DesignSpark Electrical Logolinkedin
Menu 検索
フォーラムで質問

耐破壊スイッチの「破壊」は可能か?

当初、このブログでは耐衝撃スイッチの新製品について考察することを考えていた。用途・材質・性能を調べ「耐衝撃スイッチ」という製品が実際のところ現場でどのような意味を持つのかを正しく理解したいと思っていた。

 

今回のブログでは、IP定格とIK定格の試験について再考するよいきっかけとなった。

IP定格とはご存じのとおり、あらゆる製品の防水防塵条件についての規格だ。一方 IK定格とは、製品が機能性を維持しながら、どの程度の衝撃エネルギーに耐えることができるかを示す規格だ。

3月初旬、私たちは、スイッチ・インジケータ製造大手 APEM Components社の英国本社に伺い、同社の計測試験装置を使わせてもらえるという機会を頂いた。当初、試験作業自体を軽く考えていたのだが、これがなかなか思うように進まなかったことで、返って多くの事を学ぶこととなったのだ。

IP試験

まず私がチャレンジしたのは、長年やってみたかったIP定格試験、つまり防水防塵の試験だ。先日iPhone7が対応したという防水防塵レベル「IP67」を試験する。IP67の試験としては、被験体を深さ1mの水に浸し一定時間放置するというものだ。ひとまず、RSオンラインでケースメーカー Fibox社のIP定格ボックスケース(119-5531)を入手し、取扱説明書に従って透明の蓋に穴を開ける。19mmスイッチの場合、穴は直径19.2mmにする必要がある。ピラードリル、ステップドリルビット(232-513)、手動式リーマー(456-894)、デジタルノギスのセット(841-2518)を使うと比較的簡単に穴を開けることがでるだろう。適切に用意した19mmスイッチを穴に入れ、リア取り付けナットを締めた。

これを、APEMが持っているIP定格試験用タンクの底部にねじ止めし、深さ1mになるまで水を入れた。ボックスケースは大部分が透明アクリル樹脂なので、被験体への浸水を目視できるが、試験基準では一定時間以上放置する必要があるので、被験体このままにし、他の実験に取り掛かった。


IK試験

次に行ったのはIK定格試験だ。被験体に既知の衝撃を加えるものだ。この時衝撃レベルを保てるよう既定の高さから質量体を落として行う。具体的には一定の長さの振り子と5kgの質量体を使用する。

最初の被験体に選んだのは、APEM社のプッシュボタンスイッチAV09シリーズの19mmタイプだ。このスイッチにはステンレススチールが使用されており、セキュリティなど堅牢なフロントパネルへの取り付けが想定されている。私たちは、IK08規格(5Jの衝撃エネルギーに相当)のスイッチを使用した。マニュアルによると、この試験は垂直なパネルにスイッチを取り付け、0.295mの高さから1.7kgの振り子を落として実施する。  

 

または、5kgの質量体を0.1mの高さから落としても、同試験を実施することができる。今回7、8回試験を行ったがその結果は驚くべきものだった。強打したにもかかわらず、スイッチは全く破損せず、それどころか跡さえも一切なかった。

 

この試験結果で勢い付いたので、同じAV09ファミリで大き目の22mmスイッチでも試験を行った。マニュアルによると IK10規格と記載されている。試験は40cmの高さから5kgの質量体を振り子で落として実行した。これは20Jの衝撃エネルギーに相当するものだ。

成功した最初の試験の余韻もあり今回も余裕でクリアかと思っていたが、ここからが全くうまく行かなかった。試験装置のプレートに22mmのスイッチをボルト留めし、特に何も考えず質量体を40cmまで引き上げ、振り子のように投げおろした。  すると・・・

 

あっさりスイッチは壊れてしまった。なんと耐破壊スイッチを壊してしまったのだ!

パニックに陥り、その後落ち着きを取り戻してから原因を考えた。加えた力が強すぎたのか?いやもっと悪いことにAPEMのマニュアルの誤りを証明してしまったのか?一体何が起こったのか?

答えを見つけるために、マニュアルに戻り、取り付け手順を注意深く確認。よく見るとスイッチの最適な実力を見るためには、Oリングにシーリング材を配置し、取り付けナットに適切なトルクを適用するという特定の手順の指定があった。あわてて試験をしてしまったため、適切な取り付け手順を踏んでいなかった。手順書を読んでいないという、実に古典的なミスを犯していたのだ。

 

この失敗を念頭に置いて、タンクの水に浸してあったスイッチに戻ってみた。一見したところテストは成功したように見えた。ところがである。IP試験の結果は判断しにくい場合があり、緻密な観察が必要だ。念入りに確認すると、スイッチの外側を囲うように、非常に遅いペースで水が滴っていることが分かった。このことを心に留め、テストチャンバの水を切り、被験体の外側を慎重に乾かして、余計な水分を取り除いた。次に、透明な蓋を取り外すと、ボックスの中にも少量の水が入っていることが分かった。

 

30分間の試験の間に、ティースプーン約1杯分(5ml)の水がボックスに浸入していた。重要なのは、試験の条件とその重要性を考慮することだ。水の深さ(つまりは水圧)により、密閉の弱さが明らかになった。この弱さは、一定期間置いたことにより、初めて判明したのだ。

IK試験での一連の失敗を踏まえて、今回の結果を分析した上で再度試験することを決めた。今度はスイッチの取り付けに細心の注意を払った。特に、正しいトルクの設定通りに取り付けナットがきちんと締められていることを確認した。その後、ボックスを固定して、先ほどのように水に浸してしばらく放置した状態で我々は昼食をとることにした。

昼食は簡単に済ませ、急いで戻って試験タンクを覗き込みそして私たちは歓喜した。試験は完全に成功していたのだ。ボックスには一滴の水もしみ込んでなかった。

今回の一連の試験を通じ大変重要な教訓を学んだ。製品を正しく取り付けないと、試験は失敗する。たしかに定格試験は重要だ。しかし所詮試験は試験だ。現場の取付けが不味ければ、せっかくの製品のパフォーマンスも充分に発揮できない。そしてその不注意により、装置の返送・修理・交換が必要となり、ひいては時間・お金・評判を損失することとなる。

定格を基準に部品選定することはもちろん重要だ。しかし、私達が行った2つの実験で証明されたとおり、選定と同じくらいに使用方法も注意を行わないと、その部品の価値はほとんどなくなってしまうだろう。

これはスイッチ部品に限った事ではない。どんなに簡単な部品であってもきちんとマニュアルを読みましょう!

Connector Geek is Dave in real life. With 28 years in the industry, Dave likes talking about connectors almost as much as being a Dad to his two kids. He may still be a kid at heart himself...

5 May 2017, 9:30