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「Edge」というIoTの進化の形

Edgeと私たちの生活

大量のデータが生成される場所に”エッジ”コンピュータを配置し解析することで産業用IoTの汎用性の向上と高い拡張性が提供できます。この記事ではそんなエッジコンピューティングの優位性とIoTの進化を探ります。

エッジコンピューティングを利用した産業のイメージ図

IoTは今や私たちの生活に欠かせないものになりました。仕事でも遊びでもインターネットを通じてシームレスに通信するスマートデバイスはいつも手元にあります。それは同時にスマートデバイスの技術は全く特別な技術ではなくなりました。

また、それと同時にIoT技術が発展してきました。IoTの普及に伴い接続を可能とする「thing」は増え続けています。 Strategy Analyticsの調査によると2025年までに380億台以上のデバイスがインターネットに接続し、2030年までには500億台まで膨れ上がると予測されています。

しかしこんなにも多くのIoTデバイスが増えると問題も生じます。IoTデバイスが増大すると多数の業界で適用する必要があります。また組織がデータに依存し新しいビジネスモデルを損なう恐れがあります。そのため組織はIoTデバイスに高い柔軟性や管理性を求めます。例えば多彩な情報を取得できるIoTデバイスは大きなデータを送受信しますがそのデータの送受信による遅延などの問題が生じます。またセルラー接続が安定して利用できない状況での通信の問題。これらの問題の答えは集中型インフラストラクチャーへの高い依存を止めリアルタイムの分析をエッジに頼ることです。より分散型のコンピューティング・トポロジーです。

IoT分野における”Edge(エッジ)”とは

今回はエッジコンピューティング、もっと具体的にはIoT分野におけるエッジについて詳しく見ていきます。エッジは一般的にデータが生成、消費される接続空間の末端を指す言葉として使われます。場合によってはインターネット・ゲートウェイデバイスのような高速接続性と高帯域幅のコンピューティング・アベイラビリティの終着点だとも考えられます。しかし産業用IoTの世界ではエッジは比較的遠い場所に設置されるケースが多く、バッテリー駆動もしくはエネルギーハーベスティング(環境発電技術)と一緒に設置されています。エッジと生成データが生み出される場所とは長距離低電力無線技術を使用して運用データを照合しクラウドに送信しています。ここではエッジ・インフラストラクチャを使用することでローカル接続中での操作性が確保でき、あらかじめ定義された動作パラメータ内の動作を制御しクラウドに常時接続する必要なく複数のアプリケーションを実行できます。したがってエッジは柔軟性と俊敏性を大幅に向上させます。

GSMAの最近のレポート「Opportunities and Use Cases for Edge Computing in the IoT(IoTにおけるエッジ・コンピューティングの機会と使用例)」 では多くの実装において主要なメリットが記載されておりエッジの導入性を高く評価しています。以下は記事に記載されているメリットの一部です。

  • 低遅延:計算用デバイスとデータストレージをデータを取得する近くに配置することで通信往復時間を短縮しレイテンシを小さくします。
  • バッテリーの寿命を延命:通信チャンネルのオープン時間を短くすることでバッテリー駆動のIoTデバイスのバッテリー寿命を延ばすことができます。
  • データ分析とAIへのアクセス: エッジの処理能力とデータストレージを組み合わせることで現場分析能力とAIを強化することができます。このような状況では集中型システムに送信するには大きすぎるリアルタイムなデータセットの処理、迅速な応答が実現可能です。

上記のような優位性はエッジ・コンピューティングが幅広い分野で採用できることも意味しています。また各業界それぞれにおいて新たな可能性を見出してくれるでしょう。マッキンゼーによるとエッジ・コンピューティングの採用によって生み出される価値は2025年までに2000億ドル以上であると予測しており、これは大きなビジネスになるでしょう。エッジの可能性を理解することは電子部品のサプライヤーにとってもエッジの優位性を使いたい企業にとっても必要な事といえます。

