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SiC PFCトーテムポール回路・リファレンスボードの紹介

シリコンカーバイド(炭化ケイ素)MOSFET技術の優位性と力率補正(PFC)の重要性を探った後、STEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインボード (215-0834) を紹介します!

image shows the STEVAL-DPSTPFC1 reference design board

導入

この記事ではシリコンカーバイドMOSFET(炭化ケイ素MOSFET、SiC MOSFET)とは何か、その利点について説明し、最後にSiCデバイスを用いて力率補正(改善)機能を持つSTEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインを紹介します。

シリコンカーバイドMOSFETとは?

シリコンカーバイド(SiC、炭化ケイ素)MOSFETは、一般的なシリコンMOSFETと同様のスイッチング素子ですが、炭化ケイ素という半導体材料を用いることでの優位性があります。SiCデバイスはシリコンデバイスと同様に設計・加工・製造されており、デバイスの性能に対するコストはシリコンデバイスとほぼ同等です。

違いとしては、SiCデバイスはシリコンデバイスに比べて接合部の動作温度が高く、一般的な150℃に対して200℃のオーダーで動作するため、より厳しい条件での使用が可能なことです。ドレイン-ソース接合部のブロッキング電圧(逆方向阻止電圧)が高く、STは最大1700Vの耐圧を持つデバイスを提供し要求の厳しいアプリケーションに対しても有効に作用します。さらに高周波数でスイッチングするアプリケーションに対しては、温度変化が少なく低損失のスイッチを実現し、デバイス動作温度範囲で安定する低いオン抵抗を持っています。

特にスイッチング損失が小さく、オン抵抗が安定していることからSiCデバイスは従来のシリコンデバイスに取って代わる有力な候補となっています。これはシリコンデバイスと同じスペース分で、より高い電力処理能力を詰め込むことが可能になるのです。

Image shows a SiC MOSFET circuit diagrams and graphs showing high-speed switching reduces loss

多くの場合、SiC MOSFETはパッケージに追加のソースピンを含んでいて、電源駆動源として2つを区別しています。このソースピンの追加により、ドライバのリターン電流がMOSFETのソースに早く到達し(寄生インダクタンスの最小化により)、SiCデバイスのスイッチング速度がさらに向上します。

SiCデバイスは電気自動車の車載コンバータ、太陽光発電インバータ、電力変換や産業用駆動装置、可変周波数駆動装置、トラクションアプリケーション、高電圧DC電源およびEV充電ステーションのようなスペースを多く利用できる、高電力密度が必要なアプリケーションに最適です。ハイパワー、高性能半導体を必要とするアプリケーションをターゲットにしています。

なぜPFCが必要なのか?

力率改善(PFC)は特に大型のスイッチング電源やモーター、駆動装置など大きな電気負荷に対して必要なものです。ここでの力率とは皮相電力(VA、ボルトアンペア)に対する使用電力(W、ワット)の割合のことを言います。

理想的な力率は1.0です。白熱電球や抵抗ヒーターなどは抵抗負荷であるため、力率1.0です。力率が1.0でないものは容量性負荷や誘導性負荷などがあります。力率が1.0未満の負荷は配電系統の損失を引き起こし、配電機器の負荷増加やエネルギー供給に関するコスト増加につながります。一方で力率を少し改善することで大きな損失低減が期待できます。

力率とその効果をよく実証する例として単相モーターがあります。モーターの磁化電流と電圧には位相差があり、この電流位相差によりモーター軸を回転させます。磁化電流はモーターの有用な仕事量に寄与していません。依存しているのは力率であり、力率の変化が直接モーターの動作に影響するのです。

例えば、単相モーターは力率0.75で10Aの電流を流すことができるとします。この場合の有用電流(有効電力の元となる電流)は7.5Aとなります。したがって、モーターからの全有効電力は230V x 7.5A = 1.725kWとなり、有効出力に寄与していない2.5Aが残り、この分が損失として発生してしまいます。

したがって、モーターに力率改善システムを追加することで電圧に対する電流の位相を変更でき、モーターの総消費電流を減らすことが可能になるのです。IETでは力率補正と力率の改善方法について詳しく解説した論文を掲載しています。

工場などの大型電力消費業者は、グリッドへの力率が悪いと高額の電力料金を請求される可能性があります。このため、エネルギー供給会社によっては消費者が力率を良好(通常0.9~0.95以上)に保つことができれば、エネルギー料金を大幅に引き下げられる場合があります。

ハードウェア

リファレンスデザインキット

Image from above of the STEVAL-DPSTPFC1 reference design kit

では、SiC MOSFETと力率改善の機能や重要性について理解いただけたところで、その機能の実証を可能にしたSTEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインキットについて紹介していきます。

STEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインキット (215-0834) には、PFCアプリケーションにおけるSTのSiC MOSFETの評価を開始するために必要なすべてが含まれています。2つのSiC MOSFET、2つのSCR、およびその他のサポート部品を含め、突入電流制限とPFCを行うために必要なすべての部品がオンボードで用意されています。

SiC Circuit diagram

SiC MOSFETは力率改善スイッチングを行い、高電圧DC出力を提供するために連続的に動作しています。これにより、通常はほとんどの電力が出力で消費されます。また、突入電流制限のためにサイリスタSCRが使用されています。

加えて、必要な電圧レールをボードで生成するためのフライバック電源も提供されており、SCR用の絶縁電源2つとマイクロコントローラや電流センサーなどの制御回路に供給する絶縁電源、さらに絶縁MOSFETドライブ2つに供給する絶縁電源1つを含んでいます。

