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このシリーズ記事では、高度な能力を持つソニーのSpresenseを活用して、監視・追跡用の低電力セキュリティデバイスを作成する方法をご紹介する。
Spresenseの心臓部であるSony製MCU「CXD5602」は、パワフルな6コアプロセッサに低電力DSP、柔軟なセンサインターフェイス、内蔵GNSSを組み合わせたマイコンチップだ。非常に多くの機能を小さなスペースに詰め込む必要のある「位置情報活用型のバッテリー駆動IoT機器」にとても適した構成となっている。
ここでは、Spresenseをベースにしたソリューションのプロトタイピングについて、要件の特定から、必要な追加部品の選択、個別のサブシステムのテスト、プロトタイプの組み立て、ソースコードの公開まで、詳しく解説する。
使用例
Rhode & Schwarz ZVA40ベクトルネットワークアナライザ、CC BY 3.0
今回は計測器などの機器の取扱い監視端末のプロトタイピングをSPRESENSEで行ってみたいと思う。
昨今、計測機器などの高価の機械・機器を、購入ではなくレンタルする事が増えている。計測器だけでなく、例として、ハイヤー車両、商用車、プラント機器などだ。他にも、ベクトルネットワークアナライザや高帯域幅オシロスコープなどの高価なテスト機器も含まれる。購入は初期費用が大きく減価償却まで負債となってしまうし、故障時の対応に、予期せぬコストや時間がかかってしまう。よってレンタルで済ませようという会社が増えているのだ。
こうしたレンタルサービス特有の問題は、貸出機材に損傷が発生したときに誰の責任なのかを証明することだ。貸出の直前に手違いがあったのかもしれないし、貸出期間中に故障が発生しただけで、借り手の誤用や過失が原因ではないかもしれない。
よってこれらを監視する端末を作ってみようと思う。
まず、損傷の責任を突き止める監視端末には、次のような要件が必要と考えられる。
- イベント発生のセンシング
- イベントの種類
- イベントの時刻
- イベントの場所
このイベントの種類は、貸出機材の種類によって変わるが、一般的なのは、振動や落下による急激なショック、特定の角度を超えて傾けるなど、ある程度よそくできる種類の動作だろう。
また、追加要件として、以下のようなものであれば有益なものとなるだろう
- コンパクトで、機器/機械に簡単に取り付け可能
- 自己完結していて複数のモジュールやケーブルを必要としない
- 低電力で、長時間バッテリーでの動作が可能
この投稿でプロトタイプする端末は、複数のボードで構成されるため、消費電力を完全に最適化することはできないが、大幅に小さいシングルボードソリューションへとサイズを縮小する方法が明らかになる。また最後には、エネルギー効率を向上するにはどうすれば良いかについても簡単に探ってみたいと思う。
高度なアーキテクチャ
上図はCXD5602のブロック図、下図はセンサインターフェイスと初期処理をはじめとして、利用できるようになる主要機能だ。
SPI及びI2Cで接続されているセンサ部品からデータは、一度、センサ制御ユニット(SCU)で受信する。直接プロセッサにつなぐより、負荷と消費電力を低減するように設計されており、これを達成するため、専用の低電力ハードウェアと設定可能な動作パラメータを使用して、デシメーション(サンプリングレートを下げる「ダウンサンプリング」)、フィルタリング、イベント検出を行っている。
内蔵GNSSレシーバはGPSとGLONASSの両方のコンステレーションに対応している。これにより、イベントが発生したときに、いつどこでイベントが発生したかを突き止めることができる。
最終的に、マイクロコントローラのストレージ/接続機能で、フラッシュストレージに接続して、イベントの詳細を記録することができる。
次のステップ
次回の投稿では、SCUをもう少し詳しく探り、いくつかのサンプルを実行して、機器内からデジタル信号処理(DSP)機能をどのように使用するかを見ていく。