エッジの導入

ではエッジのどこでデータが消費、生成されるのでしょうか?産業用IoTでは工場、海上プラットフォーム、水処理プラント、道を走っている車両など様々な場所に設置されたセンサー、アクチュエータなどの組み込みデバイスであることが多いです。データの処理を実行しその情報をより実用的な分析情報に変換するための要件と能力があり、多くの場合リアルタイムでの操作であればほぼ全ての場所に導入適正はあります。

次にエッジからBluetooth、Zigbee、WiFiなどの様々なフィールドプロトコルを使用してIoTゲートウェイとの通信を行い、最後にIoTクラウドプラットフォームに接続するのが一般的な構成です。多くの場合必要な分析はクラウドで行われます。しかし処理とストレージ技術の小型化が加速するにつれこのような集中型データセンターで行われる計算も現場、エッジで実行されるようになってきています。つまり常時クラウド接続する必要のない高速で信頼性の高い分析情報を提供できるわけです。

この種のインフラストラクチャはすでに広く利用されています。しかし技術的・運用上の障害が残っています。導入の障壁の一番の重要点はセキュリティーです。エッジインフラストラクチャは複雑で乱雑にリンクしているため一見するとマルウェアからの攻撃も弱いポイント受けやすくなっているように見えます。しかし強力なID管理や認証など数多くのセキュリティーツールを適用することができ、さらにはファームウェアの更新を安全な伝送リンクを介して行うことができます。悪意ある攻撃は単一ノードを狙うためエッジではその攻撃によりIoTネットワーク全体が混乱に陥れることは難しく、アーキテクチャの分散性により被害が波及する前に気づき、対処が可能になります。

もう一つの潜在的な障壁はエッジのための強固なビジネスケースを確立し投資収益率を正確に特定する事です。組織がデータ処理を集中型プラットフォームから押しのけてエッジを導入しようとするとネットワークへの多額の費用が必要になります。ではどうすればよいのか?効果的なエッジ導入には慎重に構造化された段階的なアプローチが必要不可欠であり重要な要素を正しく評価する必要があります。産業制御、既存のレガシーインフラストラクチャ、接続性、アナリティクス、人工知能の応用による自動化の点などの評価です。端的に言えばエッジIoTは革命というよりも進化と考えるべきであり組織に適した速度で適用し進歩するでしょう。

エッジのIoTアプリケーション

今まで述べてきたことがエッジIoTの基本理論ですが現実はどうでしょう?その業界でエッジが実際にビジネスの変化を促し始めているでしょうか?マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポート、「New demand, new markets: what edge computing means for hardware companies」では100以上のエッジコンピューティングのユースケースを示しています。その大半はリアルタイムでの意思決定の必要性を伴うものであり、レポートによると新しいアプリケーションの多くは限られた接続性または断続的な接続性で動作する必要があります。また同時に十分なコンピューティングパワーがデバイス上で利用可能である必要があります。すべてのセクターについてエッジ導入の概説をすることはできませんが商業化の重要なホットスポットがいくつかありそのいくつかを紹介します。

自動運転

自律的でインターネットに接続可能なスマートカーはおそらくエッジIoTの最も明白なアプリケーションです。このような未来的な車は多数の車載センサーが受信したデータを安全かつ確実にリアルタイムで収集し分析対応することができます。5Gやユビキタスクラウドコンピューティングの高い接続性があっても安全性が重要なリアルタイムな操作にはこのようなデータ伝送に依存できないものがあるでしょう。そのためインテリジェントなオンボード・エッジ・コンピューティングは自動運転車のレイテンシの懸念を排除しデータ生成に近いところで正確かつ迅速な意思決定を行うための基盤を提供します。