このキットには、STM32F334 (196-2026) を搭載したマイコンボードが付属しています。STM32F3x4シリーズはD-SMPS、照明システム、溶接、太陽光発電システム用インバータおよびワイヤレス充電器などのデジタル電力変換アプリケーションに特化した機能を備えています。

Image shows a list of specifications

STM32F3x4マイクロコントローラの特筆すべき機能として高分解能タイマーシステムがありますが、これは217ps間隔で動作可能な6つのタイマー、10個のPWM出力(ペアで結合可能)、10個の外部イベント入力(電流制限、ゼロ電圧/ゼロ電流検出など)、5個のエラー感知入力で構成されています。

また、アナログ入力からPWMシャットダウンまでわずか26nsの超高速コンパレータを3個搭載しており、過電流や過電圧のハードウェアシャットダウンの実装に有効です。さらに、1%の精度を誇る5段階のゲイン設定が可能なオペアンプも内蔵しています。

基板仕様

このSTEVAL-DPSTPFC1 リファレンスデザインキット (215-0834) は定格入力が85-264VAC 45-65Hzであり、主電源から最大16A/3.6kWを引き出すことができます。最大供給電流が13Aしかないので、電源供給にイギリスの標準的なプラグを使用して基板を評価する際には注意する必要があります。ボードからの最大出力は230VAC入力の場合、9Aで420VDCです。これにより、出力電流は110VACではおおよそ半分の4Aとなります。

オンボードPFC回路は110-240VAC 50/60Hzの入力範囲で0.99以上の高い力率を実現し、また効率においても110VAC 60Hzの入力で92%以上の数値を出すことができています。

全高調波歪率の数値も同様に良好で、最も低い数値が230V 50Hzで3.5%となっています。

ボードオペレーション

ボードの動作は部品へのストレスを軽減、PFCの突入電流を制限するために、PFC回路のソフトスタートを行っています。これにはいくつかの個別のステップを踏むことで回路を作動させています。

突入電流制限は、16A未満の定格RMS入力電流を伴う機器でIEC 61000-3-3規格に準拠している必要があります。これは、照明やディスプレイの不要なちらつきや輝度変化の原因となる突入電流による電圧変化や変動に対する制限を規定したものです。

一般に突入電流は2つのリレーと1つのNTC抵抗で実装され、初期突入電流を制限した後、どちらかのリレーで短絡させます。これは突入電流を制限する方法としてはやや非効率的であり、時間が経つにつれてNTC抵抗の抵抗値はサイクルごとに増加してしまいます。これにより電流制限回路の効率を更に悪化させます。

image demonstrates how the SCR circuit performs inrush current limiting

上の図はHVDCバス静電容量をAC波形のピーク電圧まで段階的に充電する事で、SCR回路が突入電流制限を行う様子を示しています。

progressively charging the HVDC bus capacitance to the peak voltage of the AC waveform

STが提供するファームウェアは2種類の突入電流制限方法(遅延固定SCRと遅延可変SCR)を実装しています。遅延固定SCRではSCRがオンになる遅延を固定値又はその倍数に維持するため、サイクルごとに変動してしまう230Vの入力電力でより高い電流ピークに繋げられます。

Variable SCR on delay involves changing the on-delay of the SCR devices

遅延可変SCRではAC線間電圧入力のモデルを考慮したルックアップテーブルに従って、SCRデバイスのオンディレイを変更するものです。これにより平均電流が下がり、電流ピークの平均値は同じ周期になります。

突入電流制限の手順が終了すると、次にPFCコントローラが作動しHVDCバスを最終的に400VDCの出力電圧に設定します。

Image showing the PFC soft-start management routine

PFCソフトスタート管理ルーチンはAC入力がゼロ交差するごとに実行され、HVDCバスを穏やかに立ち上げ、その後調整します。

突入電流制限とPFCソフトスタートが完了すると、PFCコントローラは定常モードで動作するようになります。これにはAC入力のゼロ電圧交差により発生する電流スパイクの制御、オンチップDACとコンパレータを利用した過電流保護、PFCチョークインダクタ電流固定、HVDC過電圧保護が含まれます。

Two control loops plus a phase-locked loop provide the digital control system.

2つの制御ループと1つの位相同期ループによりデジタル制御システムを提供します。外側の電圧ループはHVDC出力電圧の調整を受け持ち、より高速な電流制御ループがPFCインダクタ電流をAC電源の正弦波に合わせて整形することを担当しています。最後に、PLLはPFC制御ループ全体を主電源サイクルに同期させる役割を担っています。

制御ループ設計

制御ループの設計は容易ではありませんがSTはユーザーマニュアルでコントローラ設計の完全な内訳、手順を提供しており、この特別なタスクのプロセスを大幅に容易にしてくれています。

またユーザーマニュアルでは、動作原理をより詳細に説明し、STEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインで使用されている完全な回路図と構成部品の選択肢を掲載しています。

最後に

この記事ではSiC MOSFETデバイスとは何か、そしてなぜ高電圧・大電力アプリケーションに望ましい選択なのかを探りました。また、力率補正が重要な理由と力率の例を説明し、これらの知識をもとに3.6kW PFCトーテムポールのST STEVAL-DPSTPFC1リファレンスデザインを取り上げ、その優位性や実用性を説明しました。

Engineer of mechanical and electronic things by day, and a designer of rather amusing, rather terrible electric "vehicles" by night.
DesignSpark Electrical Logolinkedin