人間の動きとは異なる様々な動きを実現している。
それではロボットの定義とは何だろうか。提案された定義の一つに、特性によってロボットを定義しようという主張がある。こうした主張においては、ロボットは、知能・感覚・器用さ・力・自律性などの資質を備えるべきであるとされている。
British Robot Associationは、産業用ロボットを「特定の製造工程で性能を発揮するようプログラムされた動作によって、部品・ツール・特定用途の工具の操作と運搬の両方を行なうよう設計された、再プログラム可能なデバイス」と定義している。また別の団体は、固定シーケンスを実行する再プログラムできない機械もロボットであるとしている。
工場へのロボットの導入
現在、シンプルな産業用ロボットは、1万ドル未満で購入できる。コストが下がりロボットの導入が進むにつれて、作業スピードは向上し、長時間の稼働が可能となり、人為的なミスが減少する。その他多くの利点があるため、ロボットの需要はますます高まっている。
ロボットが人間から仕事を奪うと主張する人々がよく例にあげる話に、移植用の人間の臓器をドローンが初めて輸送したことで、人間のパイロットが操縦するヘリコプターがとって代わられたという話がある。しかし、少し考えてみてほしい。ヘリコプターによる輸送は高コストであり、遅延によって臓器が使用不可能になったり、輸送時に紛失したりする可能性もある。こうした問題をなくすことにより、臓器提供者も増え、移植手術の円滑化を実現できる。
従来の産業用ロボットは、重い物を持ち上げたり、精密溶接や塗料吹き付けなどの作業を引き受けたりするなどして、人間の能力を超えてスピードと精密さを向上させるというものだった。一方現在は、「コボット」と呼ばれる次世代の協働ロボットが、品質管理業務で人間と協働して作業している。
Audiが新たに刷新したブリュッセル工場では、電気自動車のe-tronが組み立てられており、コボットがチームの一員としてボディーの溶接を検査(図2)している。また、人間の検査員の手が届きにくい場所や手が届かない場所を検査する作業では、人間の仕事を脅かすことなく、製品の品質を向上させていると言える。同社では、コボットの導入により、軽度の障碍のある人間を雇用することが可能になるだろうとも述べている。コボットが作業をサポートできるからだ。
図2. コボットは、人間に不可能な作業も遂行できる(画像ソース)
こうした新たな機械の登場によりロボットはより身近な存在となったため、人間とロボットの間にあった壁は消え、人間がロボットのメリットを正しく理解できるようになった。そしてさらに重要なこととして、ロボットの限界も把握し、懸念や疑念を払拭できるようになった。
コボットの売上は伸びており、2027年には76億ドルに到達する見込みだ。これは、ロボット市場全体の約40%にのぼる。コボットは、中小企業(SME)セクターにとって特に魅力的である。自立型や卓上型のコボットは、狭い場所で使用できるほか、比較的簡単に作業の再割り当てが可能であるため、特に多品種少量生産の作業において強みを発揮できるのである。
図3. 汎用性の高いシングルアーム型のコボット。 (著作権: Universal Robots A/S)
ロボットが業界に深く根付き、広く使用されるようになりつつある現在、プログラミングをすばやく簡単に行えるようにする必要が生じている。また、専門家の知識を適切に取り入れられるようにし、ロボット専門家に多くを依存せずにすむようにする必要がある。ロボットを1台またはごく少数しか持っていないSMEには、工場のダウンタイムを最小限に抑えるプログラミング法が必要だ。
ロボットの動作やシーケンスをプログラムするためのデバイスとして、ティーチングペンダントがある。ティーチングペンダントを用いたプログラミングを行うためにはロボットを停止しなければならないというデメリットはあるが、操作が簡単であるというメリットがある。シミュレーションソフトを利用した、ロボットを停止せずプログラミングする方法もあるが、正確さと使いやすさを実現するためには高品質のシミュレーターが必要になる。
ティーチングの方法として、ロボットを手動で動かし、座標を記録させる方法もある。この方法は直観的で操作が簡単であるという点で有用だが、ダウンタイムが発生する点と、正確な座標までロボットを動かせない場合があるという点が問題である。
それでは、AI (人工知能)はどうだろうか。現在産業ロボットの大半はAIなしで開発されており、必要な作業を繰り返し実行する機能しか備えていない。
ロボットにAIを組み込むことで視覚や移動などの機能を向上させる試みがある一方で、強力な分析やパターン検出のため、AIをクラウド上に実装する場合もある。ロボット学習は、機械学習と分析手法をロボットの世界に取り込むための新たな研究分野となっています。
ロボットによる惑星探査研究
宇宙、そして最も近い惑星である火星をはじめとした他の惑星の探査ミッションも、ロボット活用の代表的な例の一つだろう。
図4. Mars 2020 は火星探査ミッションに使用される惑星探査機だ。(画像ソース)
私たちは既に、火星探査用のロボットをいくつか導入している。次の「Mars 2020」火星探査機により、環境調査のための機器・ツールが運ばれる。高性能カメラや、有機化合物を探すスペクトロメーター、環境動態アナライザーに加え、大気中の二酸化炭素から酸素を生成するMOXIE (火星酸素現地資源利用実験装置)が運搬される予定だ。
家庭用ロボット
家庭用ロボットの普及は、産業用ロボット市場に後れを取っているかもしれない。一方で、高齢化が進み在宅医療のコストが高騰する現在、病院や介護の現場におけるロボット活用には大きな余地が残されている。落とした物を拾ったり、忘れずに服薬したりといった高齢者にとって困難な作業も、自律型のモバイル高齢者ケアロボットにゆだねることができる。また、活動の提案や社会活動の補助や、自宅環境や患者のバイタルサインの監視など、さまざまな面で有用である。
以上から、ロボットが敵ではなく友人であることがおわかりいただけたと思う。
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