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【電源の安定化】
まず、最初にご紹介する対策は導電性高分子コンデンサの活用です。多くの場合、導電性高分子コンデンサを使うことで問題が解決しますのでお試し下さい。導電性高分子コンデンサとは電解質に電気を通すプラスチックを用いたコンデンサで、寄生抵抗がとても小さい(低ESR)事が特徴です。寄生抵抗が小さいと、蓄えた電力を瞬間的に放出しても大きな電圧低下が起こらない為、安定して電力の供給が出来ます。パナソニックはサイズ重視や信頼性重視などお客様のアプリケーションのニーズに合わせた導電性高分子コンデンサを取り揃えています。また、グラフを見ながら最適なコンデンサを選択できる設計支援ツール「特性ビューア」も準備しています。この導電性高分子コンデンサについてもっと詳しく知りたい方は下記のリンクをご参照ください。
【電源の瞬停止への対策】
つぎに、瞬間(マイクロ秒程度)の電源停止への対策はどうすればよいでしょうか?データを安全に保存し、CPUが正常停止するまでの時間の電力をコンデンサで維持する必要が有ります。システムの消費電力がそれほど多くない場合は、単純に電源部のコンデンサの個数を増やす、静電容量の大きいコンデンサを使うなどの対策がシンプルで信頼性の高い対策になります。しかし、消費電力が多い場合は基板面積やコストなどの制約から現実的で無い場合があります。その場合には別のアプローチとして、昇圧回路を用いてコンデンサに蓄える電力を増やす事を検討して下さい。コンデンサに蓄えられる電力は電圧の二乗に比例します。つまり、電圧を2倍にすれば、4倍の電力を蓄えることが出来ます。昇圧回路の効率を考慮すると、例えば6.3V定格のコンデンサを25V定格に置き換える事により、静電容量をおよそ15倍に増やすのと同等の効果が得られます。
それでは、昇圧回路と組み合わせて瞬停に備える使い方に適したコンデンサはどの様なコンデンサでしょうか?表1に各種コンデンサの特徴を示します。まず、フィルムコンデンサは高容量に対応していないので不適です。また、電気二重層コンデンサは高電圧に対応していないので不適です。また、アルミ電解コンデンサには電解液が徐々に気化して減ってしまう為、時間と共に容量が低下するため寿命があります(図1,2)。そのため、信頼性が必要な瞬停対策用途としては適さないでしょう。積層セラミックコンデンサもまた適しません。理由は図3で示すように積層セラミックコンデンサには電圧や温度の影響を受けて、容量が低下してしまう欠点が有る為です。この例では、15VのDC電圧印加で静電容量は80%も減少しています。また、高温・低温時には10%程度減少します。従いまして容量の高いタンタル系を中心とした、導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ(POSCAP)が適当かと思います。
なお、タンタル電解コンデンサと聞くと経験豊かなエンジニアの皆さまは発火事故を懸念されるかもしれませんが、パナソニックのPOSCAPは過電圧が掛かった場合でも自己修復機能が働くため安全です。安心してご利用ください。
参考:コンデンサの種類と特徴
表1.各種コンデンサの特徴
項目 | タンタル電解 | 積層セラミック | アルミ電解 | 電気二重層 | フィルム |
高容量 | 〇 | △ | 〇 | ◎ | ✖ |
高電圧対応 | △ | 〇 | 〇 | ✖ | ◎ |
DCバイアス | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 |
温度特性 | 〇 | △ | △ | △ | ◎ |
長寿命 | 〇 | ◎ | △ | △ | ◎ |
◎:大変良い 〇:良い △:あまり良くない ×:悪い
図1.電解コンデンサ劣化の仕組み
図2.電解コンデンサの寿命
図3.積層セラミックコンデンサの容量の電圧・温度依存
応用事例として、SSDにこの手法を用いて電源瞬停時のメモリ書き込みエラーの防止する事例をご紹介します。SSDにはスペースに限りが有るので、背が低い・省スペースという特長を持つPOSCAPが採用されました。
いかがでしょうか。この記事が皆さまのトラブル対策の一助となれば幸いです。