エッジにより自動運転車などの高度なテクノロジーが強化されます。

近未来的な自動運転車のイメージ図

顔認証

バイオメトリクスは法執行機関にとってますます重要な技術になりました。そんな技術の一つである顔認証は現在、ビデオベースでの監視、入退室管理その他多くのシナリオの主要なイネーブラーとして適用されています。従来では空港ターミナルや鉄道駅からのビデオストリームは処理のためにクラウドなどの高性能バックエンドに転送されていましたが、多数のセンサーが使用されているため大量のデータ量がある場合には高いネットワーク帯域幅を必要とします。しかし画像の前処理やフィルタリングにエッジコンピューティングを導入すればクラウド上の顔認識エンジンを使って高品質のキーフレームのみを識別することができ計算オーバーヘッドを削減しシステムの信頼性を向上させることができます。

予測メンテナンス

公営事業、鉄道、石油・ガス、建築などの分野の産業用資産は多様で複雑なものが多く地理的にも広い範囲にわたります。そのため接続品質が悪いことがあります。つまりこれらのデバイスを監視することは困難であり、それを補うためクラウドベースのデータ処理に頼ろうとしても高価で信頼性に欠けます。情報源をエッジに近づけることにより現場分析が実現しより関連性の高いデータのみを選別しネットワーク経由で送信する情報量を減らすことができます。これによりクラウドコンピューティングのコストを節約しながらネットワークリソースをより効率的に使用することができるのです。また分析目的でのインターネットの重要性を減らすことで資産の監視と展開の可能性が広がります。最終的にはエッジを導入することでより多くの情報に基づいたメンテナンス体制を支えることができ予測可能な事象を増加させることができます。

品質管理

多くのメーカーは低価格、リードタイムの短縮、選択肢の拡大といった顧客の期待に応えようと努力しており、かなりのプレッシャーを抱えています。そこで課題となるのが品質に妥協することなくこれらの要求に応えることです。これまで以上に高度な画像処理システムを使用してアセンブリ検査を自動化し手動検査への依存度を減らそうとします。しかし画質の向上に伴い映像システムから生成されるデータ量も増加し画像の保存、処理、解析の負担はますます大きくなります。そこでエッジコンピューティングの威力が発揮できるわけです。具体的にはビデオストリームを分析して品質の異常を特定し即座に警告を発することができるディープラーニングアルゴリズムを使用します。これは人間の目ではなくエッジでリアルタイムに行うことで品質管理を劇的に改善し生産ラインにおける品質の問題の影響を軽減するのです。

ウェラブル端末

ウェラブル技術のほとんどは消費者部門に関連しておりFitBitのようなフィットネストラッカーはより健康的なライフスタイルを実現するための人気のある技術です。しかし産業業界ではスマートグラスやVRヘッドセットなどのウェラブル技術を使用することで作業員が必要な情報にアクセスしながらハンズフリーで作業を行うことができるようになり、産業業界での役割はますます大きくなっています。現在、ほとんどのウェラブル端末はストレージ容量が限られておりその不足分をクラウドに依存しています。しかし、低電力処理の進歩が進むにつれAIを中心としたエッジデバイスはウェラブル端末のUX性を向上させより高速で印象的な可視化デザインを提供できるでしょう。よってウェラブルの汎用性を高め、産業施設での応用力をさらに強めることになります。

エッジは産業施設内でのARやVRの利用を促進する可能性を秘めています。

VRヘッドセットを利用したハンズフリーの産業イメージ図

まとめ

エッジIoTの進化は今後止まる事はないでしょう。実際、経営コンサルタント会社のガートナーによると2025年までには企業データの約75%が従来の集中型データセンターやクラウド以外で分析、処理されるようになるといわれています。これは現在の状況とはかなり違うものであり、今後大きな変化が訪れることを指しています。様々な産業アプリケーションにおいてより高速で汎用性の高いパフォーマンスを実現するエッジの可能性を指しているとも言えます。接続されたデバイスが指数関数的に増大する状況での課題は安全でコストパフォーマンスの良いエッジを実装し、そのエッジの潜在能力を最大限に発揮させることです。

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